1話
──かつて、世界を恐怖に陥れた魔王が存在した。
魔王の力は強大だったが、選ばれし四人の英雄達が立ち上がり、長きにわたる戦いの末、ついには相打ちとなり、世界には平和が訪れた。
彼らは世界を救った英雄として伝説となり、いまだ語り継がれている。
「だってー!すごいよね!アビィ!」
「……ニャー」
幼い少女にして、私の飼い主たるエスペラ様がそのように私に同意を求めてくるので、私としては軽く鳴くしかありません。
「だよね!アビィもそう思うよね!」
「ニャー」
正直な話、猫に同意を求めるのもいかがなものかとは思いますが、エスペラ様を傷つけるわけにもいかない以上、鳴き声をあげるしかできないのです。
「あのね?アビィの名前は、英雄の一人、大魔導師のアヴァロン様からとってるんだよ?アヴァロン様は凄い魔導師だから、私は英雄の中で一番好きなの!」
そう言われると、なんだか恥ずかしいですね……
──そう、エスペラ様に拾われた「アビィ」という名の猫、それは英雄と呼ばれた四人の一人、アヴァロンなのです……
何故こんな不思議な事になっているのでしょうか……
私は、少し記憶をたどってみることにしました。