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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
17章 夏のバカンスに、垣間見る黄金の裡と小さな聖霊の勇者 (後編)
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第235話 聖霊大尉と見習い勇者は、羽と翼でややカブる



「……其の名、境界! 防人(さきもり)(ほこり)(かき)(ほまれ)祝呪(しゅくじゅ)(くるわ)

 ――〈界園(かいえん)結碑(むすひ)〉!」



 空き地の〈呪疫(ジュエキ)〉の群れに向かって突撃する間に、軍曹――じゃなかった、大尉(キャプテン)、クローアスターが魔法を使う声が聞こえた。



 それと同時に、なんか……まわりの空気が変わった感じがする――。



 ……そうだ、今のって多分、体育祭のときにも使ってた――結界の魔法だ!


 なんか、ビミョーに聞いたことあるよーな気がしたんだよな……!



「よし――結界は張った! 暴れていいぞ、ティエンオー!

 ただし、油断だけはするな!」


「へへ……りょーかい! いっくぜ〜っ!」



 近付くオレに気付いたみたいで、〈呪疫〉の1体がこっちを向く。

 そんで、動物が威嚇するみたいに……のっぺりした影の身体を大きく伸ばした。


 ここから、さらに腕も伸ばして先制攻撃しようってのかも知れねーけど……!



「なーめんなっての……!

 ――食らえ……必殺、〈陣風穿(じんぷうせん)〉ッ!!」



 〈呪疫〉の攻撃範囲に入る前にオレは、宝剣ゼネアを走りながら振りかぶって――『チカラ』を込めて投げつける!



 ただし――ゼネアは、いつもみたいに分裂しない。


 真っ直ぐ一直線に――空気を渦を巻いて引き込みながら、スゲー速さでカッ飛ぶ!



 そして、〈呪疫〉に突き刺さる……どころじゃなくて。



 巻き込んできたちっちゃい台風ばりの風の力で、〈呪疫〉の胴体が半分以上吹っ飛んだみたいな、デッカい風穴をブチ空けた!



「っしゃー! カンペキぃっ!」



 ゼネアを引き戻して掴みながら、オレはグッと拳を握る。



 追いかけたり、分裂したりする代わりに、一撃の威力を強くしたゼネア投げ……!

 新必殺技、〈陣風穿〉! うまくいったぜ!



 へへへ、オレだって、こーゆーときのために、ちゃーんと格ゲーとかマンガとかで、色んなワザを研究してきたんだからな……!


 あ、もちろんワザの名前も!



《……つーか、技の名前はゲームからのモロパクりじゃろが……》


「ンだよ〜、オレがつけたらセンス無いとか言うからだろ~?」



 オレが、テンの文句に文句を返してると――。



「――っ! キサマ、油断はするなと言ったろーが!」



 いきなり、オレの頭の上に飛び上がった大尉が、二挺拳銃――ゲームで見た、確かソーコムピストルとかいう軍隊用の銃――を、超連射していた。


 狙いは……オレがデッカい風穴を空けて倒したはずの〈呪疫〉だ。



 ――って……!?

 あの〈呪疫〉、こんなちょっとの間にカラダが再生してる……!?



「げ、マジかよ……っ!?」



 オレが驚いてる間に……。


 そいつは、大尉の――多分、魔法のチカラが込められたBB弾をめいっぱいに撃ち込まれて、今度こそ完全に、チリみたいになって消えていた。



「ウソだろ……。

 あの、〈赤いヤツ〉ならともかく、このフツーの黒い〈呪疫〉なら、今ので完全にやっつけてたハズなのに……!」



「ふむ、そうですね――わたしとしても驚きです」



 ふわっとオレの隣に降り立った大尉が、そんなことを言った。



「……どういうことだよ?」



「理由までは分かりませんが、強くなってたってことですね……〈呪疫〉が。

 しかも気配からして、今の1体だけが特別ってわけでもなく――この場にいるヤツらがみんな」



 大尉は、オレたちの方にジリジリ近付いてくる〈呪疫〉たちをぐるっと見回す。



「……ティエンオー、あなたにお手伝いを頼んだのは正解でしたね。

 この調子だと、さすがにわたし1人だけでは手間取ったかも知れません。

 ――まあ、もっとも……」



 ソーコムピストルの銃口が、オレの鳥の仮面を小突いた。



「見た目がこれだからって、中身まで『鳥頭』だと、足手まといになるだけかもですけどねー」



「…………。

 な、なあテン、トリアタマ――って、なに? 鳥の頭でいいの?」




《……ニワトリが3歩歩くと物事を忘れるように、記憶力のショボいおバカっつーことじゃよ。

 アーサーお主、今しがたそこの聖霊に、油断するなと言われたばかりだったじゃろが。


 ――うむ、っつーか、じゃなあ……。


 リアル鳥系のワシに、『鳥頭』とか説明させンじゃないわい!

 地味〜な嫌がらせか! それぐらい知っとけバカモン!》




「お、おう……なんか、ゴメン。

 軍曹――じゃなかった、大尉も……ゴメン。油断した」



 素直にアタマを下げると……大尉は、小さくタメ息をついた。



「……分かったならいいです。

 ある意味、大事故になる前に身を以て気付けた――と考えれば、決して悪いことでもないですし」


「おう……思い知った」



 ……きっと、師匠がオレに戦いに出るなって言ってたのも、こーゆートコが分かってたからなんだよな……。



 くっそ〜……やっぱまだまだミジュクだなあ、オレ……!


 これからはマジで気を付けねーと……!



「……そーだよな、戦いなら、大尉の方がゼッタイ経験値稼いでンだし……。

 よし大尉、なんか気付いたらビシビシ指示飛ばしてくれよな!

 オレ、それに従って戦うようにするからさ!」



「ふむ……いい心がけです。

 では――改めて実戦教導と行くぞ、遅れるなよへっぽこ新兵(ルーキー)!」


「イエシュ、マムっ!」





 ――それから、オレは大尉といっしょに、前よりずっと強くなってる〈呪疫〉たちと戦った。



 基本的には、大尉は細かくあーしろこーしろって言うわけじゃないから、オレはオレ自身の戦い方をするんだけど……。



 ときどき、オレの注意が足りてないときとか、効率良く敵をやっつけられるときとかに、大尉は指示を出してくれて。


 それが的確だし、オレのアタマでも、言われればすぐに「そうか」って理解出来るようなことだから……。


 迷ったり困ったりするどころか、すんなりスムーズに、テンポ良く身体が動いて……。



 そんで、いつの間にかだんだん、大尉が言おうとしてることとか、やろうとしてることとかが、なんとなくでも分かるような気がしてきて。



 だから――。



 大尉が〈呪疫〉2体の間に飛び込んで、1体ずつ両手の銃を押し付けて連射、一気に消滅させたときは――。

 きっとこのまますぐ、再装填(リロード)すると思ったから。



 指示が来る前に、大尉から『二番目』に近い〈呪疫〉にゼネアを投げつけて、ダメージを与えつつ牽制して……。


 大尉が、体育祭のときにもやってたみたいに、ポニーテールの中から振り出した弾倉(マガジン)を……ジャンプしつつ、くるっと回りながら空中で再装填するのを邪魔しないように。


 頭を下げて姿勢を低くダッシュ、一番近い〈呪疫〉へ――!



烈風(れっぷう)閃光(せんこう)疾風(しっぷう)けーーんっ!」



 引き戻したゼネアを掴むのと同時に、光の刃を延ばして――突進突きを食らわせる!


 前の〈呪疫〉なら、これで倒せたけど……今日のヤツらはムリだ。



 でも……これでいいんだ!



「ナイスアシストだ、アー……じゃなかった、ティエンオー!」



 弾丸の再装填を終えた大尉が、そのまま空中から、オレが串刺しにした〈呪疫〉を連射で消滅させて――。


 さらに続けて、ゼネアを投げつけて牽制した方の〈呪疫〉にも銃弾を撃ち込む。



 もちろん、それも倒しきるには火力不足だけど――大尉の狙ったとおり、ってやつだ。


 だってその銃撃は、〈呪疫〉におっきなスキを作るためで……。



「烈風閃光ぉ……(たい)(ふう)・けーーーんッ!!!」



 そこへ、オレが一気にトドメを刺しにいくからだ!



 ――無防備な〈呪疫〉の懐に飛び込んだオレは、光の刃の必殺ラッシュで……ちりっぢりに斬り裂いて消滅させてやった。




「……ホンっト、キサマと言うヤツは……。

 おバカなくせして、このテのセンスだけは良いんですから……まったく」


「へへっ、サンキュ!」


「いや、全面的にホメたわけじゃないんですけど。

 ……しかし、それにしても……」



 オレと大尉は、お互い、スキをなくすために背中合わせになろうとするけど……。


 うん――。


 ぶっちゃけ、どっちも背中に羽が生えてっから、その体勢はぶつかって邪魔なんだよなー。



「うーん……このままだとなんとも映えませんねえ。

 ……そのムダに豪華な翼、消したり出来ないですか?」



「いっ? いやいや、オレ、『鳥人』なのに翼なくなったらヘンじゃね!?

 つーか、それならそっちのがさー、騎士っぽい鎧だしさー。

 ……羽、なくてもいいんじゃねーの?」



「いやいや、黒い鎧と仮面だけとか、地味過ぎる上にバランス悪いでしょーが!

 他のクローなんちゃら2名との差別化が必要ですし!」



「「 ………ぬぬぬ………! 」」



 オレたちは、振り返って顔を見合わせたあと……。


 同時に、あらためて、まだ残っている〈呪疫〉の方に向き直った。



「……とりあえず、その辺の話はコイツらブッ倒してからにしましょうか」


「だよなー……」





 ――それで……。


 コンビネーションのコツも掴んできたし、〈呪疫〉が強くなってるって言っても、手こずるぐらいでもなかったから……。


 オレたちはその後も、(背中合わせは出来ないけど)お互いのスキとか死角をカバーしつつ、連係攻撃で〈呪疫〉を1体ずつ確実に倒していって――。




 さあ、ラスト1体!――ってときだった。




「ッ!? 止まれ、ティエンオー!!」


「――――っ!」



 いきなり大尉が上げた、今までにないマジな声に……。


 〈呪疫〉を追い込もうとしていた足を、あわてて止める。



《……っ!? これは……!》



 同時に……テンも、オレの頭ン中ですげー驚いてた。




 そして、オレは。


 2人がなにに驚いたのかは……少し遅れてから、分かった。




 それは、最後に残った〈呪疫〉の向こう――。


 結界の外から近付いてくる……『何か』だ。



 ……ソイツは、はっきりと姿も見えねーのに、なんか『ヤバい』って感じるぐらいで……!




「ふむ……まさか、この上さらに新顔を見ることになるとは」




 いきなり、男だか女だか分からないような、そんな声が響いた――と思うと。



「……え……?」



 最後の〈呪疫〉が――頭のてっぺんから、キレイに真っ二つになって……消滅した。



 そして、その向こうには……人の形をした光が立ってて――。



 ……いや、違う。


 光ってるのは……黄金の鎧だ。



 それは……デカい剣と盾を持った――黄金の騎士なんだ。



 ――って、ちょっと待った……!


 こんなカッコの黄金の騎士って……師匠から聞いたことあるぞっ!?



「……あ……!」



 ……そうだ、確かコイツ――。


 あの師匠でも、勝てなかったっていう――!




「……まさか……。

 こんなときに、こんな場所で遭遇するとは思いませんでしたよ……っ!」




 ――仮面のせいで、目元は見えない。


 けど……きっとすっげー険しい顔をしてるって、そう分かる声で。



 大尉は、ソイツの名前を呼んだ――!





「……エクサリオ……!」






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― 新着の感想 ―
[一言] mk23ですか。 一時期流行りましたけど、今はもう見なくなりましたねー。 というか、やっぱりBB弾なんだ(笑)。
[一言] 微居君「アーサー、お前プールの時は亜里奈とキャッキャウフフしてて、今度はアガシーとか? ……そうか(ゴトトトトッ)」 からのエクサリオ……! これはスパロボでよくある、中盤くらいで倒せない…
[一言] おおかっこいい展開ですね!! >黄金の鎧 超〇界村を思い出しました (ノ∀`)
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