第十一話--友--04
〈SIN!最後に聞いておく。良いんだな。γチームは、お前の暴走を止める為に出てきた。お前が、ここで投降すれば、奴らを止める事が出来るかもしれん。事が収まるかもしれん。それでも、お前は争う事を選ぶんだな!〉
A.IはSINに聞いた。
「何を当たり前の事を……今更、俺が投降した所で収まると思うか?奴らは無差別に攻撃してきてるんだ!それに、俺が降った所で、奴らは、俺だけではなく、関わった奴ら全部を処分するだろうよ、duo達みたいにな。なら、俺は大切な奴らを生かすめに最後まで争ってやる!俺一人が奴らの敵になれば良いだけだ!止まっていた刻を動かしてやる!」
〈そうか、覚悟は決まっているんだな……〉
A.Iは寂しげに呟いた。
「覚悟か……そうかもしれんな……」
SINは静かに、懐かしむように話しはじめた。
「なぁ、俺は夢を見ていたんだ……幼かった頃の夢を……おかしいよな。そんな記憶なんか、全く無かったのにな……」
〈……〉
SINは続けた。
「その夢を見て、俺は初めてヒトになれた気がしたよ……なら、俺は最後まで争ってやる!俺がどんな物を背負っていようと、それが、どんな罪であろうと、俺は、ヒトとして争う!奴らの敵になる事が罪となるなら、今更一つや二つ増えたところでどうって事はない。それよりも俺は俺の信じたモノの為に生き続ける!」
〈SIN……〉
「俺が、何が出来るか、何を見せられるかわからんが、見ててくれよ……俺なりの守る為の争いを……」
SINはA.Iに優しく語りかけた。
〈わかった。お前の好きにやって見ろ。そして見せてくれ!ヒトの先を!〉
SINは「Helios」のコントロールレバーを強く握りしめたが「Helios」のコントロールレバーが少し渋い動きを返した事に気が付いた。
「悪いな。怖い思いをさせるかもしれんが、俺が側にいる。守りたい奴等がいるんだ。だから、力を貸してくれ!」
SINは「Helios」にも優しく語りかけた。「Helios」はSINのその言葉に応えるように、一気に反応が軽くなった。
「Helios」のその反応に、心強い力強さを感じたSINは
「よし!まずは、アイツらの動きを止める!」
そう言うと、一気に威嚇射撃を続けるγチームに迫った。
「!!」
septemは、「Helios」のスピードに驚愕したと同時に、何もする事が出来なかった……
あっという間に距離を詰められ、目の前に現れた「Helios」の振るエネルギーソードに、脚部を綺麗に切られ、その場で戦闘不能となってしまったのだ。
「なんて、スピードとパワーだ!こんな力が眠っていたのか!?」
モニターを見ていた「ハンドラー」は驚嘆の声を上げた。それもそうだろう、この動きは、自分の知っている「H.M.A」ではないからだ。
「コイツが敵になったら……」
「次、行くぞ!」
SINはduoと同型の多脚型を駆るoctoに向かった。
この「H.M.A」がduoの「H.M.A」と違う点は、大きな無反動砲の砲塔と腕部にバルカンを装備できる点だ。もちろん、通常任務には、それらは外されている。逆に言えば、duoの「H.M.A」もちょっとした改造で、戦闘特化型への換装が可能であると言うことを意味していた。
しかし、octoの「H.M.A」には大きな弱点がある。大きいが故の反応の遅さである。本来は、遠距離での支援攻撃が役目である。
反応が遅いoctoの「H.M.A」は到底「Helios」のスピードについていく事は出来ない。「Helios」は素早くoctoの「H.M.A」との距離を詰めた。
「!!」
octoは、砲塔をSINに向け応戦しようとする。
しかし……
「遅い!」
「Helios」のエネルギーソードがseptemと同じように、右前脚部を切った。
「!?」
octoの「H.M.A」はバランスを崩し、大きく傾いた。しかし、まだ砲塔は生きている。砲塔が「Helios」に標準を合わせようとしていた。
SINはいち早くそれを察知したが、それよりも早く、無反動砲が火を吹いた。
「!」
しかし、SINの反応は素早く「Helios」が撃たれた砲弾を至近距離で避けると、そのまま、砲身を切り落としつつ、左前脚部を切った。octoの「H.M.A」は、切られた勢いのまま前のめりに倒れた。それでも、腕を動かし、バルカンを「Helios」に向けたが、機動力の無くなった「H.M.A」はすでにSINの敵では無く、なす術もなく、両腕のバルカンが切り落とされた。
「最後だ!」
SINは、そのままの勢いでnovemに向かった。重量とスピードを乗せたエネルギーソードは、まず、腕を切り落とし、そのままnovemの背後に回り込み、両脚を切り落とした。
「信じられん……」
一瞬のうちに、novemの「H.M.A」を黙らせた「Helios」の動きは、「ハンドラー」の理解を超えていた。
「あの重たい機械にあんな動きが出来るのか……」
「所長……あなたはなぜ、あれの存在を隠していたの?あれさえあれば……あの力さえあれば……」
聖母はそう言うと、沈黙してしまった。事の顛末を見る必要が無いと判断したのか、今後の……刻が動き始めた後の事に備え始めたのか……
「アイツらは無事か?」
γチーム全ての「H.M.A」を一瞬のうちに行動不能にしたSINは奴隷達に目を向けるとβチームが粗方避難誘導を終えているようだった。
「4!」
SINはquattuorを呼んだ。SINに呼ばれたquattuorはSINの元に駆け寄って言った。
「コチラハ、ミナ、アンゼンナ トコロニ ヒナンサセタ」
「そうか、みんな無事なんだな?」
SINは聞いた。
「アア ミンナ ブジダ」
「そうか……」
SINはそう言うと、突然、エネルギーソードをquattuorに振り下ろした。
「ナニヲ!?」
次回の更新は27日、朝7:30となります。




