青い薔薇
実力は互角だった。
どちらも勝りも劣りもしない。ただ剣と鬼の爪がぶつかり合う。
そんな音が続いて響くだけ。
「華さんに聞いたんだな。」
ふと、剣を振るうことをやめた圭太に問い返した。
「あんたの目的はなんだ。この国を滅ぼすことか、それとも王座につくことか。」
「イザ―レンを止めるためだったら、なんだっていい。
知らないだろうな、俺の親父は八雲にこのことを話していないままこの世を去った。
イザ―レンは独裁、そう呼ばれるが実質は一人だ。全て木人形があの国を動かしている。
そしてイザ―レンの帝王はルオン。彼は何度も自らの響力で長生きをしている。
この王国、エーデ王国の初代国王の長男だ。」
それを湊に告げた時、糸のようなものが湊には見えた。
「俺らはルオンに監視されている。あの国を崩すのはお前らしかできない。
だから・・・頼んだぞ。」
その言葉と共に、圭太は散った。
胸に愛刀が刺さった状態で。
「っ・・・こんなことあんのかよ・・・。」
「湊、こんなところで何をしているんだ?」
後ろから彼に声をかけたのは、王妃である鈴だ。
彼女は出自により、皇族から追われていたのではなかったのか。
疑問が脳内を渦巻いたまま、彼女は話し始めた。
「圭太さん、散ったのかぃ。じゃあ、圭太さんがジャックしていたのは、やっぱり葉月と夜乃じゃなあない。八雲だったんだ。」
どうして、国王をジャックする必要が、それは問わずとも明確だった。
「圭太さんはねぇ、響力さえ使い辛くなる程に衰弱しきったうちの旦那をジャックしてこの国を回していた。だけど、やはりきつかったんだろうね。元々、圭太さんもその病に侵されていたんだから。
いまさっき、八雲も息を引き取ったよ。兄弟で共に散ったんだ。
なぁ、湊。あんたが夜乃を大事にしているのは知っているし、それに対して何も言うことはないさ。
もう少し、手を貸してくれないか?」
「手を貸す・・・・?」
「ああ、そうさ。もうここまで追い込まれた以上、イザ―レンを倒さないわけにはいかない。
協力してくれるかい?」
「勿論ですよ。至急手配しますね。」
「あとそれと、心配してるだろうけど、葉月と夜乃は無事。ここからでもわかるわ。」
「ここからでも?」
その疑問を口にしたとき、気付いたようにつなげた。
「私と華さんは千里眼を持つ、三つ目族なのよ。
化け物扱いされるときあるけど、一応古来から王族に仕えていたのよ?」
この国にはたくさんの一族が住んでいるものの、いまだ受け入れられないところもあった。
八雲はそれでエンデルアに妖科を作ったとの話も聞いた。
「あれ?鈴様。今ってどの学校も夏休みですよね?」
「ええ、まだ始まったばかりだと思うのだけれど・・・・どうしたの?」
自信満々に湊は答えた。
「二大勢力、アドガメントとエンデルアに力を借りるんですよ。
エンデルア側はうち義理の姉が居ますし、アドガメント側はどうしてもイザ―レンを討ちたいでしょう?
一石二鳥じゃありませんか。」
「でもそれは、生徒が怪我してしまう可能性もあるじゃない??」
「鈴様。是非あなたに許可をいただきたい。
イリヤバーデンを使えば生徒が無傷、かつイザ―レンを討つことができる。
そうです、『バーチャル』を使うんですよ。」
湊の作戦はエンデルアとアドガメントを通じるバーチャル空間での戦闘を行い、そのバーチャル空間を葉月と夜乃が操る。
そうすることによって生徒側は、無傷であるが、それに対してイザ―レン側には致命傷を与えられる。
この案は既に、湊は水無月に資料を渡していた。
あの時湊が渡したUSBメモリには今回の計画のすべてが記載されている。
これを水無月が成哉に渡せば、自然と弟にまで繋がり、この話はエンデルアとアドガメント、そして政府が協力して行う大きな問題とまで発展する。
「お前、まさかここまで読んでいたというのかい?」
「俺だって抜けているとはいえど、戸隠の英才教育、受けてんすから。
舐めないでくださいね?」
「その気持ちはすべて一人のためなんだろう?」
「あは、バレちゃいました?」