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お待たせしました…!

よろしくお願いいたします…!



「ナタリ~!本当に、公爵様とは何もなかったんだな?」

「……お父様」

「本当に、本当に、何もなかったんだよね…?ううっ」

「あなた…」


遺跡地下の一件が終わり。ナタリーは、無事にペティグリューの屋敷に帰宅していた。そして、母やミーナなど…無事に帰ってきたことを喜んでくれている中。心がほっと安心する…が。


お父様が、しきりにエドワードやユリウスに関して――何度も聞いてこなければ。もっと心の平穏はあったのかもしれない。


(本当に、あっという間だったわ…)


ナタリーは、遺跡内から外へ出た時のことを思い返す。


◆◇◆


遺跡騒動のあと。元義母はエドワードの騎士団によって拘束され。連れていかれることになった。宰相はまだ“影”によって、追跡中とのことらしい。


元義母は、宰相と絡んでいたこともあり。ユリウスが率いる漆黒の騎士団も。エドワードが、連れていくことを承諾していた。なにより、ユリウスの身体がボロボロなこともあって。


「お前は、早く…あのうさん臭いじじ…医者に、見てもらった方がいいね」

「……俺は、平気だが」

「はいっ。ウソー!俺でも分かるからね!ほら、行くよ!」


マルクによって…半ば強制的に。ユリウスは、団員たちに支えられながら隣国へ帰っていった。


一方のエドワードはというと。


「ナタリー…僕は、ここまで。宰相を追うって判断をしたことを悔やむなんて…」

「え、えっと…?」

「よければ、今日は王城で一夜を…」


遺跡地下へ戻ってきてから。どことなく目が据わっていて。いったいどうしたのか、と。戸惑っていれば。


「殿下、失礼ですが。うちのナタリーは、枕が…いや、空気が変わると体調を崩してしまうのですっ!」

「え…?」


そんな事実初耳なのだが。お父様は至極真面目に、エドワード対して言い張っていた。その態度に…エドワードは苦笑を浮かべながらも。両手を上げて、降参のポーズをとったかと思えば。


「ふっ、それなら仕方ないですね…ナタリー、また連絡を送りますね?」

「え、ええ…?」

「それでは」


お父様にお姫様抱っこされながら…エドワードに別れの挨拶をした。最後までお父様は、まるで敵を見るように睨んでいた。


注意する体力も残っていなかったので。お父様に促されるまま…ナタリーは帰路についたのだった。


◆◇◆


そして、そんなやり取りがあったためか。お父様はいつもの、面倒くささを発揮していて。反対に、お母様やミーナは。いったい何があったのか…期待するようなまなざしを向けてくる。


しかし、恋の応援隊とでもいう二人は。ナタリーに無理には聞かず。勝手に妄想しては、盛り上がっている様子が見えた。


「今日は疲れたので、お先に失礼します」

「ええ、おやすみなさい。ナタリー」

「ナッ、ナタリー、話はまだ…」

「ほら、あなた行きますよ」


両親に挨拶をして。自分の部屋へと歩みだす。途中、お父様の情けない声が聞こえたが…お母様がなんとかしてくれるだろう。


(それより…結局。閣下の魔力暴走について、聞けなかったわ)


あの地下での出来事から。ユリウスが特異体質を患っていること。それを知った…が。空間を歪ませるほどの魔力があって。それが爆発してしまうということ以外、なにも分からなかった。


いつその爆発がおきるのか。ナタリーの魔法によって、どうにかなったのか。


疑問は尽きないが…以前の記憶では。ユリウスが、その魔力暴走によって死ぬことはなかった気がする。


(フランツ様のおかげなのかしら…?)


疑問は尽きないが――考えても答えが出ない。そして、公にされていない。公爵家の秘密にも近いことを聞くのは、憚られる気持ちもあり。


(そもそも、閣下以外にも謎が多すぎて…何が起こっているの?)


宰相がなぜ、元義母と手を組んでいたのか。元義母の魔法を、無効化したようなナタリーの力はなんなのか。そして。


白い光を出した時に、脳内で視線があった。あの瞳は――。


様々な疑問を。考えれば、考えるほど。疲れている身体から、さらに体力を使う結果になってしまって。


寝る支度を整えたナタリーは、ベッドに入った瞬間。疲れによってそのまま、眠ってしまうのであった――。


◆◇◆


遺跡の騒動からは、平穏な日々が続いた。

確かに、領内で不審な魔力反応があったことへの収束作業はあったものの。その当事者は、現在王城で身柄を確保されているので。


ペティグリュー家から、さらに何かの処理が発生することはなかったのだ。むしろ、それよりも。遺跡の地下空間について。お父様でも知らないことが…たくさんあったのに、注目が向いて。


王城から、騒動の翌日。研究者のいで立ちをした――王城の役人たちがやってきて。お父様が、自ら案内するほどであった。


お父様が言うには、「石やいくつかの文献を持って、研究するそうだ」と。もしかしたら、その研究の結果によっては。自分の謎が分かるのかもしれない…そう、ナタリーは結論付けた。


あれから、光のことや魔法の無効化について話したが…。お父様もお母様も、知らないとのことだったので。研究結果を待つしかない…ということの方が正解なのかもしれないが。


そうして日々を過ごす中で。酷使した体力も、だんだんと回復していき。太陽が、木々の隙間から差している正午。


「ふふっ、ナタリーとこうしてお茶をするのは…久しぶりに感じるわね」

「…たしかに、そうですね」


今日もお父様は、王都から来た研究員たちを案内している。そのため、お母様と一緒にテラスでティータイムを楽しんでいた。


ミーナが腕によりをかけて淹れてくれた紅茶は、今日も香ばしく、美味しい。お母様と、他愛もない話で花を咲かせていれば。


「あっ!おかわりを淹れてきますね…!」


ティーポットに、紅茶がないことを察して。おかわりを淹れてくるとのことで…廊下へと、少し速足で駆けていく。


「まあまあ、ミーナはせっかちさんね」

「ほんとうに…ふふっ」


微笑ましいと思う程。平穏で、ゆっくりな一日。今日は、穏やかに一日が過ぎていきそうだと。そう思っていた時。


「お、お嬢さま~~!」


(あら、この流れ…私知っているわ)


穏やかな一日で、終わらない気配を感じる。なにより、ミーナが廊下を全力で音を立てながら走っていて。


扉が勢い良く開き、想像通り。息を切らし…空のティーポットを持ったミーナが立っていた。


「あら、あら。今日のミーナは一段と元気ね…ふふっ」

「お母様…」


毎回ミーナのあわてんぼうさを、“元気”で片付けていいものなのか…。少し疑問に思いながらも、ナタリーはミーナに声をかける。


「ミーナ、慌てて…どうかしたの?」

「そ、それが…!王城から、使者が来ましたっ」

「まぁ!ですって、ナタリー!」


お母様の嬉しそうな…わくわくした声色を聞くと。現実感が増してくる。


そんなナタリーは、面倒そうな雰囲気を感じ…空を仰いだ。そうすると、ナタリーの心情とは全く違って。清々しいほどの青い空が、そこにあって。


(本当に行かなきゃ…いけないかしら…)


どうか、お父様が騒ぐようなことでは…ありませんように、と。ナタリーは心の中で祈った。



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