表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
7章 勇者たちの、記憶にも記録にも残りそうな体育祭 (後編)
67/367

第65話 前衛系な彼女、戦場を蹂躙す!



 ――落馬した白城(しらき)を救うべく、陣形を崩して突出した、おキヌさんの大将騎。


 そして好機とばかり、その撃破を狙って一斉に進軍を開始する白組……。




 俺を踏み台に、思い切り跳躍した鈴守(すずもり)は――。


 狙い通りに、そんな列を成す白組の、最後尾の騎馬へと飛び移った!




「え、なに――――って、うええっ!?」


「まず一騎っ!!」



 まさかの事態に混乱する(そりゃそうだろう)白組の騎手から難なくハチマキを奪い取り――鈴守はさらに前方、次の騎へと飛び移る。



「えええ!?

 う、ううウソぉぉっ!! そんなのアリぃぃっ!?」


「ゴメンな、二騎めっ!!」



 一瞬で二騎めのハチマキを奪取、さらに三騎めへと跳躍する鈴守。



 ――それに合わせて会場も、すさまじいまでの盛り上がりを見せる。



 今度こそハッキリと、この騒がしい戦場にあってもその歓声の中に「おねーさまー!!」という黄色い声が混じってるのが分かった。



 まあ、そりゃあなぁ……。

 こんなアクションスターみたいな動き見せられりゃ、そりゃボルテージ上がるよなあ……。



「すっげえな鈴守! なんだアレ、アイツ忍者の末裔とかか!?」


「男装はショタ王子より、牛若丸の方が似合いそうだね!

 まさに八艘(はっそう)跳びだよ!」



 (まもる)のそれは言い得て妙だが、俺たち紅組だから、むしろ平家なんだよなー……。


 それに八艘跳びって、確か舟から舟を跳んで逃げ回る様子だったような……。



 ……いやまあ、そんなことはどうでもいい。


 ともかく、俺たちの役目は、鈴守が落ちないよう……そしていつでも回収出来るよう、ひたすら追いかけ続けることだ。



「ムダ口叩く余裕があるなら、しっかり付いて来いよ!

 俺たち騎馬が崩れても失格なんだからな!」



 後ろの二人にハッパをかけ、足並みを合わせて、俺たちは鈴守を追って走る。


 騎手はいないんだから、ハチマキの心配をする必要は無い。




 そして……。


 当然というか……白組の大将の目は、戦場を舞い跳ぶ鈴守に釘付けになっているようだった。




「――な、なんなのよ、あの子……!?

 し、白組、みんな距離を開いてッ!! 近いとあの子に飛び移られるよッ!!」



 鈴守が電光石火で三騎めを潰したところで、白組大将は全軍に指示を飛ばすが……。


 それですぐにどうにか出来るわけもなく、すでに鈴守は四騎めに飛び移っていた。



 しかし……さすがに向こうも警戒し始めているので、一瞬でハチマキをかっさらう、というわけにはいかない。


 いかに鈴守が、腕の差し合いでは圧倒的な強さを誇るといっても、相手ががむしゃらになれば、狭くて不安定な足場のこと、多少なりと時間がかかる。



 それでも、『多少』で済んでしまうあたりが、またさすがなんだけど……。



 そのわずかな攻防の時間はしかし、白組各騎が大きく間を開けるには充分だった。



 鈴守の跳躍力をもってしても、次の騎馬には届かず……。


 このままだと、失格になった騎馬が崩されるのに合わせ、鈴守も地に沈むことになる――。



 ……だけど!


 そう、それは――『このままだと』だ!



「――鈴守ぃっ!」



 猛ダッシュで何とか鈴守に追い付き、前方に回り込んだ俺は、大きく叫ぶ。



 なぜなら……このために、俺たちがいるんだからな!



「ありがとうっ!!」



 すぐさま、俺たちの騎馬へと飛び移った鈴守は、礼の一言を置いて、俺を足場にさらに次の五騎めへと飛び移っていた。



「ふぃ〜……なっかなかキツいな、こりゃあ……!」


「ま、まだまだこれからだよ? イタダキ……!」



 イタダキと衛が、少し荒くなった呼吸を整えている。



 ――そうだな、今回はなんとか上手くいったが……。


 向こうは依然、騎馬の間を大きく取ってるし……イタダキたちの疲労を考えても、常に全力で追い続けるのは厳しいか……?


 さあ、どうする……?



 ……などと、俺が思考を巡らせていると――。



 白城を助けに行って以来、そのまま逃げに回っていたおキヌさんが……いきなり、その動きを止めた。


 そして――



「ぬっふっふ〜……間を離せばいい――だあ?

 そんな腰抜け(チキン)戦術を選んじまっちゃあ、勝ちの目は逃げていくばかりってもんよ!!


 ――紅組全軍っ、今こそ守りを固めて転進ッ!!


 そーら、白組の皆さん……お望みの大将首はここですよーーーだ!!」




 味方に指示を飛ばすや、なんと大将騎たる自らも転進――追いかけてくる白組と相対するように、逆に自分からその距離を詰めたのだ!



 追っていた大将騎が前に出てくるとなれば、当然、白組の先頭はそれに合わせて足を止める。

 いきおい、続く騎馬との距離は詰まる。


 しかも、それでも距離を保とうとする騎馬がいても――その隙間には、守りを固めて突っ込んできた紅組の騎馬が、強引に割り込む形となった。




 結果、離れるばかりと思われた戦場の騎馬が――密集していく……!




「おおおっ!? やるじゃねーか、おキヌ!」


「でも、ある意味これって捨て身だよ。おキヌさんがどれだけ凌げるか……!」



 衛の心配ももっともだ。


 だが……おキヌさんも、ここが勝負どころと手を打ったんだ。信じるしかない。



 おキヌさんを、そして――鈴守を!



「――これで五騎! 次っ!」



 おキヌさんの妙手により、また各騎の間が詰まり――加えて、紅組の騎馬という足場も得た鈴守は、飛び石を渡るように軽やかに、六騎めに襲いかかる。



 そこへさらに、おキヌさんは、必死に自らの身を守りながら……鈴守の活躍によって、紅組が数的優位に立ち始めたことを利用し、余裕が生まれた騎馬へと素早く指令を下していた。



「2年の二騎! 3年左翼の一騎!

 ――今だ! 向こうの大将騎を追い立ててやれッ!!」


「「「 了解ボスっ!! 」」」



「――なっ!?

 ……ううっ……! 一旦、距離を取るよ!」



 さすがに三騎を同時に相手にするのは分が悪いと踏んだのだろう、おキヌさんの指示を聞いた白組の大将騎は即座に逃げを打つ。


 一方、他の残った白組の騎馬は、その様子を見て、どうするべきか混乱しているようだ。



 ――それはそうだろう。


 まず基本として、自分のハチマキが奪われないよう、近くにいる紅組の騎馬を警戒しなければならないのに、加えて、鈴守の規格外の奇襲にも備えなければならず……。


 その上、せっかく追い詰めた大将騎(おキヌさん)を攻めているところだし、かと言って、自軍の大将騎の危機も放っておけない……。


 やるべきことが多くて慌ててしまい、その優先順位をとっさにつけられないのだ。



 そこで、差し当たって目に付く近いところから――と、考えなしに、おキヌさんの方に意識を取られているがゆえに、彼らは足が止まってしまっていた。



 そして、それは――まさに鈴守にとっては好機だ。



 疾風怒濤の勢いで、六騎、七騎と立て続けにハチマキを奪い取り……。


 その撃破に合わせて、さらに手空きになった紅組の騎馬が、おキヌさんの号令一下、白組の大将騎の追撃に順次加わっていく。



 その様子に、一気に危機感を募らせたのだろう……。


 今さらながら、大将騎の援護に向かおうと不用意に転進した白組の一騎が――そのスキを狙っていたらしいおキヌさんの、背後からの奇襲によって撃破された。



「――今だ、行けっ! おスズちゃん!!」


「うんっ!」



 そのおキヌさんたちの騎馬を足場に、鈴守は、今まさに追い詰められている大将騎を除く、白組最後の一騎――。



 白城を落馬させたという、3年の騎馬へと……襲いかかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] こうして先に出された以上。 私の方じゃ騎馬戦でこのアクロバティック戦法は使えぬな。 こうなったら……キャストオフ戦法を出そうか(反則や [一言] 味方まで足場に……こりゃあ無限の可能…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ