表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SIN〜第一部〜  作者: 冬馬
第五話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/63

第五話--それぞれの思い--04

 俺のA.IがAtlasのA.Iとリンクを取り始めた。


 俺も無茶な事をする。プロテクトを外すなんて、泥棒が鍵を開けてくれと頼んでいるようなものだ。そんな馬鹿な事をする奴が何処にいる。セキュリティコードに引っ掛かって弾かれるに決まっている。


〈SIN、出来たぞ〉


「何?出来たのか?」


 あまりにもあっさりとセキュリティコードが外れたので、俺は信じられなかった。


「本当に出来たのか?タチの悪い冗談じゃないよな?」


〈あちらさんが協力的でな。すぐに教えてくれた〉


 俺は、意外な答えに驚きを隠せなかった。まさに泥棒に家人が鍵を開けてくれたわけだ。うまく行かなかったら最悪、俺はAtlasのA.Iの制御を奪ってでもプロテクトを外すつもりだった。それだけ「H.M.A」の認識コードとは大切なものなのだ。

 「H.M.A」の個体識別、アイデンティティと言っても良い。自分が自分である為のコードなのだから……。

 それをすんなりとAtlasが教えてくれるとは思いもしなかった。


「お前、まさか脅して無いよな?」


 俺のA.Iは目的の為だったら押し込み強盗でも何でもやる。


〈馬鹿を言うな。俺がそんな下品な事をするわけがない〉


 どうやら嘘は言ってないように見える。

 

 それにしても……まさか……


 AtlasのA.Iもduo(ドゥオ)の心を読んでduoのやりたい事を理解してると言うのか?


 まさかな……もしそうだったとしたら……


 いや、今は考えるのはやめておこう。いずれにしてもAtlasが協力的なのは良かった。これからやる事の成功率も格段に跳ね上がる。


「よし、その認識コードを、位置情報マーカーにコピーして、搬送部隊のトレーラーにくっつけてやれ!」


 俺はA.Iに指示を出した。A.Iはすでに俺のやりたい事を理解しているらしい。何の文句も言ってこない。それよりもduoの方が戸惑っている。


「ちょっちょっとおい、何だ?位置情報マーカーって?そんな物、俺には無いぞ」


「ああこれか?昨日ちょっと作ってみたんだ」


「作ったって、お前そんなもん作って良いのかよ?」


 duoの疑問ももっともな事だ。


「別に必要だから作っただけだ。俺はソロだから自分の位置は自分で確認しなければならん。誰も行った事の無い所に出向くなんざ当たり前のようにあるしな。そう言う所に入る時は、コイツをばら撒きながら行くわけだ。迷子はゴメンだからな」


「なるほどなぁ。ソロって大変なんだなぁ」


 duoが変な所に感心して聞いている。

 本質はそんな所にあるのでは無いのだが、今ここでコイツに説明してもしょうがない。納得しているのならそのままにしておこう。これが、βチームの奴だったら、規約違反だ何だとめんどくさい事になる。

 duoが単純なやつで良かった。


 正直俺は、こんな所でこれを使うとは思ってもいなかった。本来の俺の想定とは全然違う使い方だ。テストも無しのぶっつけ本番で上手くいくとも限らない。かなり危険な賭け、いやこんな事は賭けとも言えない。無謀以外何者でも無い。

 もしこれが上にバレたら良くて精神教育にA.Iの再インストール、最悪処分対象だ。どの道、俺たちの関係は終わる事になる。

 子守りとはいえ、unus(ウヌス)も面倒臭い役目を押し付けたものだ。


 それとも俺の気持ちも考えてくれた奴なりの優しさなのか……。


 今更そんな事を考えても仕方が無い事だが……duoもこれがどれだけ危険な事なのかはわかっているだろう。ここまで来たら一か八かやるしか無いのだ。


「おい!duo!マーカーを作動させたら、こっちの認識コードをオフれ!できるな?」


「そんな事やった事がない」


 duoは戸惑っているが、それも当たり前の反応だろう。普通は絶対にやらない事をこれからやるわけだから。そもそも認識コードが何処にあるかなんて事も知らないかもしれん。


「A.Iに教えてもらえ!お前のA.Iなら教えてくれるはずだ」


 奴のA.Iが協力的であることは認識コードをコピーさせてくれた時点でわかっている。これからの事も協力してくれるはずだ。


「よし、マーカーを射出するぞ!手順はわかったな?タイミング合わせろよ!」


「ああ、何とかなりそうだ。A.Iがサポートしてくれる」


 俺の睨んだ通りだった。


「いくぞ!マーカー射出!」


 ギャレイからマーカーが二つ射出され、先行しているトレーラーに接着した。


「マーカー作動開始!duo!認識コードを切れ!」


「よっしゃ!」


「よし、隊列から離れるぞ」


 俺たちは、搬送部隊から離脱した。索敵モニターには搬送部隊のマーカーと俺たちのマーカーが並走している。


「ふぅ。どうやらうまく行ったみたいだな」


 俺は安堵の溜息を吐いた。これでひとまずは「ハンドラー」の目を誤魔化せる。そんな俺の心配を他所にduoの奴は、はしゃいでやがる。


「やったぞ!リン!これが自由って奴だぞ!誰も監視してないんだぞ!」


 俺はduoの能天気なはしゃぎっぷりに呆れてもいたが、何も言うつもりもなかった。アイツはリンとの最後の思い出を作ろうとしているのだ。

 それが、明日には俺たちの記憶から無くなろうとも、今はただ、リンとの最後の思い出を楽しめば良い。

 短いリンとの一時を楽しめば良い……

次回の更新は27日、朝7:30となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ