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ドルーフィムーリド 6

 どうやらニュースのようだ。白い服を着た女性が、聞き取りやすいはっきりとした口調で話している。


『太平洋上に謎の大陸が出現したとの情報が、ただいま入りました。繰り返しお伝えいたします。太平洋上に謎の大陸が出現しました』


「謎の大陸? 龍之介、これなんだよ?」俺は聞いた。

「知らねーよ。火山かなんかじゃねーのか?」


『新たな情報が入ってきました』


 ニュースキャスターの声が響き、俺はとっさに顔を上げる。


『大陸は、太平洋岸、沖合い四百キロ地点に出現しているとのことです』


 ここで一度画面が切り替わり、その謎の大陸を映したと思しき映像が流れた。

 画面には濃い霧に包まれたただただ白いどこかが映し出されている。正直この映像からでは何も分からない。


『こちらの映像は本日午後五時頃、Mコンサードにより飛ばされた、無人偵察機からのものです。ご覧の通り、大陸全体は濃い霧に覆われており、いまだ詳しいことは分かっておりません。今後の日本への影響が懸念されます』


 映像がスタジオに戻ると、ニュースキャスターの横にホログラムの世界地図が表示された。そしてぐーっと太平洋の部分がズームされると、そこに第七の大陸が薄っすらと浮かび上がる。それは想像以上に巨大で、日本の太平洋岸からハワイ諸島沖にまで及ぶ、図だけ見ればまさしく大陸といえるものであった。

 この時点でようやく、ここにいるたくさんの人たちも、この世界で何が起きているのかを理解し始めた。皆不安そうな顔で、その場に立ち尽くしている。

 ニュースキャスターは続けた。


『火山学の権威、宗田照彦さんからコメントが届いております。

「この短時間で何の前触れもなくこれほどまでの陸地ができるわけがない。なにかの間違いじゃないだろうか」

そしてもう一通、こちらは超常現象研究科の伊集院漸さんからのご意見です。

「太古の昔に消滅したムー大陸、アトランティス大陸、またはレムリア大陸が時空を越えて今この現代にタイムスリップしてきたんだ」

なおこの番組では随時、新たな情報が入り次第お伝えしてゆきます』


 ニュースはここで終わった。

 俺は頭の中を整理するためにも口に出して言った。


「えーっとつまり、突然太平洋上に霧に包まれた大陸が出現したってこと?」

「ニュースを見る限りでは、そういうことみたいだな」トコマは地面に腰を下ろす。

「随分と冷静だな」

「驚いてるさ。ドルーフィムーリドだからといって、何でもかんでも起こるというわけではないからな。ところで……」龍之介に視線を送る。「先ほどニュースキャスターが『Mコンサード』と言っていたが、一体何のことだ?」

「Mコンサードってのは太平洋沿岸にあるマザーコンピュータのことだ。先の大戦で超大変なことになっちまったから、軍事関係、ならびに全ての銃火器は、世界に三つあるマザーコンピュータの管理下になったってわけ。銃に関しては一丁一丁全部管理されてて、発砲する際にはいちいちマザーコンピュータの承認がいるんだぜ」

「え? でもそれって怖くないか? コンピュータの反乱とか起きないの? スカイネットみたいに」俺は聞いた。

「だから世界に三つあるんじゃねーか。ケルベロスシステムっつって、お互いを監視させてるんだよ」

「なるほどね」何度か小さく頷く。「で、世界に三つあるって言ったけど、日本の他にはどこの国にあるんだ?」


 返事がない。不審に思った俺は今一度問いかける。


「おい龍之介、聞いてるのか?」


 すると突然、龍之介がゲラゲラと笑い始めた。腹を抱え、その場にしゃがみ込み、肩を震わせるその様は、感情のなんたるかが決壊したのではないかと思われるほどに奇異なものであった。

 笑いをこらえようとしているのか、時折息が引っかかったように声がしゃくれる。まわりにいる人たちはそんな彼を、まるで犯罪者か何かを見るような冷たい目つきで一瞥した。

 しばらくすると龍之介は、声を荒らげ言った。


「ザマーみろ! クソが! これで世界は滅茶苦茶だぜ! 消えちまえ! 世界なんてクソ食らえだ!」

「おい、龍之介、ちょっと落ち着けよ。急にどうしたんだ?」

「やかましいはボケェー! 美少女連れてヘラヘラ旅行してる奴に何が分かるっつんだよ! クソが! クソクソクソ! ほんと全部何もかもがクソ!」


 これはしばらくは放っておいた方がいいな、と判断した俺は、トコマに話を振った。


「トコマ、この謎の大陸って、もしかしてエクジットに関係あったりするのか?」

「ああ、我々がここにきてからすぐの出来事だ。ほぼ間違いなくその謎の大陸とやらにエクジットはあるだろうな」

「と、いうことは、俺たちは少なくとも、先ほど太平洋上に出現した謎の大陸まで行かなければならない。そういうことか?」

「つまりそういうことだ。エクジットは見つけられたといっても過言ではない。後はこの世界のマスター、小田留を見つけ出すことだ」

「見つけ出すって言われてもさ、この広大な世界の中からどうやって捜すんだ? 現実の世界と同じだったら、小田留のいそうな場所大体想像できるし、すぐに見つけられるのかなーって考えてたけど、この世界じゃさっぱり見当がつかないぜ」

「そうだな」数瞬、トコマは目を閉じる。「行動の前に少し考えなければならないな。いろいろと話したいこともあるし、とりあえずはこの場から移動するか」


 俺は首肯すると、とりあえずは屋内へと向かい歩を進めた。しかしそれからすぐに、トコマがついてきていないことに気が付き、俺は慌てて振り返った。

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