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4度目も勇者!?  作者: 八刀皿 日音
1章 どうにもこうにも、勇者は悪役をするしかない
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第9話 魔法少女、問答不能で問答無用



 ――いかにもアヤしげな、〈救国魔導団(きゅうこくまどうだん)〉とやらの代表らしいサカン将軍なるオッサンは、ゴホンと一つ咳払いを挟んだ。



 ……もしかしたら認可申請とやらについては、勢い余っての失言だったのかも知れない。


 しっかり聞いてしまったので、もう引っ込みはつかないが……ちょいと哀れなことに。



「あー……ともかく、だ。クローリヒト君。

 キミのそのチカラ――そして、身にまとう大いなる〈呪い〉。

 キミも、我々と同じく、この広隅(ひろすみ)の地に現れるという〈世壊呪(セカイジュ)〉を探しているのだろう?」




 ……セカイジュ……?




 ――といったら、アレか? 神話に出てくるでっかい樹のことか?


 しかしそれにしては、何かビミョーに言葉の雰囲気が違った気がするけど……。



《……ふーむ……》



「そこでだ。スカウト――とまではいかなくとも、今後、キミとは協力関係を築けるのではないかと思ってね。ひとまず挨拶にうかがった、というわけだ」

「――あ! 来たよ、アイツ!」



 瞬間、また映像の向こうからかすかに聞こえる、女の子の声。


 それに対してサカンはうなずいて応えると、俺には、大ゲサに一礼してみせる。



「では――邪魔が入ったようなので、今日はこれで失礼する。

 また会おう……出来れば次は、良き友人として――」



 その申し出はキッパリとお断りしそうになったが、それより早く、サカンの映像は掻き消えた。


 そして……入れ替わりに、結界内に何者かが飛び込んでくる。



 いや、何者か――とは言ったが、正体は明白だ。




「あなたは――クローリヒト!」




 ――ゆっくり、背後を振り返る。


 予想通り、そこにいたのは――かの機械式魔法少女、シルキーベルだった。



 ……まあ、ちょうどいいと言えばちょうどいい。


 昨日の夜の誤解をさっさと解いてしまおう……こういうのは早いに越したことはないもんな。



 よし、じゃあそういうことで――!




 ――待て、シルキーベル!


 確かにこんな呪われた装備を身に付けてはいるが、俺は別に何か悪事を働こうとしているわけじゃないし、キミの敵でもない。だから――。




 努めて真剣に、真面目に、誠意を持って語りかける俺だったが……。



 ……あれ? まったくゼンゼン伝わってない……?




《そりゃそうですよ勇者様……『沈黙』させられてるのお忘れですか? 間の悪いコトに》


(げげ……なに、まだ治ってないのかよっ?)


《そりゃもう、心底まことに残念ながら。

 しかも、呪いばかりか毒も食らっているため、このまま待ったところで、沈黙が自然治癒するより、勇者様の体力(HP)が尽きてあえなく野垂れ死にする方が早いと思われます……。

 ――まあ、骨は拾ってやるぜ新兵(ルーキー)


(いや、俺が死んだら契約で繋がってるお前もヤバいだろ――って、それどころじゃないぞオイ!)




 気付けば、シルキーベルが、今にも飛びかかってきそうに敵意をムキ出しにしている!



 ――見た目も声も結構可愛らしいのに、案外ケンカっ早いなこのコ……!




「さっきチラリと見えた、あの映像の男――〈救国魔導団〉ですよね。ということは、あなたはやはり……!」



 ……な――!


 さっきのシーン、絶妙にちょっとだけ見られてたのか!



 ……ってことは――!



《……まあ、悪役同士の密談……ですよねえ。

 ()的に。アレは。どう見たって》



 ――お、おいおい、違うんだって、ちょっと待て! 待てって!



 俺は、必死に首を振ってその疑いを晴らそうとするが……。



「……なるほど。

 お前に話すことなどない、と言うことですか……!」



 ヘルメットで分からないが、シルキーベルのこめかみに青筋が浮かんだ気がする……。



 いかん、誤解が深まってる! そーゆー意味じゃないってのに!



 ……違う、違うって!

 むしろ話したいことはいっぱいあるんだよ、問答は無用じゃないよ、有用だよ!



「分かりました、なら――!

 あなたたちがどんな悪だくみをしているのか……力ずくでも聞き出します!」



 ――ダメだー! 問答不能で問答無用だー!



《そろそろ作戦時間も限界だ、マジにズラからねえとヤバいぞ新兵!》


 ……くっそ、このエセアーミーにツッコむ余裕すらない……!



(――ああもう!

 しょうがない、全力で離脱するぞアガシー!)



 俺は後ずさろうとするが――。



「――いきますっ!」



 逃がしてたまるか、とばかりに、長い杖めいた武器を、いきなりスゴい速さで突き出してくるシルキーベル。



 そう、スゴい速さだ――速さだけなら。


 しかし、決定的な経験の差とでも言えばいいのか……俺にとってはヌルい一撃だ。



 意識の向け方、身体の軸の置き方、筋肉の動き、流れ――何もかもが素直すぎる。


 こういう攻撃しますよ、と予告した上で、なおかつそれをキレイになぞってくれてるようなモンだ。



 言い方をゲーム的に変えれば――俺の回避能力に対して、命中修正が低すぎる。


 何らかの武術をしっかりと修めているようだけど、そんなものは結局、実戦で磨かなきゃお遊戯の域を出ないってコトだ。



(ちょっとヘコむだろうけど……悪く思わないでくれよ! これ以上!)



 ……セオリーから言えば、一撃目はかわして二撃目を狙う方が確実だろう。


 だが俺はあえて、この初撃に反撃を合わせた――そう、実力差を思い知らせるために。



「――ッ!?」



 ――結界内に、鋭い金属音が響き渡る。




 遅れて鋭く斬り上げた俺の聖剣は、シルキーベルの手から――。


 彼女が渾身の力で握り締めていたはずのその手から、杖を弾き飛ばし――はるか上空まで跳ね上げていた。




「え――そ、そんな……っ!?」




 自らの両手を見下ろして立ち尽くすシルキーベル。


 俺は、その姿に後ろ髪を引かれる思いをしながら――。




《勇者様! そろそろマジで!》


(……分かってる)




 消滅し始めている結界の外へと、大急ぎで飛び出した。






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― 新着の感想 ―
[一言] 世破呪……すっごく私の中の中二病が刺激されるぜ!! でもって、うん……傍から見れば悪役同士の密会だぜ新兵(ベイベー)ッ!
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