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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
21章 苦難の先に道を見出す者と、苦難こそが道と信じる者と
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第303話 見習い勇者たちの夜におかーちゃん



 ――今日は師匠たちと修行出来なかったし、なんか、千紗(ちさ)ねーちゃんが師匠んとこに来るって話で、いろいろ忙しそうだったから……。


 朝、(まもる)兄ちゃんに剣の稽古の相手してもらった後は、結局、ずっと凛太郎(りんたろう)といっしょに、自主修行したり、遊んだりして過ごした。



 ……で、夕方からはオレんちでゲームしてたんだけど……気付いたら、もう晩メシ前になってて。



 うちのかーちゃんが、


「もう一緒に晩ゴハン食べて――っていうか、いっそ泊まっていきなよ?

 どうせ夏休みだし」


 って言い出したから……凛太郎はうちに泊まってくことになった。



 つっても、こんな風に凛太郎がうちに泊まるのってちょくちょくあるから、別に珍しいことでもないんだけど。



 ……で、そんなわけだから。


 夜も遅い時間になったけど、凛太郎はまだオレの部屋にいて、オレたちは格ゲーで対戦したりしてた――



「よっ、ほっ、はっ、――っと! ハイ、終わり〜。

 ふっふっふ……まだまだだねえ、少年たちよ」



 ……何でか、うちのかーちゃんまでいっしょになって。



「だーかーら! かーちゃんはいつまで交じってンだって!」


「えー……いーじゃん。

 母親が、息子と、息子の友達とゲームしちゃいけないって法律はないもんね〜。

 ……つーか、おかーちゃんを追い出したかったら、実力行使すれば?」


「ぬぐぐぅ〜……っ!」



 コントローラーを握ったまま、ふふん、って感じに笑うかーちゃんに、オレはヘンな声が出るぐらい、くやしがらずにはいられない……!


 なんでかって言えば……!


 うちのかーちゃんって、なんか特定のゲームだけ、ヤベーぐらい上手かったり強かったりするんだけど――今、オレと凛太郎がやってたゲームが、まさにそれに当てはまるからだ!



 その基準は、とーちゃんによれば、『美少年か美少女がいるかどうか』らしーんだけど……。



 とにかく、このレトロ格ゲー、〈キングオ()ブフリー()ターズ()98〉が、まさにそのかーちゃんにとってドストライクなゲームみてーで……。


 もう、メチャクチャ強えんだよ……!



 ……今も、凛太郎のヤクザキャラが、かーちゃんの炎を使うイケメンに、『え、何それ、そんなの繋がンの!?』って感じのえげつねー連続技(コンボ)食らって、テッテー的に燃やされまくって――あっさりKOされてた。


 いや、凛太郎だってケッコー強えんだけど……まるで相手になってねー……!



「ふっふっふ……焦げたろ?」


「おばさま、激強。めっちゃかっけー」


「へっへー……でしょでしょ? コレ、昔死ぬほどやったもんね〜。

 いやーしかし、リアル美少年の凜くんに褒められると気分良いわ〜……」



 凛太郎にパチパチと拍手されて、調子に乗りまくりなかーちゃんは……。


 かと思うとオレの方を見て、わざとらしく小さくタメ息をつく。



武尊(たける)ぅ……アンタも、凜くん見習って、もっと美少年っぽくなりなさいよー。

 せっかくアンタ、顔立ちとかわりとカワイイんだからさー」


「カワイイとか、ぜってーヤダっつってンだろ!

 オトコなら、カッケーの一択だっつーの!」



「……やれやれ……アンタはやっぱ、どうしたってそっちかー。

 まあ、ヒーロー志願のわんぱく坊主ってのもそれはそれで悪くないけどねー。


 ――現に、なんか最近のアンタってば、ナマイキにもリア充の匂いがするし?」



 オレを見る目が、なんかジトーって感じになったかーちゃんが……ふふふ、と笑う。



「なんのことだよっ?」


「ンもう、とぼけるなとぼけるな!

 最近アンタの周りって、カワイイ女の子ばっかじゃないのよ〜。

 ……亜里奈(ありな)ちゃんに見晴(みはる)ちゃんに、アガシーちゃんまで!

 いやー、おかーちゃん、ここ最近もうドっキドキでさー!」


「ドキドキぃ〜……?

 なにそれ、ふせーみゃく、ってやつ?」



「おバカ。

 そんなんなるのは、アンタのテストの点とか成績表見たときだけだっつーの。


 ――あ、で、どうなの凜くん。

 武尊のヤツ、どの子に傾いてそう?


 宇宙最強のかわいすぎるしっかり者妹キャラの亜里奈ちゃんに〜……!

 超絶癒やし系のほんわか聖女でお金持ちお嬢サマの見晴ちゃんに〜……!

 そして、ちょっと変わった言動も、妖精みたいな外見も、リアルに2次元キャラとしか思えない愛らしすぎるアガシーちゃん……!


 おかーちゃんとしては、どの子も最高に個性的で良い子だし、ひたすらカワイイからアリなんだけど!」



 とーとつに、凛太郎の方を振り向いて、なんか目ェキラキラさせながら語るかーちゃんに……。


 でも凛太郎もまるで驚いたりせず、「ん」とうなずいて――。



「――ではおばさま、お耳を拝借」


「おっ、よしきた、オーケイ……っ!

 ……ん? テンちゃん、アンタも聞きたいのかなー? よーし、おいでおいで」



 なんか、棚の上から飛んできたテンもいっしょになって……。


 ときどき、チラチラとオレの方見ながら、コソコソと話してる。



 ……つーか、何の話だよ……。

 アリーナーに、見晴に、軍曹? かたむく?


 ワケわかんねーし!


 だいたい、リア充って、師匠みたいにカノジョがいるヤツのことだろ?



 ――ならオレ、ンなの、ゼンっゼンかんけーねーし……!



「ん〜……ほう、そっかそっか〜、なるほどねえ〜……!

 あ〜、なんか分かるわ〜……うんうん」



 凛太郎の話を聞き終えたかーちゃんは、なんか、すっげーうなずきまくってる。

 その頭の上で、テンも同じよーなことをしてた。



「ンだよ、なんのコソコソ話だよ……気分わりーなー」


「はっはっは、ゴメンゴメン。

 そうさねー……武尊、アンタがおかーちゃん秘蔵のラブコメマンガ読破するなら、教えたげてもいいよ?」


「ンなのムリに決まってンだろ! どんだけあるんだよアレ!

 ……つーか、あーゆーのってつまんねーし!」



 かーちゃん、マンガとかスゲーいっぱい持ってるんだけど、特にラブコメとかそーゆーのが多いんだよなあ……。


 ヒーローものとかバトルものとかは、カッケーしおもしれーしで、オレも何回も読んでるんだけど……恋愛モノとかあーゆーの、だいたい、つまんねーんだもんなー。



「フッ……まあアンタは、だからこそ――なのかも知れないわね〜。

 いや〜、はっはっは。この先、1年2年後が楽しみだわー」


「ンだよそれ……ワケわかんねーし。

 ――つーか、マジでいつまでいンだよ、かーちゃん!」



「……え? だから言ったでしょ?

 おかーちゃん追い出したかったら実力に訴えろ、ってさ」



 なんかキョトンとした顔で、そんなこと言いながら……コントローラー握って、早速対戦キャラを選ぶかーちゃん。


 それに対して、オレも――



「くっそ〜……!

 もうマジだ! ゼッテー、ボッコボコにしてやっからな!」



 凛太郎からコントローラーを受け取って、一番得意な、帽子の金髪イケメンにーちゃんを選んだ……!




 ――で、結局……。


 オレも凛太郎も、何回やってもかーちゃんには手も足も出なくて……。



 1時間ぐらい、オレたちの挑戦をはねのけ続けたかーちゃんは、



「ふっふっふ……甘いな子供たちよ!

 一児の母となろうとも、我がオタク魂とキャラ愛に衰えなどないのだ……!


 ――つーわけで。


 子供は子供らしく、まずは学校の宿題ちゃんとやって〜……それからだ!

 それから、もっと鍛えて、出直してくるがいい……!」



 ……って、満足げに言い残して、部屋を出て行った。



「く、くっそー……!

 興味ねーゲームだったら見向きもしねーくせにぃ〜……!」



 負けまくりの悔しさにコントローラーを投げ出して、ベッドの上に大の字になる。



 一方凛太郎はと言えば、クッションの上でなんかしきりにうなずいてた。


 コイツ、なんだかんだでうちのかーちゃんと仲良いからなあ……。

 なんか学んだ、とかそんな感じなのかなあ……。



 ……まあ、なんにしたって……。



「いずれゼッテーリベンジすっぞ、凛太郎!」


「ん」



 このまま、負けたばっかでいられねーからな……!


 それも、かーちゃんに、なんて……!



「っしゃ、じゃあ早速修行すっかー!」


「……おばさま、宿題してから、言ってた」


「えぇ〜……? いーって、そんなの。

 宿題なんて、まっだまだ日にちあるんだしさー。

 最悪、出すときに持ってくんの忘れたってことにすりゃ、さらに次の授業まで時間が出来るし!」



 オレがそう言い張っても、凛太郎はなんか「ダメ」って言いそうな雰囲気だ。


 でもなー、せっかく凛太郎も泊まりに来てるのに、宿題とかやってらんねーしなー……。



 ――っと、そうだ!


 こーゆーときは、話題を変えちまおう!



 今のオレたちには、宿題なんかより、もっと大事なことがあるんだしな……!



「……そー言やさ、凛太郎。

 ドクトルばーさん、やっぱり魔法で眠らされてたって話、聞いたろ?」


「ん」



 昼間、凛太郎といっしょのとき、師匠から受けた連絡で、ドクトルばーさんが病気なんかじゃなかったことを教えてもらったんだけど……。


 じゃあオレたちにも何か出来ることあるかな――って思っても、師匠からの指示は特になかった。


 一応、「手伝ってもらうことが出来たら、そのときは頼む」って言ってくれたけど……。

 やっぱり師匠、こーゆーのに、オレたちをなるべく関わらせないようにしてるって思うんだよな。



 そりゃあさ、オレたちなんて未熟だし……。

 足手まといにだってなりたくねーけど……。



 でも、ドクトルばーさんの入院とか、千紗ねーちゃんのことで師匠たちもいそがしーだろうし……オレたちでも、なんか役に立つことがあるはずなんだ。



 そう、たとえば……。

 ドクトルばーさんに魔法をかけた犯人の手掛かりを探す、とか!



 で、そのことを、凛太郎に話してみると……。


 やっぱり凛太郎も、何かしたいって気持ちはあるみたいで――「ん」って力強くうなずいてくれた。



「それなら……。

 あんまり聞かないようにしてた『声』、聞くようにしてみる。ちょっと」


「……『声』、って……。

 ――あー! あれか、テンが言ってた、凛太郎の才能!

 えーっと、なんだっけ……確か……チャーハン?」



 オレが首を傾げると……テンが素早く頭に乗っかって、おでこを突っついてきた。


 あだだ! いってーなあ、もう……!



《メシ炒めてどーする、このド阿呆! 〈巫覡(シャーマン)〉じゃっつの!


 ――しかし……。

 うむ、あれは確かに情報を収集するには便利な能力かも知れんが……。


 『声なき声』を聞くというのは、なにかと負担が大きいはず。

 あまりムリはするでないぞ、凛太郎?》



「ん。ほどほどで」


「おう、そーだな。ここで凛太郎がムリして倒れたりしたら、それこそ『トンカツ弁当』ってヤツだもんな!」


《……本末転倒、な。

 アーサー、お主はやはりまず宿題やっておれ……》



 テンが、すっげえタメ息混じりにそんなこと言うけど……。



 やっぱ、ンなことしてる場合じゃねーもんな!


 つーわけで……!



「っし、ンじゃ……!

 オレたちで、なんか手掛かりつかんでみせるぜ!」


「おー」



 オレが拳を突き上げるのに合わせて……。

 凛太郎も、いつもの無表情のまま――でも、やる気を見せて。


 いっしょに、拳を上げてくれた。



 ――よーし、やってやるぜ……!




「でも、捜査、明日から。

 ゆえに今日、宿題。明日の分も」



「え――ええぇぇぇ〜〜……?」






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― 新着の感想 ―
[一言] 残念。ヤマザキ使わないのか(笑)。後はキングとか。 98はビリーとか楽しかった記憶があります(笑)。
[一言] 思惑が交錯して、事態が動いて……。 先がさっぱりわかりませんね! 読んでいて楽しいです あと武尊くん、先生が大変だから、宿題はちゃんと期限までに出してあげて……!
[良い点] まぁ本人に自覚はなくても、性格的はともかく環境的には、下手すると裕真より主人公属性が高くて、リア充のにおいがプンプンですわ(笑) ましてや、世の母ちゃんはそういった気配に敏感かつ興味津々で…
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