出席簿:望月連
望月連は、猫又の体質を持っている。
猫の獣人の血を引く一族の子であった連は、猫又の体質が発覚する7歳の時までは、
優秀な忍びになれるだろうと過度な期待を寄せられ、狭苦しい世界で生きてきた。
7歳のある日、使いの者が連の尾がふたつあることに気づいてしまい、忌み嫌われた。
この一族の英雄と昨日まで呼ばれたその信頼がたった一言で崩れてしまった。
「望月連は化け物だ。」
その一言によって。
何があったのかもわからないまま、無一文で家を追い出された彼は、生きるために必死だった。
その年は不作で、孤児が多く、孤児院にも入れぬ、また家の事情など明かしてしまえば殺されてしまう、その戸惑いの中生きていた。
連が8つの頃、雇われ仕事が終わり、いつもの塒へ戻ろうとしていた時、一人の女の子が大人数の大人に攫われそうになっていた。
あの子は、闇市かなんかでうられてしまうだろう、そう考えた瞬間恐ろしくなった。
連は相手が気づく前に、響力を使った。
この街で響力を使うことは原則禁止されている。
しかし、この案件は1人の人生を奪おうとしている大人に対しての制裁である。
使わないという選択肢が彼にはなかった。
「なんだよ……鎖?あぁん?てめぇか?
この街は響力禁止。それすら分かってねぇのか餓鬼。」
大人のうちのひとりが連にいった。
「それはどうなんだ。一人の女の子を攫おうとしていて、そんなことが言えるものかっ!」
連は、声を荒らげた。その声に通りがかった警官が反応する。
「ちょっと、いいかな?」
大人達は、警官に連れられて言ってしまった。
連は、攫われそうになった女の子に近寄り、声をかける。
「大丈夫?」
「う、うっ……」
女の子を宥めていると、連よりちょっと年上だと思われる子が走ってきた。
「美心!」
「姉様、あの、この人が助けてくださって!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「いえ、大丈夫で……あ。」
連の大きな腹の音に思わず3人は苦笑する。
「よかったら、うちに来ませんか?美心を助けてくれたお礼も込めて。
あぁ、自己紹介が遅れました。稲葉美妃です。」
稲葉家はその地域でいちばん裕福で、偉い名家だという話は聞いていた。
もしこの家ならば雇ってくれるかもしれない……
「俺の名前は、望月連です。捨てられたけど、ついこの間まで修行してたので戦力になるとは思います。良ければ、俺を雇ってくれませんか……。」
あの時、お嬢は俺を雇ってくれた。
化け物だと告げても怖がらないでいてくれた。
だから、愛するお嬢のために、おれは、おれは!