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SIN〜第一部〜  作者: 冬馬
第十一話

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第十一話--友--03

 〈SIN、聞こえるか?〉


 沈黙を破っていたA.Iが突然、声を発した。


 「何だ?今更?お前、返事もしないで、何をやってた?」


 SINは、幾分怒りを伴った声で返事をした。


 〈すまない……面倒事があって、メインプログラムを封印されていた〉


 面倒事だと?今回の事と関係あるのか?それで、封印までされていただと?


 SINは、A.Iの言い訳とも言える言葉に疑問を感じたが、今はそれどころでは無い、立て続けにいろんな事が起こりすぎていた。


 〈SIN、無事だったんだな……良かった……〉


 「そんな事はどうでも良い!とりあえず、詳しい話は後で聞く。それよりも奴隷を守らなければならん。まず『Helios』の戦闘モードの説明をよこせ!俺のデータの中に、こんなモードは無いんだ!」


 A.Iは「Helios」の戦闘モードの説明を始めた。


 〈戦闘モードとは、その名の通り、『H.M.A』を戦闘に特化させたチューニングに移行するモードだ。この『Helios』タイプには、対地、対空、体艦、対人、あらゆる戦闘に対応可能だ。通常の重機モードとの違いは、各部使用エネルギーの増加によるパワーアップ。外部装甲に微量の対天使波を流す事で、耐衝撃性もアップされている。そして、最大の違いは、戦闘兵器、武器が使用可能となる事だ〉


 「戦闘兵器?そんな物どこにある?無ければ使いようが無いじゃないか!」


 SINは怒りを込めて言った。しかし、A.Iは冷静にそして得意げに言った。


 〈それについては、対策済みだ〉


 「対策済みだと?」


 〈ああ、ほら、出てきたぞ〉


 「!?」


 大きな黒いトレーラーが、いつもの搬出ゲートの反対側、ちょうど、SINの背後の方面から出てきた。


 〈ウエポンシステムコンテナだ。あの中に「Helios」専用武器が収められている〉


 「専用武器……」


 〈いいか、SIN。よく聞いてくれ〉


 A.Iは神妙な声で話し始めた。


 〈この「H.M.A」は、本来、平和目的の為に設計されている物だ。しかし、それだけでは、これを造る事は出来なかった……あらゆる事態……不測の事態を想定しなければ、国家の運営、統治をしていた者達を納得させられなかったのだ。その為に、私は、当初の目的を隠れ蓑として、こんなバケモノと言われる物を造ってしまった……私はできれば、このモードは使いたくは無かった……破壊と殺戮の為に「Helios」を使いたくは無かった……このモードでの「Helios」は、簡単に都市を一つ破壊出来るだけの力を持つ……そして、このバケモノを扱うことが出来る唯一の存在がお前だ。「Helios」はお前の為に造られたのだ……しかし私は、お前を破壊と殺戮の世界に連れて行きたく無かった……〉


 何が言いたいんだ?まるで自分が作ったような言い方だな……


 SINには、この告白とも言えるA.Iの言っている事が理解出来なかった。A.Iは続けた。


 〈だから、約束してくれ、SIN。このモードは、大切な物を守る為に使うと言う事を!〉


 「守る……」


 SINは考えていた。


 俺の大切な物とは何だ……俺にそんな物はあるのか……


 〈お前の愛するモノを!信じるモノを守る為に!〉


 A.Iの声が、SINに思いを託す悲痛な叫びに聞こえた。


 俺の大切なモノ……


 SINは思い出していた。duo(デュオ)達の事を……リンやすずの事を……ほんの僅かだが言葉を交わした奴隷達の事を……


 そうか……


 SINは、何かに気がついた様だった。

 

 わかった……俺は奴らを守りたいんだ……俺の中で大きくなった大切な友を守りたいんだ……


 SINは、何が大切なモノなのか気が付いた。


 「わかった!やっと分かったよ」


 SINは何かを吹っ切った様に言った。


 「俺は俺の大切なモノを、俺のやり方で守る!それでいいか?」


 〈それで充分だ〉


 A.IはSINの答えに満足をしていた。


 SINには、もう迷いは無かった。自分の大切なモノを守る覚悟が出来ていた。


 「よし!じゃあ行くぞ!武装の選択を頼む!」


 〈了解!〉


 ウエポンシステムコンテナの屋根が開いた。


 〈エネルギーソードの使用を推奨する〉


 「了解!」


 ウエポンコンテナから、鞘に収まったエネルギーソードが迫り上がってきた。ソードと言うよりは、形状は刀のようだ。


 SINは、エネルギーソードを手に取り、鞘から静かに抜いた。刀身は赤く光り輝いていた。


 「おい!4!!聞こえるか!お前達は奴隷を避難させろ!俺がγチームを止めてやる!良いか!一人も殺すなよ!」


 SINは、quattuor(クァトゥオル)に指示を出した。


 「SIN!ダイジョウブナノカ?」


 quattuorはSINに聞いた。


 「ああ、心配をかけた。もう大丈夫、大丈夫だ」


 SINは優しい声で答えた。


 「オマエ、スコシ、カワッタナ」


 quattuorは、SINに今まで無かった優しさを感じた。


 「リョウカイシタ。タノムゾ」


 「ああ、誰も死なせやしない!」


 SINはエネルギーソードを携え、γチームに向かって行った。


次回の更新は24日、朝7:30となります。

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