真の初日
士官学校二日目の目覚ましは、昨日とは違い太くて低い怒号から始まった。
「おい、一学年起きろ朝だぞ!いつまで寝てんだっ!」
その時まだ夢の中にいた俺は一緒にして現実の世界に引っ張り出された。
え?昨日の優しい先輩達は何処だ、今目の前にいるのは昨日の仏のような先輩達ではなくただの鬼だ、早く仏様私達のもとに帰ってきて下さい。
そんな思いとは裏腹に鬼は変わらず罵声をあびせてきた。
「ほら、オーレンドルフとルドルフ、朝礼点呼だ走れ!後輩は先輩よりも早く行くのが礼儀だろ!」
鬼や、これはほんまもんの鬼や、仏さんは鬼に食われてもうたんや!
やばいこのままここに居ても殺される、さっさと朝礼場へ逃げよう。
「おい、何そのまま行こうとしてんだ、朝礼時は上半身裸ってゆったろ!」
聞いてないよ!でもこれを行ったら多分殺されるから黙って朝礼場行こう…
朝礼場まで行こうと外に出た瞬間肌を針で刺すような寒さを感じた、しかし後方から聞こえる罵声と悲鳴に背中を押され朝礼場へ走った。
朝礼場へ着くと先輩達の上半身が目に入った全員筋骨隆々だった、あの一見細そうに見えたフィリップ先輩ですら細く締まった体をしていた、その後すぐさま点呼が始まった途中まで順調だったがルドルフの番で異常が起きた、一学年の点呼の番になり進んでいた点呼が、ルドルフの番で少しタイミングがずれたのだ普段なら気にも止めないが鬼はそれを見逃さなかった。
「総員腕立用意!三十!」
一瞬言葉を言葉として認識出来なかった、いや脳が認識するのを拒んだんだろう、それほどの衝撃だった。
そのため反応が少し遅れた、そしたら体に異常な衝撃が走った、鬼に襟首を捕まれ地面に叩きつけられたのだ、気づいたら地面が目の前にあり左半身に痺れが残っていた。
「戦場では一時の油断が命取りだ早くしろ!」
それまで二の足を踏んでいた一学年は、俺の姿を目にした途端に見事な腕立ての姿勢になった、やはり皆命は惜しいのだろう。
その後恐怖で強張った声で上手く声を出せるはずもなく三回ほど腕立てを繰り返し朝礼点呼は終了した。
俺は直ちに対番のフィリップを探した、こんなんなんて聞いていない一言いってやろう。
「フィリップ先輩、昨日こんな事になるなんて言ってなかったじゃないですか、先におしえかさてくださいよ!」
俺が痙攣している腕を擦りながら問い詰めると。
「当たり前じゃないかそんな事をしたら俺が上級生に殺される、悪いとは思ってるでも、こういうもんなんだ、お前もそのうちなれるさ。」
そう言い残しフィリップ先輩は去っていた。