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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
22章 〈世壊呪〉をめぐり、めぐる運命たちのその先は
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第311話 その不思議ちゃんは、大変にデキるオトコである



 ――ドクトルばーさんのこと、聞き込みする……って、手分けしてた凛太郎(りんたろう)が連れてきたのは……でも、ネコで。


 しかもそれが『情報てーきょーしゃ』だって言われて、ぼーぜんとしてる、オレと軍曹とテンに……。


 凛太郎は、ゼンゼン気にせずいつも通りの調子で、説明してくれた。



「ニャンコ氏、夜目利くし、ネットワーク強い。

 だから、高いって思った。何か見てる、知ってる……可能性」



「え、てゆーかさ……凛太郎、ネコの言葉分かんのっ!?」



 思わずこーふんして聞いちゃうオレに……凛太郎は、首を横に振る。



「言葉――ちょっと、違う。

 イメージ……伝えて、伝わる。そんな感じ。

 ――昨日、手掛かり捜しに、チカラ使うって言ったから……頑張ってみた」



 凛太郎の答えに合わせて、ネコたちもニャーニャー鳴く。


 ……うわ、これマジで、『いしそつー』出来てるっぽい……!



「うおお……! さぁっすが凛太郎!

 やっぱスゲー、かぁっけぇ〜……っ!」


「ん」



 オレのかんどーの声に、凛太郎は無表情にビシッとVサインを出す。

 抱いてる子ネコといっしょに。


 ……って、え、いっしょに!?


 いや、子ネコのはVサインじゃねーかもだけど……なんだこれスゲー!



「……うむぅ、わたしもマジで驚きました。

 マリーンの〈巫覡(シャーマン)〉のチカラ、精神エネルギー的なものを捉えやすくなるんだろう、とは思ってましたけど……こんな風にも使えるとは」



 さっきは呆れてた軍曹も、驚くやら感心するやら、って感じだ。



 ……へへっ……!

 オレがなんかしたわけじゃねーけどさ――。


 でも、こーやって、凛太郎がスゲーって言われてるの見ると、なんかオレまで、『どーだ!』って気分良くなっちまうよな!



「じゃあマリーン、まさか……その気になれば、人の心を読んだりも出来るんですか?

 『念話』みたいな、意図的に外に向けて発信しているものじゃなく……心の中で思ってるだけのようなことまで……?」



 軍曹が尋ねると、凛太郎は――めずらしく、ちょっと困ったような顔をした。


 あ、うん、パッと見じゃほとんどいつも通りだけど……。



「出来る……と思う。1回、やってみたこと、ある。

 でも、色んな声とかイメージいっぱい、頭イタい、視界グルグル気持ち悪いで、ばたんきゅー。

 それから、おじいさまが『絶対にやるな』って」


「む……なるほど。

 多分マリーンは、チカラを強めると、同時にその効果範囲も大きくなるんでしょうね」


「どーゆーこったよ、軍曹?」



「他人の心に触れるのなんて、それがたとえ1人であっても大変なことのはず。

 ……なのに、マリーンがそれをしようとすると、チカラはただ強くなるだけじゃなく、大きく広がりもして、他の何人もの心にまで及んでしまうんですよ、きっと。


 つまり、1人分でも大変な人間の心の声やらイメージやらを――状況にもよるでしょうが、何人分もいっぱいに、一気に、押し付けられるんです。

 そんなもん、めちゃくちゃキツいに決まってます。そりゃばたんきゅーするってもんです。


 ……まあ、キチンと訓練すれば、対象を限定して負担を抑えるとか、そういう風にも出来るかも知れませんけど……。

 それでも、危険なことに変わりはないでしょうし……そもそも人の心に触れること自体、あまり良いことでもないでしょう。


 ――なので、じっちゃまの言う通り、ちゃんと調節してチカラを抑えられるのなら……そのまま封印しちゃうのが一番ですね」



「ん。おじいさまも、軍曹と同じこと、言ってた」



 めっちゃマジメな軍曹の説明と、凛太郎の言葉に……オレも、自然にうなずいてた。



 だよなー……。

 凛太郎のチカラはスゲーけど、それで凛太郎自身がどーにかなっちまうとか、ぜってーダメだもんな。


 それに、軍曹も言ってるみたいに、心ン中見るっての、やっぱあんまし良くねーと思うし。



「――あ! つーかさ、凛太郎!

 ネコと話すのは……大丈夫なのかよ? その、頭イテーとか……」


「ん。ちょっと疲れるぐらい。ぷろぶれむ、のー」



 凛太郎は、自分でやる代わりに、抱えてる子ネコの前足を持ってバンザイさせた。


 子ネコは……イヤがってないけど、喜んでる感じでもない。されるがまんま。



 ……つーか、なんかこの子ネコ……雰囲気が凛太郎に似てるなあ。なんとなく。


 けどまあ、何にしても、確かにネコと話すのは大丈夫みてーで……良かったぜー。



「……それで、マリーン……。

 ついつい話が逸れちゃいましたけど――そのネコたちは、どんな情報を?」



 で、改めて、肝心なことに軍曹が話を戻すと……。


 凛太郎も、見上げてくるネコたちと、確認するみたいに目を合わせて――それから、ゆっくり口を開いた。



「ん。……ドクトルばーさんの車、若い男、乗ってた。

 その男、小さな、三角の宝石っぽいの、いきなり手に出現。

 それ光ったら、ドクトルばーさん、ばたんきゅー……みたい」



 凛太郎が話すのに合わせて、ネコも「そうそう」って言うみたいにニャーニャー鳴く。



 お、おお〜……!

 スゲ〜……ホントに見てたんだな、ネコ……!



「……ふーむ……。

 三角の宝石、っていうのは、恐らく魔導具でしょうね……。

 それに、いきなり出現した、となると……その男、勇者様の異次元アイテム袋のようなものを持ってる、ってことでしょうか……」



 腕組みしつつ、アゴに拳をあてた軍曹が、すげーマジメな顔をしながらつぶやく。



「――それで、その男、それからどうしたか分かりますか?」


「車出て、近く通ったおじさんに……なにかしてた、みたい。

 イメージからしたら……多分、魔法。

 それで、そのおじさん、ドクトルばーさん見つけて、救急車呼んだ」



「こっちの世界の人間て、魔法を認識してない分、抵抗力も弱いですからね……。

 足が付かないように、ちょっとした幻惑系の魔法でも使って、おっちゃんが自発的に通報するよう仕向けた――ってところですか。


 ……にしても、眠らせるだけで済ませたことと言い、ほったらかしにせずにさっさと通報させていることと言い――。

 そもそも、ドクトルばーさんを害するつもりがなかった、ってことでしょうか……」



 うーん、って首傾げつつ唸って軍曹は、犯人の男について、続きを聞く。



「で、そのあと男は――」


「……おじさん、救急車呼ぶ間に、どっか行った」


「どっか……。追いかけたりとかは?」



 続けての軍曹の質問に……凛太郎は、首を横に振った。



「ニャンコ氏、危うきに近寄らず」



 ……んん〜……っ、そこまでかぁ〜……!

 このまま一気に、どこの誰かまで分かるかと思ったんだけどな〜……!



 軍曹もやっぱり、「そうですか……」って残念そうな顔をしてたけど……それも少しのことで。

 すぐに、気を取り直したみたいにうなずいてた。



「一気に真相へ、とはいきませんでしたけど……。

 でもこれは、思った以上の収穫、ってやつですよ……!


 ――ってことで……。


 改めて礼を言うぞ、ニャンコ氏たち!

 諸君らの活躍は、まさに叙勲ものだ! 無いけど勲章!」



 軍曹が、ヒザを突いて1匹ずつアゴの下をくすぐってやると……ネコたちは、気持ちいいついでに、得意気に胸を張ってるみたいな感じになってた。



「まー、勲章はそもそもいらねーだろーけど……せっかくだし、なんかあげるモン、ねーかなあ。

 ――ん〜……テンのおやつ用のカボチャの種とかじゃダメかな」



 オレがリュックをゴソゴソすると……テンがスゲー勢いで止めてきた。



《だだだ、ダメに決まっとろうっ!

 ネコが食っては腹を壊すぞ多分! いやきっと!

 ……ゆえにホレ、後でちゃんとしたネコ用のおやつとか買ってやれ!

 それが礼儀っちゅーもんじゃって! な、な!?》



 …………。

 これってゼッテー、カボチャの種あげたくねーだけだよな……。


 ケチだなあ、霊獣。



《……おい、アーサー……。

 お主、今すっごい失礼なこと考えんかったか?》



「べっつにー?

 ……ま、いいや。じゃ、ネコには後で、コンビニでなんか買ってきてやっか?」



 オレがそう提案すると、軍曹もマリーンも、オッケーのサインを出してくれた。

 ……テンも、なんかホッとした感じだった。


 で、軍曹は改めて「それにしても……」って、凛太郎の方を向いて――グッと親指を立てる。



「マリーン……さすがだったぞ!

 想像をはるかに超える、素晴らしい大活躍だ!」



「ん。ニャンコ氏の方々には、引き続き、ニャンコネットで他に何か知ってるニャンコ氏がいないか、捜してもらうであります軍曹。シャー」



 無表情にそう言って、凛太郎は――。

 自分じゃなく、抱えた子ネコの方に敬礼させた。



「ん~、やっぱマジにスゲーよなあ、凛太郎は……!」



 おかげで、また色んなことが分かったんだし! まさにデキるオトコ!


 あ、でも――そう言えば。



 こうなると犯人は、『若い男』で決まりなんだし……。


 軍曹が聞いた、オレたちと同じようにドクトルばーさんのこと調べてるって、『ホケンのおねーさん』ってのは……結局、かんけーねーのかな。


 確か、キチッとスーツ着た、メガネの――だっけ。



 多分、そう――。

 今、すぐそこの家から出て来た、ねーちゃんみたいな……。



「――って、このねーちゃんのことじゃねっ!?」



 思わずオレが出した大声に――。

 軍曹に凛太郎、それに、そのスーツ姿のねーちゃんまでもが驚いて……いっせいにオレを見た。



「な――っ、な、なにかな、ボク? おねーさんに何か用?」



 驚いたときにちょっとズレたメガネを直しながら、苦笑しながら、オレに聞いてくるねーちゃん。



 う……いざ、そんな風に言われると……なんて聞きゃいーんだ?


 なんでドクトルばーさんのこと調べてるんだ――とか?

 でもなあ、それ、軍曹から聞いた感じだと、「仕事だから」で終わりそーだし……。



 だいたい、つい大声出しちまったけど……このねーちゃん、かんけーねー可能性の方が高いんだよなあ……。



 ……そんな風に、どーしようかと迷ってたら――。


 軍曹に、いきなり頭を抑えつけられた。



「あ、どうもどうも、すいませんですー。

 このジャリ坊、クソ生意気にもキレーなおねーさんには見境ないヤツでして……。

 あとでよーくしつけておきますんで、ここはご勘弁をば――」


「いでで、ちょ、イテーって軍曹……!」



 で、ニッコニコ笑いながら、強引に頭を下げさせようとする――。


 ……と、そのとき。



「………………」



 そんなオレたちの横を、スッと通り抜けて――。

 凛太郎が、ねーちゃんの真ん前まで行って……じーっと、顔を見上げた。



「? ど、どーしたのかなー……?

 おねーさんの顔に、何か付いてる……?」


「……ん。間違いない」



 大きく一度、うなずいたと思うと……凛太郎は。


 ねーちゃんに向かって――いきなり、ペコリと丁寧に頭を下げた。




「――しおしおねーさん、こんにちは」






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― 新着の感想 ―
[一言] 今話は凛太郎大活躍ですねー。
[一言] 凛太郎くんと子猫! もー脳内映像的にクラクラしておりますよ、おばちゃんは! かわいすぎる……!
[一言] 人の頭を覗くって、潜在意識とかも含めると、情報の奔流がとんでもなさそうですよね~。 リーディング能力者が頭抱えて「うわ~!」的なアレですね。 というか、そんなチート能力使われたら物語がやばい…
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