出席簿:依田絵奈
[まって、絵奈さん!まだなにか来る!]
葉月の通信に思わず身構える。
「フッフッフッ……我、イザーレン幹部 エルリラ。
汝らに辛く醜い試練を与えようぞ。」
エルリラが指をパチンと弾く。
黒い霧を纏いし鎌を持つ者……。
「みんな、ログアウトして。
お師匠は私が倒すから。」
絵奈の通りに、エンデルア、アドガメント陣営はログアウト。観戦体制に入った。
絵奈は、元々この国の人間ではない。
どこか遠くの国の戦争孤児だ。
彼女は齢8にして、人から魂を刈りとる死神だった。
『死神の少女』『醜い女』『近づいたら殺される』
悪い印象ばかりに捕われていた。
「君も、死神なのか?」
とある国のスラム街で弱りきっていた絵奈に声をかけた女性がいた。
彼女も鎌を持っており、同業だと直ぐにわかった。
死神は、『響力』なんかじゃない。
死神の響力を持つのは、その鎌だ。
この世のどこかにいる武器職人は物に響力を宿す『付加』という響力を持っていた。その武器職人によって作られた鎌は『悪人だけの』人の魂を刈り取った。
戦術と生活術、その全てを教えてくれた彼女を倒すことは絵奈には出来ない。
ただ、自分が刈り取られないように防ぐのみ。
『自分の身は自分で守れ。
大事な人は命をかけて守れ。』
それが師匠である彼女の遺言だった。
「実の姉に手も足も出ないか。フッ、余りにも滑稽な噺よ。」
エルリラのその一言に絵奈も彼女も表情を強ばらせる。
「やめろ……絵奈にその話をするな!」
エルリラに盾つこうとするものの、動きを止められる。
「哀れだなぁ、イザーレンによって、潰された。
敗戦国の王女姉妹よぉ?
逆らうなんていい度胸だ、凛梨。
お前はどうせ敗者。逆らうことなんて出来ないんだ。」
エルリラの声とともに絵奈に力が宿る。
今までとは違う、大きな何かが。
「やめて……そんな事言わないで……お師匠……いや、お姉ちゃんを馬鹿にしないで……。」
「残念だったなぁ、凛梨。お前が響力『消失』で消した、記憶と響力が復活するなんて。お前の企みは無駄だったようだ。」
「それはどうかな。絵奈、私と雪兜の呪縛を!」
絵奈は二人めがけて、青い響力の結晶を放とうとする。
[響力『解放』呪われし過去からの解放!]
凛梨と雪兜に当たった響力の結晶は、彼女らを包み込んで消える。
[響力『吹雪』 雪鎖!]
雪の塊で作った鎖でエルリラを封じる。
「馬鹿な……なぜ攻撃できる……!?おまえらは、ルオン様の配下!」
「俺らは、解放の響力でお前らの呪縛を解いた。
もう、お前らの手駒ではないっ!」
雪兜は、雪華の頭に1度手を置き、振り返る。
「俺と凛梨はもう生きてはいられない。
でも最後くらい、可愛くて大事な妹のために、全てを捧げるんだ。」
[合技 『吹雪×消失』 封印 参ノ型 かまくら封技]
取り残された絵奈と雪華の目に焼き付いたのは、
最後まで大切な人を守った兄姉の満面の笑みだった。




