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突然現れたエドワードを、屋敷の応接室へと案内する。聞きたいことは山々とあったが、それ以上に王族への礼儀が必要だと…お母様が判断したのだ。


一方、お父様は――応接室へ向かうものの。「デート…」と呟くだけの人間になっている。


「その…、エドワード様は魔法でこちらに…?」

「ああ、瞬間移動の魔法でね…」


端正な顔つきのエドワードは、優雅に座りながら…「戦争後に、形になっていったんだ…遠くまで移動できるように、ね」と。不敵な笑顔を浮かべていた。


「そ、そうなのですね」


エドワードの魔法の才能に感服していれば。彼は、姿勢を正して。


「単刀直入だが、僕がここに来たのは…。ナタリーが怪しい人物を見た…と報告を受けたからなんだ」


緑色の瞳と視線が合う。彼の言葉は、想定範囲内だが…王子であるエドワードが来るほどのものなのか。と彼の言葉を待っていれば。


「今回、国を騒がせているのは…ただの不審者、ではないんだ。魔法を使って、姿が分からなくなっているのもそうだが…その魔力が」


エドワードは、暗い表情になりながら…口を慎重に開いて出したその言葉は――。


「我が国の…元宰相のものなんだ」

「……え?」

「ま、まあ…」


驚きの声をナタリーとお母様が出す。またお父様もやっと、現実に戻ってきたのか――話を真剣に聞いていて。


「宰相様は…まだ逃亡してらっしゃいますの…?」

「…そうなるね。戦争時に彼を捕まえる手はずだったんだが…逃げられてしまっているんだ」


応接室内の温度が、低く。そして冷たくなった。それは、悪い現実を知ったから――。


「僕が、未熟なばかりに…彼を未だに捕らえることができず。本当に申し訳ない」

「い、いえ!」

「そうですわ。ナタリーをはじめとして、私たちペティグリュー家は…殿下に感謝しかありませんわ」


お父様が慌てて否定をし。続けてお母様が、口を開いた。そして「今の平和があるのは、殿下のおかげですわ」と、優しく話す。


それに関しては、ナタリーもエドワードの尽力のおかげだと感じているので…頷きながら肯定した。


「そうか…、そう言ってくれると。嬉しいよ」


エドワードは、ペティグリュー家からの言葉に元気づけられたのか。表情が少し明るくなった。


「宰相様のことは分かりました…でも、ペティグリュー領だけではなく。国内に来ていらっしゃるのよね?」

「確かにそうなんだが…」

「ですが…?」

「ナタリーの報告をもとに、改めて宰相の魔力について…ペティグリュー領に絞って簡易に調べたんだ…そうしたら」


ナタリーが促すように質問をすれば。戦時中は、よく活用される…魔法や魔力の検知器具を使ったことが分かった。王城でなら、魔法の扱いに長けている臣下などがいるため。


指名手配がかかると城から器具を使用して、探すことがよくある。そんな魔力の分布を王城で調べたであろう…エドワードの“調査”の結果を待つ。すると。


「…ペティグリュー領の山から、宰相の魔力が微弱だが…検出されたんだ」

「……え…」

「どうやら、ペティグリュー家が行っている魔法を隠れ蓑に使っていたみたいで、ね…」


それはつまり…気候で周りが壊れないように施している。“ペティグリューの魔法の中”へ宰相が逃げ込んでいるという内容で。


微弱ということになると…おそらく、はじめは。“ペティグリューの魔力が、宰相よりもたくさん検出されたため”気に掛けられていなかったのだろう。


――地の利を活かして、隠れるなんて…。


いつから宰相が隠れていたのか。まさかあの老人は…と、怖い予想が頭によぎり。ナタリーは、ぞっとする。


「この件は、僕が対処する手筈になったから…ナタリーに話を聞きたいのもあって…王城から瞬間移動できる装置を渡したんだ」


そうエドワードは説明し。お父様に、「協力、感謝します」と笑顔を向ける。ナタリーは、事態の内容がわかり頭を悩ませながらも…納得した。


「そう…でしたのね」

「突然で驚かせてしまった…かもしれないけど、どんな人物を見たのか教えてくれるかい?」

「ええ、その…」


エドワードに、自分が見た“老人”の特徴について語れば、ナタリーの話を聞くうちに、彼の顔から笑顔が消えていく。


「そう…か」

「ええ、私からは以上になりますが…なにか…」

「いや…聞けば聞くほど…。おそらく、宰相は変装の魔法を使っていることが分かってね…」


変装の魔法と言えば、エドワードと城下町に出かけた際にも見た魔法だ。自分の瞳や髪色を変えるくらいだと思っていたのだが…。そんな疑問をナタリーの表情から、読み取ったのか。


「実は、あの魔法は…宰相が僕に教えてくれたもので…ね」

「ま、まあ…」

「皮肉だが…彼の魔法のセンスはかなりよくてね。姿形が変わることなんて…彼にはわけもないのかもしれないね」


そして、その言葉の内容を裏付けるように。「宰相は、魔力を検知する部署にいたくらいには、魔法について詳しかったからね」と話した。


聞けば聞くほど、宰相という人物は厄介な才能を持っている気がする。


「というのが、彼の特徴だが――そんな宰相が、どうやら最近…ペティグリュー領のここら辺にいたようでね…」

「え、ええ」


エドワードは、応接室の机に広げるように。見えない空間から取り出した紙を出す。おそらく、見えない空間には――前に見た“影”がいるのだろう。


広げられた紙は、ペティグリューにある山を詳細に見てとれる地図で。その中の一点を、彼は指さした。そこを見たお父様とお母様が、首をひねる中。ナタリーは目を見開く。


「っ!そこは…」

「…ん?知っているのかい――?」


知っているも何も――そこは。

涙露草(なみだつゆくさ)が採れる場所として、ナタリーが教えた所…だったからだ。


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