どす黒い闇
生家に着いたとき、目を見開いた。
実家の美しい景観が損なわれていた。
「あらまぁ。美妃ちゃん。学校はどうしたんだい?」
「学校は・・・帰宅命令が下って。」
隣人で幼少期世話になっていた華に話しかけられた。
「知っていると思うけど、この通りさ。
国の政府が取り押さえに来たよ。美妃ちゃん、ちょっとおいでなさい。
あたしがすべてを教えたげるからねぇ。」
華は、元々先代国王の下で使えていた王宮直属の占い師であった。
自らの響力『反射視点』を用い、過去現在未来のすべてを見透かした。
きっと華ならすべて知っているのだろう。
この一連の流れも傀儡国家も今この場にいない美心のことでさえ。
華の自宅にあがらせてもらい、居間まで行く。
「成績優秀な美妃ちゃんならわかるだろう。
イザ―レンという、この国とは長くから敵対している王国のことを。
この国は、絶対王政の帝国で戦では負けなし、だが帝王が暴虐で有名だ。
美妃は狐の子と天狐伝説を知っているかい?」
「この国が窮地に面した時、天狐は姿を見せ、我らを正しい道へ導く。
その天狐にあやかり、孤児もこの国に貢献できる人間になれるように、名前に【狐】の字を入れる・・・。」
美妃の脳裏に野狐が脳裏をよぎる。
まさか、純先生や、成哉先生が野狐を大事にしているのも、それが理由で・・・。
確かに孤児だという話は聞いたことがある。
「狐の子はもう一つの意味もあってねぇ。
実は名家の次男が長男の才能に溺れないようにという意味もあるんだよ。
笹渡 成哉・・・知っているね。彼は名門紫雨家の長男だ。
一応家を抜けて、父親姓を名乗っているが、それは大きな問題じゃない。
その異父弟・・紫雨白狐はイザ―レンに許婚相手である織元千鶴と共に囚われ、殺された。
しかし滑稽なことに彼らは生きている、紫雨白狐は紫雨白夜と名を変えて。」
紫雨白夜は知らないはずがない。華の言ったことが本当なら、彼は一度死んでいる。
でも今生きている。アドガメント学園生徒会長 紫雨白夜として。
「そんな・・・誰かが生き返らせたとか・・・蘇生系響力はなかったはずでは・・・?」
「イザ―レンも頭が回るらしくてな、捕らえた白狐と千鶴の魂は天へと上る前に木人形へ移したんだ。
これはうちの皇太子側近 圭太もそうらしくてな、調べてみたんだが彼の魂は現国王の兄らしいんだ。
だが元々病弱で、私と八雲くらいしか実際の顔を見たことがないからバレなかったんだろう。
簡単に言えば、以上の三名は、イザ―レンの操り人形だ。白狐と千鶴は自らの意思で反発しているようだがの。
これで問題なのが圭太だ、彼奴は昔から『ジャック』という精神干渉の響力を持っている。
考えたくはないが、もしその力が皇太子に使われているとしたら・・・。
この国が傀儡になったのも頷けるだろう?」
思わず息をのんだ。この国に潜む闇はこれほどもどす黒いものだったとは。
「その話、ほんとなの・・・?」
列車での戦闘も終わったのだろう。美心と連が居間に来ていた。
「じゃあさっき倒した鴉天狗達も・・・元々は・・・・。」
「いや、彼らはまた復活する。ただ単に木人形が壊れたにすぎないだろう。
早く行け。私は大丈夫だ。
お前らしかこの国を救えないんだ。早く!!」
その華の声に後押しされ、三人は駆け出して行った。