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SIN〜第一部〜  作者: 冬馬
第八話

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第八話--邂逅--06

 「おや、随分久しぶりですね」


 サカガミは、懐かしい気配の持ち主に話しかけた。


 「どれくらいになるかな……」


 男はサカガミの狂気の一端を見てから、サカガミに会うことを避けていた。


 「さあ、どれくらい経ったのでしょうかね。最近、時間が経つのが早く感じられましてね。この前、お会いしたのが、昨日のことのように思えたり、随分昔の様だったり……」


 実際、サカガミは研究に忙殺され、長い間この男がコンタクトを取らなくなった事を気にも留めていなかった。


 「それよりもどうですか?この研究都市は!凄いものでしょう!」


 「ああ、あの図面が実現しているんだな」


 男は、最後にサカガミに見せられたこの都市の図面を思い出していた。


 表向きは、人類の未来を研究、実証、する為の都市。その実、サカガミの知識欲を満たす為の歪な都市が形になって現れていた。

 

 サカガミは、自慢げに話しを続けた。


 「まだ、完成には程遠いですがね。なんせ、都市を作るのですから、10年は掛かるのではないかと思っています。今の所、半分くらいの完成状況ですかね。研究所は、一番優先的に建設しまして、ほぼこちらに移って来ています。既に当時の研究員たちを中心に、日々研究に明け暮れていますよ。首都機能は、関係各所の調整も含めてもう少し先になります。入れ物は作っておきますけど」


 「なるほど、都市としての機能も、まだ不完全というわけか」


 「そうですね。まだ、ここの住人となるべき人選も進んでいません」


 男は、今の言葉を聞いて、サカガミの中から狂気が消えていないのを感じた。


 ここに来ての選民意識か……いや、サカガミの実験材料か……なんにしてもこの男の思惑通りに事は進んでいく……この男に選ばられた者たちの中で、何人がサカガミの思惑に気がつくかはわからんがな……


 「そうだ!あなたに見てもらいたい物があるのですよ」


 サカガミそう言うと、男を促すように、1人で歩き始めた。


 「何処へ行くんだ?」


 男が聞いてもサカガミは答えない。サカガミは自分の研究室を出て、長い廊下を黙って歩いた。

 男も黙ってサカガミの後に続くしかなかった。


 男は、サカガミの後を歩きながら、辺りを見回していた。


 全く、人間の匂いが感じられないな……


 実際、長い廊下を歩いても、誰一人としてすれ違う者はいなかった。ただ、無機質な廊下が続いているだけだ。


 しばらく歩くと、無機質な廊下の先に、大きな扉が見えた。扉の横にはセキュリティシステムがある。


 サカガミは、扉の前に立つと、扉の横にあるセキュリティシステムに、自分のカードを通すと電子音と同時に、扉が重々しく開いた。扉の奥は暗く、ここからでは中を窺い知る事は出来なかった。


 「まだ、ここまでは、さほどセキュリティは強くしていないのですよ」


 サカガミはそう言って笑うと、扉の中に進んだ。


 「暗いですね。照明をつけますか」


 サカガミはコントロールパネルを操作し始めた。すると、奥から順に照明が点き始め、次第のこの空間の全容が見えてきた。


 ここは……工場?と言うより、格納庫みたいだな……それにしても広い。何を格納するんだ?


 「さて、先に行きますか」


 サカガミはまた歩き始めた。


 「ここは、何をする所なんだ?」


 男は率直に聞いた。サカガミには、率直に聞いた方が良いと今までの付き合いから理解していた。


 「ここですか?」


 そう言うと、サカガミは含みのある笑みを浮かべた。


 こう言うところは変わっていないな……


 サカガミは、何か自慢したい事がある時は、このような表情を見せる事がよくあったのだ。


 「ここはですね。今、別の工場で製造している、ある大型機械の格納スペースです。まだプロトタイプの段階ですが、その機体が出来上がれば、テストを繰り返し、タイプの違う物を12体製造する予定です。プロトタイプを合わせて13体が格納される予定です」


 「13使徒か……」


 男は呟いた。それを聞いてサカガミは笑って答えた。


 「正確には12使徒ですけどね。裏切り者の13番目の席には誰が座るのか……それとも救世主となるのか……それこそ神のみぞ知る……ですかね」


 皮肉か?ふざけた事を言う……


 男は、サカガミの悪ふざけとも言える言葉を聞き流す事にした。

 この数字を選んだと言う事は、サカガミの事だから何かしらの含みがあるのだろう。しかし、そんな事を知った所で、男には関係のない事だ。何かにこじつけた所で意味が無い。


 サカガミも、それ以上何も言わなかった。


 綺麗に区画整理されていた格納エリアをを通り抜けた先に、ひどく頑丈で大きな扉があった。


 「これは搬出用の扉です。なんせ奥にある物が大きいのでね」


 サカガミはそう言うと、大きな搬出用扉の横にある、人が出入りする扉の前に立ち、セキュリティボックスに手を翳した。


 〈第一認証、指紋、静脈確認、クリア。第二認証どうぞ〉


 サカガミはセキュリティボックスを覗いた。


 〈第二認証、眼球、虹彩確認、クリア。セキュリティオールクリア〉


 扉が自動的に開いた。


 「ここから、セキュリティが厳しくなります。さあ、行きましょう」


 サカガミは男を促して、扉の先に入って行った。


次回の更新は9月1日、朝7:30となります。

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