印
あのあと、召介の待遇などでわたわたしつつも、何とか一日が終了した。
召介は、特別学級に席を置き、アドガメント学園のことを教えてくれる手筈だ。
純は手続きが遅くなるから。と成哉の車で帰宅する。
「野狐さ、氷使ったんだって?」
息が詰まる。サラリとした言い方ではあるが、重たい空気を纏って伸し掛る。
「使ったよ。誠心誠意、全力で戦わなきゃ可哀想でしょ?」
「野狐の口から誠心誠意という言葉が出るとは……。」
互いに夕食の支度をしつつ、会話を続ける。
成哉はあっけらかんとして聞いてくるものの、慎重になっていることぐらい
表情で察せるほど、真面目な顔をしていた。
「ねぇ、馬鹿にしてんの?」
「いや、俺は孤児院時代の荒れていた野狐の話をしているだけだよ。」
「成哉。前から聞きたかったんだけどさ、
なんで私をパートナーに選んだの?」
「さぁね?秘密。」
ガチャリと家の扉が開く音がして、純の帰宅とわかり、玄関まで駆ける。
「……まだ、野狐は知らなくていいよ。」
野狐が玄関まで駆けていき、ひとりとなったキッチンで
誰に言うこともなく、成哉は静かに呟いたのだった。
「ご馳走様。野狐、悪いけど席を外してくれる?
ちょっと純と話さなきゃいけないことがあるんだ。」
「ん?いいよ。じゃあ、部屋で宿題してるから、なんかあったら声掛けて。」
ちゃんと野狐が部屋に行ったのを確認してから、
成哉は机の上に資料を広げる。
「うわっ、なんだこれ。嫌がらせか?」
「そう。野狐の下駄箱と美妃の下駄箱に入っていたらしい。
朝、俺が呼び出されたのもこれが理由だ。」
「【GANMA】には、そういう被害はないのか?」
写真でまとめられている迷惑な手紙が載った書類に一通り目を通しながら
純は聞いた。
「どうやら、それが無いみたいでな。
これを見つけたのが、龍希なんだよ。」
「【GANMA】のNO.1か。
ってかどうして気づいたんだよ。男子と女子じゃ下駄箱違うだろ。」
「本人曰く、見て見ぬふりをできない量で、この資料に乗っている分は
ほんの一部だそうだ。
処理するのもめんどくさかったんで、大方燃やしたと言っていた。」
12枚目の資料を、見ていた時、何かに気づいた。
それは、資料の手紙の淵に押されていた印鑑だ。
教師として学園に務めているならば1度は見た事のある印。
「これって、政府が直接施設に命令を送る時に押される印……。」
つまり、この嫌がらせは政府絡みの問題となる。
「この問題は、もう少し様子を見なきゃいけなさそうだな。」
成哉の響力、出番がねぇな……。
いつかちゃんと使わせます。