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やさしさの証 1

engraved in strength 1



 ある土曜の朝だった。

 蒼は牛乳を切らしていたことに気づいた。

 急いでコンビニに行ってこようと、玄関を開けて廊下に出る。

 ちょうど、イオが楽器を手に出かけるところだった。


「おはよう、蒼くん。今日は走らないのかい?」


「ハイ。実は、午前に再配達を頼んでて……」


「宅配便?」


「いえ、郵便なんです。だから『宅配ボックスには入れられない』って言われちゃって」


「ああ、そうか。たしかにそうなるよね、郵便だと」

 イオがゆっくりと頷く。


「でもオレ、全然心当たりないんですよ。しかも不在票によると、海外からみたいで」


「保険証だったりしてね」

 言ってイオが、ふふふと笑った。


「またまた。イオさん、からかわないでくださいよ……でも、本当になんなんだろ?」

「届いてからのお楽しみだね」

「えー? どうなんでしょうか」


 そんなことを言い合いながら、イオと蒼は、廊下を歩いていく。





 十二時近くになって、やっと蒼の部屋でブザーが鳴った。

 マンション一階のオートロックの呼び出し。郵便局の配達員だった。


 「お世話様です」と声を掛け、蒼はロックを解除する。


 ほどなく玄関のチャイムが鳴った。

 蒼はハンコを手にドアへ向かう。


 再配達されたのは、ヨレてくたびれた茶封筒だった。

 A4サイズより少し小さいくらいの大きさ。微妙な厚みがあった。


 水濡れでもしたのか、差出人の部分はインクが滲んでしまっている。

 かろうじて、消印の一部だけは判読できた。


「……SAMOA?」


 って……いや、マジで、一ミリの心当たりもないんだが。

 首を傾げて、蒼は立ち尽くす。


 サモア。

 太平洋、ポリネシアとかの国だよな――


 なぜ、そんなことを知っているのかっていうとさ。

 イオさんのタトゥーに興味がわいて、色々検索した時にポリネシアンとか、サモアとかって名前を何度も目にしたからだ。

 

 それにしても。

 ホントにこれ、オレが受け取っちゃっていいんだろうか。

 部屋番号はオレの家のもの……のように読めなくはないけど。

 手書きだし、そもそも滲んでいてハッキリと見えない。

 宛名なんか、もう全く判別できないほどだ。


「っていうか、郵便局の人は、なんで『オレ宛て』って判断できたんだよ」

 

 とはいえ、このまま迷っても仕方ない。

 開けてみよう。


 蒼は封の上部を、注意深くハサミで細く切り取る。

 中には折りたたまれた便箋と、緩衝材代わりのざら紙に包まれた、小さな布袋が入っていた。


 まずは便箋を開いてみる。

 こちらも手書きだった。

 英語のようだったが、字のクセが強すぎて、ほとんど読めそうにない。

 だが、冒頭に書かれた文字だけは、蒼にもすぐに読み解けた。


 ――dear YUU


 蒼は小さく息を飲み、封筒と便箋を手にしたまま、部屋を飛び出した。


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