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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
24章 そこに願いがあるのなら――4度目も勇者になるしかない
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第357話 進化せよ聖鈴、響け聖音! その名はアウレオラ!



 ――それ、本当は『杖』じゃないんじゃ……?



 ウチの〈織舌(シゼツ)〉を指しての、白城(しらき)さんのその言葉に――ウチは肩越しに、すぐさま聞き返してた。



「白城さん……なんか分かるんっ!?」



 この、鈴守(すずもり)家に伝わる聖具の〈織舌〉が、実は見たまんまの『打撃武器』やない――って言うんは、ウチも知ってることやけど……。

 でも、その『真の姿』となると、ウチどころかおばあちゃんも知らんくて。


 鈴守宗家がそれを秘密にしてるんは、あらかじめ知ってたからって、それだけでどうにかなるもんやなく――逆に、〈巫女〉としてのチカラがあれば自然と扱えるはず、いうことみたいで。


 やから結局、ウチの力不足が一番の問題なんやろうって……これまでその正体を知ることのないまま、ウチは今もこうして、同じやり方で戦ってて。



 やけど――さっき、カネヒラが言うてた。

 おばあちゃんは、今回のシルキーベルスーツのアップデートで、〈織舌〉との親和性を高めた、って。



 ウチには、それがどういうことかは分からへんし、〈織舌〉を握ってても、今までとの違いとかは特に感じられへん――。


 やからこそ、ウチと(ちご)て、正真正銘の『魔法少女』な白城さんやったら、何かウチでは気付かれへんようなことに気付いたんちゃうかな、って思って。


 ウチが、〈織舌〉を本当の意味で使いこなす――そのための手掛かりが、白城さんの言葉の中にあればって、そう願いながら。


 ウチは白城さんに、簡単に〈織舌〉の事情を説明した。



「……なるほど、『真の姿』……ですか。道理で」



「こんなん、誰かに答え教えてもろて、どうにかなるもんやないって分かってる――。

 でも、せめて切っ掛けがあれば、って……!」



 白城さんとは、お互い背中合わせに、周囲の〈呪疫(ジュエキ)〉を牽制しながら……話を続ける。



「そうですね……まあハッキリ言っちゃえば、わたしだってその〈織舌〉が本当は何なのかを見抜いたってわけじゃないです。

 ただ……違和感というか、使い方が間違ってる――そんなイメージがあって」


「使い方が……間違ってる?」



「ん〜……なんて言うのかなあ……。

 そうですね、強いて例を挙げるなら……『鞘に収まったままの刀』かな。


 センパイはそれを、『そういうもの』だとそのまま捉えて、殴って使ってる感じなんですよね。

 もちろん、刀を鞘に収めたまま振るっても、一応武器にはなりますけど……。


 でも、それが刀であるのなら――『本質』は、鞘の中……ですよね?」



「……鞘に収まったままの、刀……」



 ウチは、手の中の〈織舌〉を見下ろして――白城さんの(たと)えを反芻する。

 もちろんそれは、これが実は仕込み杖みたいなもんで、刃が隠れてる――て直接的な意味やない。


 でも……その喩えは、なんやろう、ウチの中でしっくりきた。

 なんか、大事なことを掴めそうな――そんな気がした。



「ありがとう、白城さん……!

 教えてもろたこと、意識して――やってみる!」


「――はい! わたしで出来ることなら、お手伝いしますから……!」



 そう答えた白城さんは、早速とばかりに、〈邪疫(ジャエキ)〉の方へと踏み出して――。

 その間を塞ぐような位置におった〈呪疫〉たちを薙ぎ払い……もう一回、ウチに道を拓いてくれた。


 そのうえで、改めてウチを振り返り――槍を、穂先とは逆の石突きの方を向けて差し出してくる。



「――センパイっ!」



 それで、意図を察したウチは、白城さんに向かってダッシュ。

 差し出された槍の柄に飛び乗って――。



「お願いっ!」


「行きますっ!」



 白城さんが、槍に飛び乗ったウチを――投げ飛ばすみたいに、上空へと跳ね上げるのに合わせて。

 ウチも槍の柄を蹴って――ロケットみたいに、一気に高く宙へ飛び出す!


 狙いは――ズバリ、〈邪疫〉の核の一つ眼、魔石のカケラの集合体……!


 何を試すにしても、どうせやったら一番効果がありそうな場所を狙おう――て、ウチらの考えが一致した、その結果で……!

 そんで、もう一つ、どうせやったら――!



「――我、打ち鳴らすは聖音(せいおん)、打ち祓うは呪怨(じゅおん)――!」



 ウチは、そんな聖句とともに、全身の霊力をスーツを通して展開――周囲にそれを、〈鐘〉として幾つも形成していく――!


 そう、どうせやったら――。

 いっそ、最強の技をぶつけて、どこまで通用するかも試したろうって。


 込めるチカラが大きい方が、〈織舌〉の『鞘の中』を知覚しやすいかもやし……!



「祈りは祈りと手を取り、声となり――!」



 周囲に形成した霊力の〈鐘〉……そのうちの1つを、〈邪疫〉の頭部との間に設置したウチは――。



「打てよ〈織舌〉! 響けよ〈聖紋(せいもん)〉っ!!」



 その宙に浮く霊力の〈鐘〉を、〈織舌〉で叩いて打ち鳴らし――。


 〈鐘〉が共鳴、鳴り響くその聖音で〈邪疫〉の動きを封じると同時に……〈鐘〉を打った反動でもう一段高く飛び上がって。



「いっっ……けぇーーっ! 〈千織の聖鐘(レゾナント・カリヨン)〉ッ!!!」



 杖としての〈織舌〉やなく、その内側、『鞘の中』を意識しようと集中しながら――霊力を込めて。


 〈邪疫〉の一つ目に、大上段から思いっ切り叩き付ける!



 ――――はずが……。



 ウチの霊力による、幾つもの〈鐘〉が共鳴しての聖音――。

 それだけやと、完全には相手の動きを封じきられへんかったみたいで……!



「――――っ!?」



 呪縛をムリヤリ引き剥がした〈邪疫〉の右拳が、ウチ目がけて飛んできて――。

 振り下ろす途中やった〈織舌〉を間に挟んで防御、何とか直撃は避けるけど……。



「あぐっ――!」



 そのまま、ウチは――振り抜かれた拳で、激しく地面に叩き付けられた。



「センパイッ!?」


「ひひ、姫ェェ〜〜ッ!!!」


「ただちにサポートに回りまくりっ!」



 ――あまりの勢いに、地面でバウンドするウチ。

 その無防備なスキを狙って、さらに〈邪疫〉が伸ばした影で追い打ちしようとするんを――。


 白城さんが、キャリコくんに乗ったカネヒラが、それに直芝(なおしば)さんて人の銃弾が……思い思いに牽制して、ウチを助けてくれた。



「……大丈夫ですかっ!?」


「う、うん……直撃はせえへんかった、から……なんとか。

 ――でも、ありがとう、みんな……。

 ウチ、助けられて……ばっかり、やね……」



 大丈夫って示すのに、軽口っぽく言いながら……ウチは歯を食いしばって、痛みと痺れが残る身体をムリヤリに起こす。


 ……やっぱり……今のままやと、ウチの攻撃が通用するとは言い難い。

 それに――今の一連の動きでも、ウチは特に何かを掴めたわけやなかった。


 〈織舌〉が、『鞘に収まったままの刀』やとしても……それで聖なる〈鐘〉を鳴らす以上、そのイメージからは逃れられへんで……。


 そう、だって、鐘や鈴を鳴らすこと……。

 それが、『(ぜつ)』って道具の『本質』やから――――って。



「…………本、質…………」



 ……そのとき。

 白城さんが教えてくれた、その一言が――。


 ウチの胸の奥に、今度こそ……すとんと落ちた。



 そうやん――本質……!



 あらゆる魔を祓うという〈聖鈴(せいりん)〉の『舌』から創り出された――それがこの聖具〈織舌〉。


 でも、それやったら……なんで、聖具になってるのが〈聖鈴〉の方やないのか?

 なんで、『舌』の方だけなんか……?


 よくよく考えたら、ヘンな話。

 けど、その答えは――単純なことで。


 ウチが実際に、〈千織の聖鐘〉でやってたことにも通じてて――。



 そう、つまりそれは……鳴らす鈴や鐘が『無い』んやなくて。

 『必要ない』――って言うこと……!


 さっきも、霊力で形成した、実体の無い鐘を鳴らしたみたいに――。



 〈織舌〉そのものが……。

 あらゆる空間に聖音を響かせる、〈聖鈴〉でもある、いうことで――!


 形あるものを打ち鳴らさずとも、自らが聖音を織り成し、歌う――まさに、『舌』……!



 それこそが――この〈織舌〉の、『本質』なんや……!



「そう、なんやね……。

 分かった――〈織舌〉っ!」



 ウチは、改めて〈織舌〉を構えると、これまで以上に――精神と霊力を集中。

 そして、それを――ようやくホンマの意味で理解した『本質』へと繋いでいく。


 そうしたら……そのチカラは。

 これまでよりも、ずっとキレイに、スムーズに……心地良く、流れ込んで。


 でも、やからこそウチの霊力は、これまでにない早さで……吸い上げられるみたいに消耗していって……!



「――う、く……っ!」



 はっきり言うて……ツラい。キツい。

 今までにない霊力の消費に、意識ごと持っていかれそうになる。



 ……こんなんで……ウチに、この『本質』を使いこなせるん?


 〈鈴守の巫女〉としては、及第点ギリギリの、劣等生の……ウチが?



 ――ううん……違う。そうやない……!



 おばあちゃんが、スーツのアップデートで〈織舌〉との親和性を高めたんは、きっと『千紗(ちさ)なら』って、ウチを信じてくれたからで――。


 それに、今この場で……白城さんたちもカネヒラも、ウチを信じるからこそ、こうして助けて――任せてくれてる。


 そして――何よりも。



 ウチには……裕真(ゆうま)くんが。一番大好きな人が。


 すべてを信じてくれたって、自負がある――ッ!



 やったら……出来へんとか、ムリとか――ありえへんやんッ!!!



「う――――ああああああっっ!!!」



 ウチは、魂ごと込める勢いでありったけの霊力を絞り出し、声を限りの雄叫びを上げて――〈織舌〉を高々と頭上に掲げる。


 それは、まばゆく輝き、光となって――――!



「えっ? センパイ、これって……!」


「おおおお、ひひ、姫ェェ〜ッ!

 つつ、ついにィ〜……ッ!」


「ほっほう、これはこれは……!

 ワガハイ、アツくなりまくり……ッ!」



 ……今なら――ああ、これが『そう』なんやな、って……分かる。


 ウチの手の中で、ついに、ウチにとっての『本当の姿』になった〈織舌〉は……いわば、燦然と輝く〈光のリボン〉やった。



 そして、それを……ウチは。

 くるっと首の後ろを大きく回すような形で……そっと身に纏う。


 そうすれば――。



 初めから、それこそが本来あるべき形みたいに、スーツと光のリボンは違和感無く同調して――。


 〈織舌〉に注ぎ込んだウチの霊力が、何倍にも増幅されて返ってきたみたいに――身体の隅々まで、清浄なチカラになって駆け巡る……!



「うわ……すごい! この光のリボン、天女の羽衣みたいで……!」


「おおお、姫ェェ〜〜〜ッ!

 麗しい、麗しいですぞォォ〜〜〜ッ!

 あまりの麗しさに、拙者、天に召されそうでござるゥ〜……ッ!」



 白城さんとカネヒラが、生まれ変わった気分でおるウチを、そんな風に評してくれる中……。


 その向こうに、不意を突こうとしてる〈呪疫〉を見つけたウチは――。



「――てぃっ!」



 自分でも信じられへんぐらいの速さで、一気に接近――高速ローリングソバットを繰り出す。


 ……これまでも、霊力を集中させての〈聖紋〉を身体に刻んで、肉弾攻撃を〈千織の聖鐘〉のシメに使ったりもしたけど――。

 今のウチは、それをさらに強力にしたものを、常時、発動してるような感じで。


 そんなウチのソバットを受けた〈呪疫〉は……。

 そのインパクトと一緒に鳴り響く、人の耳にはほとんど届かへん澄んだ聖音に祓われて――瞬く間に、消滅した。



 ――うん、いける……! 分かる……!



 これやったら、打撃でも、絞め技でも、投げ技でも――すべてにおいて。

 ウチは聖音を、浄化のチカラとして直接、相手に響かせられる……!


 だって、〈織舌〉を宿したウチ自身が――。

 今、あらゆる魔を祓う〈聖鈴〉になってるねんから……!



 手応えを感じて、拳を握り締める――。

 そんなウチを、側に駆け寄ってきたキャリコくんが見上げて。



「……我がお嬢が、先に天女の羽衣と形容しまくった、その頭の後ろをぐるりと円を描いて巡る光のリボン……。

 それは同時に、聖者が背負う『後光』や『光輪』のようでもある――」



 そう表現しながら……ニヤッて。

 なんか、すごい威厳のある感じに、笑った。



「うむ、ならばここに――由緒ある魔法王女の導き手たるこの我輩が、相応しき名を与えまくり、であるな。

 それはまさしく、この間テレビで観た『聖者の光輪(アウレオラ)』が如し――ゆえに!


 生まれ変わったキミは……アウレオラ!

 そう――〈シルキーベル・アウレオラ〉である!」






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― 新着の感想 ―
[一言] 戦いながら喋るシーンっていいですよね! しかも女の子ふたりとなると、より余裕な感じがします。 『戦闘とお喋り? 当然お喋りが大事でしょ』 みたいな(笑) さてそして、鈴守さんがついに開眼……
[一言] 邪王炎殺黒龍波キターーー!!!!(大歓喜) 武器としてではなく、身に纏うことによって最強となる……! 滅茶苦茶ロマンある……!!
[一言] シルキーベル・アウレオラ、纏ったリボンが後光や光輪と例えられてるくらいなので神々しいんでしょうが、個人的には「武器など飾りよ」と言わんばかりに、得物がバトルスーツに変化した肉弾特化の武闘派、…
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