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番外編◆ある日の漆黒の騎士団

※本編14頃(舞踏会)/コミカライズ最新話が終わった後のユリウスサイド物語になります。


【お知らせ】

小説2巻  9月1日発売

コミック1巻  9月5日発売  です…!

ご興味ありましたら、ぜひよろしくお願いいたします…!

◆Side:ユリウス◆



漆黒の騎士団にある団長室で、ユリウスは自身の机に置かれた書類に目を通していた。そんなユリウスの側では、副団長のマルクも書類内容とにらめっこするように、難しい表情で取り組んでいる。数日前に同盟国のフリックシュタインで開かれた舞踏会へ参加したこともあり、いつもより書類の数が少し多くなっている状況だった。


「はぁ……舞踏会は楽しかったけど、仕事はやだなぁ」

「……」

「なぁ、ユリウスもそう思うだろう~?」


マルクのふてくされた声に、ユリウスが無言ながらも視線を向ければ……彼は何かに圧倒された様子で書類へ再度向き合うことを決めたようだった。いつも通りのマルクに少しの呆れを感じつつも、ユリウスはふと書類を持つ自身の手に目が行く。そこには傷がすっかり快癒した自身の手のひらが見えた。


舞踏会の際、自分の母がガラスの破片を魔法で飛ばす騒動があった。


他者へ被害が出る前になんとかユリウスが止めに入れたものの、あの時のことを思い出すと、腸が煮えくり返るほどに母に対して怒りを持つ。そして心残りなことは、普段戦場とは関係ない世界で生きているペティグリュー伯爵令嬢・ナタリーに、母の魔法によって傷を負い、血を流す手を見せてしまったことだ。


(――彼女は、大丈夫だろうか?)


ナタリーのことを思い出せば、ユリウスは心配でいっぱいになる。


ナタリーはユリウスの怪我を心配して、王城の庭園にまで足を運んでくれた。そのおかげで、ユリウスの手のひらに傷が一つも残ることはなく、快癒したのだ。優しく思いやりがあるナタリーが、舞踏会の一件でトラウマになっていないか……とそうした心配がよぎってしまうのだ。


(迷惑かもしれないが――もし彼女に降りかかる障壁、災難があるのならば……すべて消してしまいたい)


普段のナタリーも眩しいほどに美しいが、舞踏会の時に見た白と紫を基調としたドレスを身にまとったナタリーは天使と言っても過言ではない美しさだった。あの舞踏会を機に、ナタリーを誘拐する輩が現れてしまうんじゃないかと真剣に心配になるほどに。


なによりナタリーは真っすぐな気持ちが瞳に表れていて、そうした輝きがさらに美しさに加わっているのだ。そしてユリウスがナタリーの足を心配して、抱き上げた際にも……。


(あまりにも軽かった。それと距離も近く――……)


アメジストを思わせる綺麗なナタリーの瞳に、近い距離でじっと見つめることになって自分の心臓がいつも以上におかしな拍動を繰り返していることに気づいたのだ。今までせき止めていた想いが全て溢れてしまいそうな、それほどの衝撃がユリウスに走った。


そしてその当時のことを思い出すと、耳から頬にかけて熱を帯びている感覚が生まれ――……。


「あ~~! ユリウスの顔、赤くなってる~~!」

「……マルク」

「俺に注意しながらも、なんだかんだ言って、ユリウスも隅に置けない男だな~! それで、いったい何を思い出したんだ? もしかしてあの美しいペティグリューのご令嬢の……」

「どうやら、体力があり余っているようだな? この後、俺が稽古をつけてやろう」

「え!? そ、それって……」

「……日が昇る前に終わるといいな?」


ユリウスは自身の背後から、ゴゴゴと音が出そうなほど威圧感を放ちながら真剣な面持ちで話した。すると、からかいを含んだマルクの声は一瞬にして情けない声へと変わる。


そして、口元を震わせながら「い、いやだぁぁああ」と、マルクの哀れな悲鳴が漆黒の騎士団内に響き渡るのであった。


お久しぶりです。江東です。

番外編を更新させていただきました。

不定期になってしまい、本当に申し訳ございませんが

また番外編を随時追加していけたらなと思っております。

引き続き、尽力してまいりますのでよろしくお願いいたします…!

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