リーベンスの森とブレイウルフ達
リーベンスの森の中の馬車路から少し奥まったところ、木漏れ日から差す光はふんわりと温かく、それを遮る木陰の下はさらりと涼しい。
お弁当でも持ってきて、食後に木々の間を抜ける緑を含んだ風を堪能しながらの昼寝はさぞ気持ち良いだろう。
そんな素晴らしい環境の中、私は
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉあおああおお」
絶叫しながら走り抜けている。
汗だくになっているのに喉はカラカラで、惜しみなく動かしている手足は徐々に重くなってきているけれども、それらを止める訳にはいかない。
なんてったって私のウサギの耳には、ブレイウルフ達の息遣いと付かず離れず付いてくるそれらの足音が聞こえているのだからもう生きた心地なんぞしない。
もし少しでも走る力を緩めようものならば、後ろから迫ってきているブレイウルフがその牙を惜しげなく私に突き立ててくるだろう。小柄である私の体は食べ応えこそないだろうが、年相応の柔らかいお肉は、彼らにとってそこそこのごちそうだ。捕まったが最後、こぞってムシャムシャされてしまう。
それだけは絶対に嫌だ!無理!!本当に無理!!!何とかしてよ護衛さんよーーーーー!!!!
幸いにも距離を詰められてきてはいないが、隙でも伺っているのだろう、決して離れることもなく追尾してきている。木の根をよけ、落ち葉を飛び越え逃げているが、これはどっからどう見てもジリ貧というやつだ。
なんてったって相手はそれこそ一日中獲物を探し回っているタフな獣らで、何か手を打って撃退しなければいつまでだって追ってくる、が、貧弱な私にはその打つ手が無い。まぁ1発2発なら方法があるにはあるが、効果はないだろう。それはあくまで1対1の時に使える物で、6匹ものブレイウルフに効果のあるものではないだろう。
こういう場合に対処するためにそこそこの金額を払ってブルタルの町で護衛を雇ったのに、その護衛は、
「とりあえずこっちに逃げて」
と、言ったっきり姿も見せやがらない。
「護衛は何処へ行ったのよ!もう!!!!」
と、呼吸しかできない口に代わって心の中で叫んでいると、ガサガサっ!!という音とともに影の塊が降ってきた。私の耳含め頭1個ほど大きい影は。
「おまたせ~」と、のたまってくる護衛として雇った猫獣人だ。
胡桃色のショートヘアーから金茶色の猫耳がぴょこっとはえている。マントをつけて全身は見えないが、隙間から除く四肢はスラッとしていて、しなやかに体を動かしながら無駄無く私と並走してくる。
「はあっ、はあっ、どこ行ってたのよ?こちとら限界近いんですけど?護衛ならとっととあいつら倒しちゃてよ~!」
「あはは~、いくら何でも10体いっぺんにかかってきちゃあ私だけならともかく、リーナをかばいながらは戦えないもの、まぁ下準備は済んだから。安心して?」
いやいや、待て待て、何?下準備?何してきたんだこいつは?頭の中に浮かんだ疑問を口に出す前にルルは続ける。
「ここから少し行くと大きな刺々しい岩があるから、見えたら左に曲がっていきつつ、岩を背にまっすぐ走ってね、何があっても真っ直ぐだよ、槍が降ろうが、二神大戦が起ころうが真っ直ぐね。」
と、言ってタッと地面を蹴ると木の枝を飛び移りながら、先に進んでいってしまった。
言うだけ言ってまたどこかに行きやがった。もし私が死んだら耳の毛だけ禿げ続ける呪いをかけてやろう、そうしよう。
ぼちぼち投稿していきますが、筆が激おそかつ時間が取れないときは書けませんが、頑張って投稿していきたいと思いますので、忘れたころに見に来てください。