リーベンスの村その2
二人でお湯を堪能した後
一度部屋に戻り、汚れた服を置いてから宿の1階にある食堂に向かう。
もうすでに何人かの宿泊客は食事をしているらしく、ほんわりといい匂いが漂っている、うっすらと感じていた空腹感が目覚めてぐうぅと声を上げた。
「おっ、来たか注文は何にする?」
スキンヘッドの主人が手書きのメニューを渡しながら訪ねてきた。基本的なメニューの他に可愛らしいい字でいくつか手書のメニューが書いてある、
「これ、オヤジさんが書いたんですか?」
「ちげぇよ、うちのかみさんが書いてんだ。料理やら、部屋の清掃を担当していてな、味は保証するぜ。」
ニカっと笑い親指を立てる主人は、やっぱり愛嬌がある。
少し考え私はキャベツと鶏肉の煮込みとパン。ルルは羊肉の甘酢あんかけとごはんを頼んだ。
「おまち!」と主が皿を運んでくる、目の前に置かれたおいしそうな、いや確実においしいとわかるにおいに空腹は極まっている。
「いただきます」という声と同時に口に鶏肉が煮込まれたであろうスープを口に入れると、優しくもしっかりとした旨味が口の中に広がる。おいしい。ゆっくりと広がる旨味が幸せ。こうなったら止まらない、鶏肉を、煮込まれた野菜たちを口が空く間もなく運んでいく。
「ところで、そっちの冒険者は護衛と聞いたが、ウサギの獣人さんの方は商工ギルドの何に所属してるんだい?」
私が口を忙しくもぐもぐしていると、主が訪ねてきた。口の中の物を嚥下して。
「商工ギルドの魔導具技師で登録しています。」
「とすると、お嬢ちゃんはエンジニアかい?無くはないが珍しいな。旅は初めてか?」
「お嬢ちゃんって、ちゃんと成人してますよ。ちっこいですけど。」
「悪い悪い、こっちの冒険者といるとどうもなぁ。」
「まぁ言われ慣れてるので良いですけど。」
「そりゃあありがたい。それでこの街で依頼受けていくんだろ?」
「ええ、なにか依頼はありますか?」
「物によるな、何が弄れるんだい?」
「一般家庭にあるものならだいたい弄れますし、治せます。大型だったり、特殊な物はちょっと今は厳しいです。」
「なるほど、分かった、明日村の広場に張り出しておこう、それを見たら依頼が来るだろう。」
「そんなんでいいんですか?」
「ああ、この村は中央に広場があって商店あるから村のみんなが集まるんだ。そして話もそんなところは集まるし広まりやすいのさ。」
「なるほど。」
そうなると考えて村を構築したのだとしたら、うまい建設の仕方だ。ルルの方は食事を楽しんでてもうほぼ食べ終わっている。
「ところで、何故あんなにボロボロだったんだ?まるで山の中を転げまわったみたいな格好してたが。」
「まぁ実際かけずり回ってましたから。ブレイウルフの群れに見つかっちゃたんです。6体くらいだたかな。」
と、食事を終えお茶を飲んでいたルルが、
「10体よ、6体がリーナを追って4体が先回りしようとしていたわ。」
「嘘、そうなの?」
「そうよ、ブレイウルフの狩りの仕方は、数体が先回りして、獲物の逃げる先を誘導しつつ本体が追い詰めるっていう仕方をするのよ。」
「でも私、先回りに出会ってないよ?」
「それは私がつぶして回ってたからよ。そうすればブレイウルフは絶対にリーナに仕掛けてくることはないから。」
ルルはあっさりと言う。
「先行部隊が飛び出して獲物が一瞬止まった隙に追跡部隊が襲い掛かるっていう手を使うのよ、逆に言えばそういったアクションが無い限り、追跡部隊は手を出してこないわ。」
「じゃあ、ルルは先回りしているブレイウルフをつぶしつつ、私を崖に走らせて、煙幕使って狼たちを一網打尽にしたってこと?」
「そうよ。対策を知っていれば割と簡単に撃退できる相手なのよ?他にも追ってきたやつらを分断させちゃうとか、いろいろあるわ。」
軽く仰っていますが、普通の人は命掛けで走りながらそんなことは考えていられないだろうし、できる冒険者ってどれくらいいるのだろう
「ただ、今回はちょっとしつこかったけどね。」
主が方眉を持ち上げながら。
「ほう、しつこかったか、ちょっと話をきかせてくれないかい?」
興味があるようで、今度はルルが主人と話し始めた。
脅威となる獣の情報はギルド支部の主としては知っておきたいのだろうか。
そんな二人をよそに次は私が少し熱の去った料理をのんびり楽しむのであった。
翌日、朝ごはんを食べているとギルドの主人から仕事が入ったと聞かされた。
なんでも裁縫屋のミシンの調子がわるいらしい、午後から来てほしいとのことだ。
「朝一で広場の掲示板に依頼募集の知らせを張ったら、ちょうど裁縫屋のマールばぁさんが来てな、ミシンの調子が悪いんだと、依頼受けるんだろ?後でギルドのカウンターに来て手続きをしてくれ。あと、護衛ちゃんの依頼完了報告も頼む。」
「わかりました、ありがとうございます。後で伺いますね。」
「おう、助かるぜ。そういえば俺の名前はタック・レールだタックと呼んでくれ」
ニカっと笑いサムズアップをするギルドの主人は、朝から元気だ。
「わかりました、タックの親父さん。私は魔道技師のリーナ・ベルナリスです。」
「親父はいらねぇよ?」
私は食べ終えた食器を戻し部屋に戻った。午後からならば選択をする時間もある。昨日の服はドロドロだし洗濯しなければすぐに着替えなんぞ尽きてしまう。
こういう宿には大体風呂場に洗濯機があるので汚れた服をもって昨日堪能した風呂へ向かうと、ルルと出会った。
「リーナも洗濯?」
「ということはルルさんもですか?」
「今洗濯機に入れたとこだよ、女の子たるもの清潔にしておかないと。」
「そうだね、って、空いてる洗濯機ない!?」
「ううん、もう一つ空いてたから、今から行けば大丈夫だと思うよ」
「よかった~、実は午後に依頼があって、午前中に雑事は済ませなくちゃいけないんだ。」
「そうなの?じゃあ急がないとね。私もこれから依頼受けに行くのよ。」
「そうなんだ、頑張ってね、あとタックの親父さんが依頼完了の報告してくれって」
「わかったわ、こっちも報告しておく。リーナも依頼頑張ってね。」
どんな依頼を受けるんだろうと考えながら歩いていると、昨日私たちの疲れを癒したお風呂場に着いた。
脱衣場の奥にもう一つ部屋があるようで、そこに2つ洗濯機が置いてあるようだ。
早速空いている洗濯機の魔吸珠に手をかざし魔力を充填する、魔吸珠が淡く光り洗濯機が給水を始めたら、汚れた服を入れて洗濯用の石鹸を入れて洗濯開始だ。この分の魔力要求量なら1時間30分位で終わるだろうから、その間に受付で依頼の完了と受付を済ませてこよう。