己の志
両軍合わせて二千両に及ぶ戦車が投入された前代未聞の戦車戦が始まった。
だが結着はあっけないものだった、ドライ帝国からのライセンス生産していたポランド共和国の戦車部隊と旧式ばかりのコルン連邦の戦車部隊との差は凄まじかった。
コルン連邦の戦車の砲弾はポランド共和国の戦車の装甲を貫徹できず、逆にポランド共和国の戦車はコルン連邦の戦車の射程外から蜂の巣にしていた、2時間ほど経つとケェーウの街にはコルン連邦の戦車の残骸だけが目立っていた。
ケェーウ戦車戦に負けケェーウを失ったコルン連邦軍は急速に弱体化していった。
そして俺等がケェーウを落としてから2ヶ月後、遂にコルン連邦の首都のモスクが陥落した、ほとんど抵抗らしい抵抗もなかった。
だがコルン連邦は降伏しなかった、そのためドライ帝国はヒノモト国に参戦を仰ぎコルン連邦を挟撃し降伏させた。
占領したモスクで戦後処理をしていた俺のもとにルドルフが来た。
「戦勝おめでとうございます、オーレンドルフ君。
ケェーウでの戦車戦での大活躍は聞き及んでますよ。
これでこの戦争の優勢は決まりました、アメック国は最早勝つ見込みがないと思ってか秘密外交を提案してきました、その結果アメック国はブリカース連合王国にこれ以上の援助をしない代わりに枢軸陣営との白紙講話を結ぶことで落ち着きました。
ですがまだブリカース連合王国との戦争が続いています、ですので戦後の講和会議までの間ポランド共和国に旧コルン連邦領土の委任統治を任せたいと思っています。
貴方には、ウクライーネを任せたいと思っています、ここは世界で有数の穀倉地帯でありこれは大変重要ですよ。
ああ、あとそろそろ奥さんに顔を見せてあげては?
戦争が始まってから会っていないのでしょう?」
確かに戦争が始まってからペトラに会ってない、久しぶりに帰るか。
久しぶりに家に帰るととても懐かしく感じた、実際に家をあけた期間より長く感じるのは戦場に居たためだろう。
「ただいま」
「お帰りなさい、お疲れ様」
ああ…やっぱり家が一番落ち着くな。
こうして家に帰り風呂の後晩飯になった。
晩飯は美味そうなボルシチだ。
「オレン、戦場お疲れ様、もう戦争は終わるんだよね?」
「ああ…でもまだ俺の仕事は終わっていない、ウクライーネの委任統治の仕事をもらったんだ。
まだ反乱分子も多いから厳しく統治しないと」
「それって、オレン…まだ人殺すの?」
「ああ…でもあと少しなんだ、これが終われば平和が来る、これもお前達を守るためなんだ」
ああ、そうだもう少しなんだ、あと少しで俺の望んだ未来が来る。
「私のためならもういいよ、これ以上人が死んでほしくない、もうやめよ」
「あと少しなんだ、分かってくれ」
「どうしても辞められないの?」
「ああ…ここまで来たら俺がやるしかないんだ!」
「そう……」
あれ?視界が曇ってきた、体も重い、この感覚…前の時間軸死ぬ前に似ている。
そう思いペトラを見ると、泣いていた。
「ごめんね…ごめんね…
もう人が死んでほしくないの。
オレンにこれ以上人を殺してほしくない。
このまま眠って…おねがい…」
ボルシチか、おそらくあれに毒などを入れたのだろう。
何でも、俺はお前らのために…
いや…もともとペトラは戦争を嫌がっていた。
もういいか、俺の志は成せた。
家族を守れた、もう十分だ…
ああ…ねむい。




