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第四話 清楚とはエロスである

最近アイフォンからファーウェイのアンドロイドにしようか迷っています。

「なあ、これからどうするんだ?」


「そんなのあんたが決めなさいよ。ワタシはあくまであんたの奴隷なんだから」


「そうはっきり奴隷なんて言われてもなあー。実感ないよ」


大したことじゃないようにサキュレムは言うけど、普通にとんでもないことのように感じるのは、俺が元人間だからなのか?


「そういえば、おまえ会社大丈夫なのかよ。サキュバスの会社に勤めてるんだろ?」


「まあ、そうだけど」


「じゃーそこ行こうよ。ついでにどんなふうに会社運営してるのか、人と悪魔との違いも見たいし」


「え!?うちの会社行くの?……恥ずかしいよ」


サキュレムは小さなお尻をクヨクヨと動かし、尻尾をちまちまと撫でている。


「なんだ?身バレするのが嫌なのか?そんなちっこいなら絶対バレないと思うけどな」


「ちっこい言うなっ!」


なんか唐突に嫌がりだしたな。


まあ、あれだけナイスバディの女がこんなちんちくりんになったら、恥ずかしがるのも無理ないか。


「そうか、そんな行きたくないならやめとくよ」


サキュレムはトイレから帰ってきた後もなお、俺の背後に隠れるようにして歩いたままだった。


歩き辛いったらありゃしない。

早く離れて欲しいものだ。


これがエロエロボディーならいざ知らず、今はただのちんちくりんだからな。


「なあ、一体何から隠れてるんだ、サキュレム」


「シーッ!静かにして!」


「なんだよ、サキュレム。何かあるのか?」


「だから今は名前呼ばないで!」


サキュレムの小さな靴が俺の足を踏んづける。


名前を呼ばないでと言われると呼びたくなるじゃないか、サキュレムくん。


「……サキュレム」


「お、おまえっ」


「サキュレムサキュレムサキュレム……」


俺が念仏のようにサキュレムと呼び続けて、呼ぶたびに俺の足を踏みつけるサキュレム。


俺は気付いてしまった。


そう、視界の隅にグラマスなサキュバスのお姉さんがいることに。

サキュレムが隠れている理由……つまり彼女から逃げたかったのだろう。


サキュレムの反応からして間違いなく知り合いに違いない。


「サキュレムちゃんよー。相手が悪かったなー。俺はおまえの不幸が何よりの糧なんだよおおお」


「くそっ!かつてないほどの極悪な顔をするな!顔がないのにむかつくっ!」


「顔がないのに極悪な顔をするぅー?よくわからないなーサキュレムちゅあーん。ねーねー、今どんな顔してるのかなー」


「だまれっ!この顔無しブサイクお化け!」


「ブ、ブサイクって。顔がないのにブ、ブサイクって意味がわからないなー」


「ふんっ!教えてやろうか顔無しブサイク。魔界では顔無しが一番モテないんだよっ!」


「ぬあっ!?」


俺は思わず自分の顔に手を当てる。

相変わらず凹凸のない暗闇の顔。顔と表現したら良いのかもわからない、よくわからないものが俺の顔だった。


「で、でも、魔界では実力がものを言うんだろ?か、関係ないんじゃないのかなー」


「そんなわけあるかボケ。顔も関係あるわ」


「いや、でも?ほら、あそこにいるドロドロの奇怪な生命体とか?あれよりは俺の方がモテるじゃん?」


「え、あれはジャンルが違うでしょ。彼らには彼らのジャンルでイケメンがあるのよ。ワタシは人型での話をしていたんだけど。え、まさか、ドロドロ系のジャンルと勝負してたの?引くわー。ちなみに彼らの舞台で勝負しても彼ら好みはドロドロ系だから結局あんたは負けのままよ」


「ヒューッコヒュー、ヒューッコヒュー。そ、そんな馬鹿な話が……」


うそだ。


俺のハーレムの夢が本当に絶たれてしまったではないか。

もしかして人間の頃よりも酷いんじゃないか?

悪魔なんて嫌いだ。悪魔なんて嫌いだ。悪魔なんて嫌いだ!


「サキュレムはここにいます」


「お、おい。何を……」


「サキュレムはここにいまーす!ここでーす!!サキュバスのサキュレムはここにいまーすっ!!」


「おいっ!おまえっ!覚えておけよ!?」


「あれれー?なんでそんなに焦っているのかなー。どうせモテないのならとことん非モテを貫いてやるよ。んー?あれれー?どこに行こうと言うのだね、サキュレムくん」


俺は逃げようとするサキュレムの肩をがっしりと掴む。


「離せ!離せ!離せ!」


「あら?もしかしてと思ったけど……貴方やっぱりサキュレムよね?」


「げっ!」


先ほどのグラマスなサキュバスのお姉さんが俺たちの存在に気づいた。


コツコツとヒールの音を鳴らせて歩いてくる。


俺とサキュレムの目が交差した。

絶望の表情を浮かべるサキュレムに、俺は顔はないけど満遍の笑みをくれてやる。


ざまあみろ。

俺とおまえの戦いは常に最後は俺が勝つのだよ。


「さあ、サキュレム。いつまでそうやっているのだい?しっかりと返事をしてあげなくちゃダメだろう?おまえの知り合いなのだから」


固まったままのサキュレムを俺はゆっくりと焦らすように、まるでゼンマイ仕掛けの玩具のように振り返らせた。


「あら、やっぱりサキュレムじゃない。姿があまりにも違うから勘違いだと思ったのだけれど」


「イエ、ヒトチガイデスヨ」


「もうサキュレムったら。姿が違っても貴方を見間違うわけがないわ。貴方の魔力は沈丁花のようにとても良い香りがするんですもの」


朗らかに笑うサキュバスのお姉さん。


服装は至ってシンプルで、サキュレムのエロティックグラマスモードの頃の衣装とは違って、とてもシンプルなワンピースを着ていらした。


髪の毛は清純の象徴である黒。

何物にも染まらないブラックローズのような黒だ。


一見悪魔であることを忘れてしまうほどの神々しさはまさに天使。


そのシンプルの向こう側に確かなエロが存在していた。


「お姉さん、お名前を伺っても?」


「ええ、もちろん。サキュバスの集いが一人セラムと申します。貴方は?」


「ヴィランと申します。まだこの町に着いたばかりでございまして、落ち着いた時に是非ともセラムさんをお茶にお誘いしたいものです」


「まあ、嬉しゅう存じますわ!」


決まった。


ジェームズボント主演の映画を観ていてよかった。華麗な誘い文句がすらすらと出てくる。


それにしてもビシビシ伝わってくる母性の包容力。身も心も蕩けてしまいそうなほど心地がいい。


「それにしても不思議ですわ。サキュレムとヴィランさんの魔力が溶け合ってるように感じてしまいますの」


セラムさんは片手を頬に当てて困ったような表情をする。


その言葉にサキュレムがびくっと反応をする。


もしかしたらサキュレムとの主従関係が関係しているのかもしれない。


「ああ、そのことでしたか。それはですね--」


「それと、少しばかり人間の臭いがしますわ」


先ほどまで朗らかだったセラムさんの雰囲気が一転して変わった。


「え?」


「貴方……サキュレムに何したの?」


セラムさんのオーラが明らかに変わった。


周囲の空間をねじ曲げてしまうような圧倒的なプレッシャーと、深淵に引き摺り込むような虚無の黒い眼。


足元の石畳が砕け散り、地面に引き倒すような重力がかかる。


周囲の通行人は巻き込まれないように一気に離れて、俺たちの動向を見守っていた。


な、なんだ。展開が急すぎてついていけない。


野次馬たちがガヤガヤと騒ぎ出す。

やっちまえだのなんだの。


「貴方の魂から人間の臭いがするのよ」


一層圧力が強まる。


こ、これが悪魔か。なんて力なんだ。


なす術もなく片膝をついてしまう。

服従のポーズを取ったような形だ。


「ま、待って!セラム!」


「あら、サキュレム。黙っていたものだからその男の人形になってしまったのかと思いましたわ」


「こ、これには色々事情があるのよ!ヴィランは何も悪くないわ!」


サキュレム……。

おまえ、実はいいやつだったのか?


俺はおまえと行動していて初めて感動させられたよ。


「プライドの高い貴方が奴隷に落ちてまで庇うような男なのかしら」


「そ、それは違うけど……」


「おい!そうだって言えよ!そこはうなづくポイントだろ!?」


「正直な子は好きよ、サキュレム。そんな子にはご褒美をあげるわ」


セラムはサキュレムに近づき、そのしなやかな手をサキュレムの顔にあてがう。

そしてセラムは視線をサキュレムの目線の高さに合わせ、熱烈なキスをした。


互いの唾液を入れ替えるように舌を出し入れしあい、唇を離せばそこら唾液の糸がたらりと地面を濡らす。


「ん、んんっ」


「正直になればなるほどもっと凄いご褒美をあげる」


「は、はい」


俺はサキュレムを止めるに止められなかった。

なぜかって、サキュレムが正直になればなるほど、百合プレイがそれほど熱く燃え上がるんだ。


理性よりも本能が勝ってしまうのは男の性だろう。


「人間界に行ったらあいつにねはめられたの。それでね、サキュレムはねあいつの奴隷になっちゃったの」


「貴方とあの男の関係の経緯は分かったわ。それであの男はどんな男なの?」


「とっても悪い男なの。サキュレムのことをね、いっつもエッチな目で見てくるの」


サキュレムが見た目相応な甘えっぷりを爆発させている。

なんだあいつの表情は。とても幼女とは思えない発情した顔だぞ。


「しかもね、サキュレムの苺パンツは苺の匂いがするのかなーって言ってパンツをとろうとしてきたの」


「いや、お、おい!」


サキュレムが発した衝撃的な発言にギャラリーがざわめきだす。


「きもっ」「小さい女の子をそんな目で見るなんてありえない」「うわっ、こっちみたぞ!」「これだから顔無しは」


正直俺も自分が発した言葉に衝撃を受けてるよ。


「あら、それはとてもとても変態さんなのね、ヴィランさん」


「い、いや、あれは冗談で言ったのであって」


「あら、面白いことおっしゃるのね。人間の犯罪者は冗談って言葉がお好きなのかしら?」


「ぐっ、た、確かに」


「でもね、ヴィランさん。これだけは教えてあげる。欲望は魔界では歓迎すべき感情よ。ここでは全ての感情が解放されて然るべき場所なのよ」


セラムさんはサキュレムの尻尾を掴み、くりくりと弄んでいる。


その度にサキュレムは甘い声を響かせてた。


「強いものは弱いものを統べる。それが絶対の世界。度が過ぎた欲望の解放はこの世界の掟に駆逐されてしまうけれど、咎めを受けなければそれは問題ない行為なのよ」


ビクビクと痙攣を起こし、じっとりとした汗をかくサキュレム。


セラムさんは茫然自失のサキュレムを置き、俺の方へ歩みよる。


そして顔を俺の耳元に寄せ、媚薬のようにクラクラする匂いが鼻を擽らせた。


「貴方、私たちの会社に一度来てみなさい。きっと貴重な経験ができるわ」


「え?」


「わたくしは貴方を買っているの。貴方は将来必ずわたくしの利益となるわ」


「あ、ありがとうございます」


「会社に来たらたくさん働いてもらうわ。貴方にとってもプラスでしよ?」


「え、ええ、そうですが……」


先程までプレッシャーを与えていた者の言うことであるからどうしても信用できない。

裏があるのではないかと勘ぐってしまう。


「でも、いったい何を……」


魔界で生きていくために一度魔界の会社を見てみたいとは思っていたけれど、こうも上手い話は信用できない。


それに悪魔に誘われるとか危険なのではないだろうか。


利を得るためにリスクはつきものとは言うが。


どうする……一度断るか?

考えさせて欲しいと言って保留にする手もあるが。


「……もちろん、エッチな仕事もあるわ」


「すぐに支度します」


即決した。

次回、桃源郷はここにある



ストーリーの展開早すぎたらするのでしょうか?

自分で描いているのでそこらへんわからないので、よかったら教えて欲しいです。

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