姉妹格差のある家の地味に冷遇される姉ですが、家族会議で思った事を口にしてみた
物語のような劇的な事なんて早々ある事ではないわよねえ。
なんて、思っていたのです。
子爵家の第1子(長女・リリア)として父の家系の女性陣に似た傾向の顔立ちで産まれ、普通に育ち、母そっくりの妹(次女・マリア)が産まれてから、じわっと、「あれ?なんか妹ばかり優先されてないかしら?でも、幼くて優先されるのは当然よね?でも、ちょっと偏ってないかしら?でも、でも……」みたいな、じわっとした、話の種にもならないような格差をつけて育てられました。
妹の希望はほとんど通るのに、私の希望はなんとなくずらされる。
妹のドレスより私のドレスの方がほんの少し安っぽい。
妹好みの料理の方が頻繁に食事に並ぶ。
私の物を取り上げる事はないけれど、妹に用意される物の方が物が少し良い。
姉妹格差のある物語のような劇的な格差はないけれど、母が妹ばかり可愛がるので、父はその分私を可愛がってくれればいいのに、姉妹平等に可愛がるので、少しだけ差がつく。
そんな感じで育ち、年頃となったので婚約者(フレッド様・同格の子爵家四男。失礼ながら可もなく不可もなくといった感じの方)ができました。
私が子爵家を継ぐので、それを支える入婿(予定)です。
フレッド様とははじめはそこそこ普通に婚約者として交流していました。
が、妹に会ってから妹に夢中になってしまい、一応その事は隠しているようですが全く隠しきれていません。
妹の方も妹の方で「優しくしてくれるお兄さん……、好き……かも……。でも……いけないわ……、でも……」みたいな仄かな恋心を抱いたようでした。
当然、私が気づくので使用人も気付きます。
父に報告され、家族会議となりました。
「マリア、フレッド殿が好きなのか」
何を聞いているのかしら。
好きならどうなるものでもないのに。
「マリア……マリアは……、………………いえ、婚約者、というものに憧れているだけ、ですわ……」
そろそろ一人称が自分の名前ってどうなのかしらね?
この子、もっとハキハキ喋れないのかしら。
でも、この場面で恋心を口にしない程度に考える頭があったのね。
「マリア、正直に言って良いのよ。お母様が良いようにしてあげるわ」
…………何を言ってらっしゃるのかしら?
お父様が頭を抱えています。
「……リリア、お前はどう思っているんだ?」
どうって言われてもねえ……。
「姉と婚約しているのに妹に色目を使うなんて、食事中に隣の人の皿にフォークを伸ばす下品な無作法者の様ではなくて?そんな無作法者とは縁を繋ぐ価値が無いと思っておりますわ」
別に資金援助を受けてる訳でも共同事業を行ってる訳でもないんだから無理に婚約を続ける事もないのよねえ。
お母様も妹も驚いて声もない様子だけど、私としては驚く事に驚くわ。
「そうか、では先方には婚約解消を申し入れておく」
「よろしくお願い致します」
先方では多少渋られたそうですが、無事に婚約は無かった事になりました。
やっぱり、物語のような劇的な事なんて早々ある事ではないのよねえ。