暗闇に 不気味に笑いし 青年よ
「ついに来たわね・・・・アドガメント。」
時刻はまだ昼を過ぎているかいないかの頃合いなのに、アドガメントの上空は暗闇に包まれている。
バサバサと羽搏く羽の音と、蝙蝠の煩わしい鳴き声に、不気味に笑う一人の青年と傍に寄り添う従者の恰好をする女性。
「よく来たね・・・待ってたよ。」
一歩前に踏み出そうとした野狐の体を蝙蝠が囲む。
目を開ければ、見覚えのある空間。
「桜子達が君たちの本陣にいるのなら君も俺達の本陣にいてもいいだろう?」
「交渉はここで・・・ということか。」
「ああ。君たちの条件はなんだ。」
「私たちはイザ―レン討伐が目的だ。
ここに来る前、知り合いからの連絡があってどうしてもやらなきゃいけないんだ。
この腐った世界を戻すためにも。」
その野狐の発言に動揺する。
「イザ―レンだと・・・!?馬鹿言え。あの国に勝てるわけがないだろう!」
「聞いたよ。成哉から。全て。あんたのことも。千鶴さんのことも。
だから、手を組みたいんだ。白夜だって、本当はその呪縛から解かれたいんだろう?」
「俺らはイザ―レンに逆らうことなんてできない!逆らったらこの身は散り果てる!
そういうもんだって、わかってるのになぜそこまでするんだよっ!
もう・・・ほっといてくれよ・・・。」
「ほっといてなんかじゃない!簡単にあきらめないでよ!
あんたは昔はそんな性格してなかったじゃない!いったい何があったの!!」
激昂した声がモニタールームから聞こえた。千鶴だった。
急ぐようにして、千鶴は白夜のもとに駆け寄ってきた。
「千鶴・・・・。」
「白狐は、私の体を心配しているんでしょ!?私はあなたより木化がひどいから・・・。」
いつの間に入ってきていたのか、召介が野狐の隣に立つ。
「お二方、お聞きしたいのですが、元の体は何処に?」
「体はこの学園内にある。どうしてだ。」
ごほん、と一つ咳払いをしてから召介は話を続ける。
「あまり知られていないんですが、化け狸の変化は響力も化けられるのですよ。
知り合いに、イザ―レンとは違った、『霊媒』を持つお方が居りましてね。
彼女の能力は特定の死人を肉体が無いのなら霊として、肉体があるのならばそれこそ完全な口寄せができるのですよ。」
目を見開く一同に再び問いかける。
「どうしますか?ご決断を。」