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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
22章 〈世壊呪〉をめぐり、めぐる運命たちのその先は
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第320話 烈風鳥人、因縁の相手へのリベンジなるか?



 ……凛太郎(りんたろう)としおしおねーちゃんの助けに入る、そのちょっと前――。



 オレは、第2グラウンドの端っこで、『宝石のカケラ』みたいなものが光ってるのを見つけて。


 今朝、〈(あま)()〉で会った、バイクのにーちゃんが言ってたやつかなって思って近付いたら……テンに、《触るな!》って、めっちゃマジな調子で注意されて。


 そしたら、それに合わせるみたいなタイミングで……周りが急に暗くなって、なんかヤバい気配がし始めて――。



 落ちている『宝石のカケラ』の下から、ブクブクブクって吹き上がった『闇』が……。

 そのカケラを取り込むみたいにして、人間の形になったんだ……!


 そう……人間の形をした〈呪疫(ジュエキ)〉に――!



「コイツ……!

 なんか、前にガッコで出た赤いヤツみたいな……!」



 でも、その〈呪疫〉が普通のヤツと違うのは、人間の形ってことだけじゃなかった。

 それよりも目立つのは、全身に、小さな石みたいなのをちりばめてることで……!



「あれって、まさか……。

 さっきのみたいな、『宝石のカケラ』……!?」


《……いや、アレは『宝石』なんぞではない……!

 間違いない、この気配……! やはりか!》



 オレの肩に移動したテンが、何か分かったみたいな、すげー緊張した声でつぶやくのに合わせて――。



「ク、クカ、クカ――カ……!

 オ、覚エッ、覚エテ……イ、イ、イル、イル――ゾ……!」



 聞いてるだけで、すっげー気分が悪くなる、気持ち悪ィ『声』で……!

 人型の〈呪疫〉が、しゃべりやがった……!


 ――ってか……!

 ビミョーに雰囲気変わってるけど――このムカつく『声』としゃべり方って……!



《……うむ、そうじゃ……! こやつは――》


「あのときの――っ! 生きてやがったのかよ!」



 そうだ、コイツは……!

 1ヶ月ぐらい前、オレが初めてテンのチカラを借りて、変身して戦った……!



「〈邪心剣(じゃしんけん)グライファン〉――っ!」


「コノ、ケ、気配……! カ、風ェ……!

 オオ、覚エテ……我! 我ハ、オ、覚エテェ……ッ!」



 そうか、アレは『宝石』じゃなくって……多分、アイツの核だった〈魔石〉のカケラなんだ……!

 それをちりばめた〈呪疫〉が、黒板を爪でキーキーするみたいなイヤさがある声で応える――けど。


 ……なんかコイツ、様子がおかしくねーか……?



《……これは……。

 もしかすると、こやつ……自分が何者なのかすら、分かっておらぬのではないか……?》


「へ? なにそれ、『きおくそーしつ』とか……?」


《――と、言うよりも……。

 見ての通り、ヤツは一度、木っ端微塵に砕かれとるじゃろ?

 本来ならそのまま消え去るはずが……》



 テンは、インコのまま首をふるふるって振った。



《あまりにも強い『執念』がゆえに、再び形を成そうと、砕かれた己のカケラ同士が寄り集まり……。

 そうして、かろうじて元の意識『っぽい』ものは再現されたものの、やはり所詮はぎの紛い物――。

 完全に元通りとなるはずもなく……結果、その執念や渇望のみが一人歩きするような形で、己たる意志を無くしてしまっている――と、そんなところじゃろうな》


「……えーと……つまり?」


《………………。

 いっぺん死んで、ゾンビ化しとるよーなモンってことじゃよ!

 じゃから様子がおかしーの! わーったか!?》



 おぉー、なるほどなー……!

 確かにコイツ、そんな雰囲気だもんな……!



「なんだよ〜、なら初めからそう言やいーじゃん!」


《……こっの……! 言うに事欠いて、(ワシ)が悪いみたいにィ……!

 これじゃからガキんちょっつーのは〜……ッ!》



 イライラした様子で羽をバタバタさせるテン。


 そんなにイライラしたら、羽が抜けてハゲるんじゃね?……とか思ったけど、言ったらヤベー気がしたからやめといた。


 つか、だいたい、そんな場合でもねーし……!



「……にしても。

 だからコイツ、こんな、初めっから混乱してるみてーな感じなのか……」


《……うむ……。

 今、こうして姿を現したのも……何らかの考えを持ってのことではなく、記憶に残る儂らの気配に反応しただけ――といったところじゃろうよ》



「……邪魔……邪魔、邪魔ヲ――覚エテ……!

 ワワ我、ちから、ちからヲ……! ハ、破壊、ヲ……ッ!

 我ノ――我ノ、モ、求ムルヲ……! 邪魔ヲォォ……」



 ブキミな声を撒き散らしながら……グライファン『だった』ヤツは。

 腕を、もともとのコイツ――大きな剣みたいな形に変えて、オレに近付いてくる……!



《……己というものは喪おうとも、そのチカラと破壊への渇望だけは忘れぬか……!

 まさに妄執――そのザマ、むしろ不憫よな……!


 ――よし、ゆくぞアーサー……今度こそ、ヤツに引導を渡してやれッ!》



「おうっ! いっくぜー……!」



 ――前にコイツと戦ったときは、結局、リアニキに助けてもらって何とかなった感じだけど……!


 オレだって、あのときより強くなったんだ!

 相手が弱ってる感じなのが、ちょびっと引っかかるけど……今こそ、リベンジだぜ!


 オレは、縦笛の袋にしまってたナイフ――風の宝剣〈ゼネア〉を掲げる。



「――来い、ガルティエンッ!」


《うむ……! 生命いのち運ぶ風のチカラを、我が主に――!》



 それに合わせての、テンの契約の言葉とともに……!

 オレの身体を、激しく吹き荒れる――でもあたたかい風が包み込んで――!



烈風鳥人(れっぷうちょうじん)……ティエンオーッ!!」



 テンが変化した装備をまとってティエンオーに変身したオレは、そのままバッチリ決めポーズを――



「――って、うぉわっ!?」



 ……取ろうとした、その瞬間!


 グライファンがスゲー勢いでこっちに突っ込んで、大剣の腕を振り下ろしてきたから――あわてて飛び退いてかわす!



「ちょ、ンだよコイツ……!

 決めポーズ取る前に攻撃とかルール違反じゃねーか!……ムカつく!」


《いや、むしろそれが普通じゃろ……アホか》



 でも――やっぱりだぜ。

 前はコイツ、ヤベーぐらい強いって思ったけど……今は違う。


 この間戦った、エクサリオの分身に比べりゃ……!

 それに何より、ホンモノの勇者の師匠に比べりゃ……!


 ……こんなヤツ、ゼンゼン大したことねーっての――!



「凛太郎としおしおねーちゃんも心配だからな……!

 一気に行くぜっ!」



 ゼネアにチカラを集中、光の刃を延ばしつつフトコロに飛び込んで――。



「オオオ! ジャ、邪魔、邪魔ヲォォ!」


「おせーっての!」



 オレを追い払おうと、横に薙ぎ払ってくる大剣を――走り高跳びのバーを飛び越える要領でかわしざま、さらに蹴り飛ばしてやって、体勢を崩して……!



烈風閃光(れっぷうせんこう)ぉ……(たい)(ふう)(けーん)ッ!!!」



 そのスキに一気に――『じゅーおーむじん』に光の刃で叩っ斬る、必殺のラッシュを食らわせる!



「ギィッ!? ギィィィッッ!!」



 ただの〈呪疫〉なら、これだけで終わるんだろーけど……。

 さすがに、魔石のカケラでグライファンのチカラも宿ってるからか、まだトドメにならなくて。



「ギィィ……ッ! オオオオォォッ!!!」



 大ダメージ受けてイヤがりながらも……やられたらやりかえすって感じに、オレのラッシュの終わりに合わせて、ムチャクチャに大剣を振り回してきた。


 それは、一撃をゼネアで受けてみたら、思ったよりずっと強烈で……!



《アーサー! 力押しはするな!》


「わーってるって!」



 威力はあるし、それなりに速いけど――でもなんつーか、ミエミエだ。

 だけど、まだ子供のオレは、やっぱり力勝負には弱いから……。



「そらよ――っと!」



 だから、特別大きく振りかぶろうとした一撃に合わせてジャンプ――斬り込んでくる瞬間の大剣を蹴り飛ばし、その勢いでバク宙しつつ、一気に大きく距離を開ける。


 そんで――!


 光の刃を消したゼネアに、代わりに風のチカラを流し込みながら振りかぶり――!



「食ぅらえぇぇーーッ!

 必〜殺ぅ……〈陣風穿(じんぷうせん)〉ッッ!!!」



 思いッッッ切り、投げつける!

 一点集中で、ドリルみたいに風で渦を巻きながらカッ飛んだゼネアは――。



「ギ――ギィィィィッッ!!??」



 ガードしようと前に出て来た大剣を、その向こうの本体を――!

 デッカい風穴開けて……問答無用に、ブチ抜いた!


 ……っしゃあ! 決まったぜ!



「ギィ、ギィィ……ッ!

 我、ハ――我ハ……! ちち、ちからちから、ヲ……!

 ハカ、破壊ヲ、ちからヲォォ……! ワ、我ハァァ――」



 グライファンの〈呪疫〉の身体は、形を保ってられなくなったみてーで――泥のカタマリが地面に落ちるみたいに、ドチャ、ってなって……。


 そのまま、なんかホラーな呪いの声みたいなのをブツブツつぶやきながら……地面にしみこむみたいに、消えていった。


 それから、ゼネアを手元に引き戻しつつ、ちょっとの間様子を見るけど……。

 アイツのイヤな気配は……もう、感じられなくなっていた。



「っし……やーったぜ! リベンジたっせー!」


《………………》



 バッチリやっつけたし、さあ勝利のポーズ……と、思ったら。


 オレと違って、テンは――。

 変身で合体してっから、顔は見えねーけど……なんか、納得いかねー、みたいな感じだった。



「……どーしたんだよ、テン?」


《今の一撃……トドメになったと思うか?》


「え? けどよー……アイツの気配、消えたぜ?」


《……逃げただけ、という可能性もあるじゃろ?》



 テンに言われて、あらためてアイツが消えたところを見る。


 ……そうしたって、何が分かるわけでもねーけど……。



「でも、カケラだけだったんだし、だいぶ弱くなってたし……考えすぎじゃね?」


《……むう……だと、いいがのう……》



 ――そう、アイツのイヤな気配はもう、キレイさっぱり消えたんだ。


 でも、周りの――アイツに引き寄せられたんだと思うけど、ヘンな空気の感じと、それのもとになってそうな〈呪疫〉の気配はまだ残ってるわけで……。



 今はまず、そっちの方が大事だろ!

 凛太郎としおしおねーちゃんが、巻き込まれてっかも知れねーんだからさ!



「とにかく、凛太郎とねーちゃんだ! このまま行くぜ、テン!」


《うむ――。そうじゃな……!》






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― 新着の感想 ―
[一言] それはいつ生まれたのか誰も知らない。 暗い音の無い世界で、欠片が一つとなり生き物が生まれた。 彼は人間ではない。また、動物でもない。 だが、その醜い体の中には妄執が渦巻いているのだ。 その生…
[一言] アーサーくん大活躍! よきですー! アーサーくんは、強さへの憧れもあるんだけど、それに振り回されずに己の分をきちんと把握して闘いに活かしているところが…… いつみても、本当に戦闘センスあるな…
[一言] 頑張れ僕らのティエンオー!
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