椅子に座りし者
「姉様、水無月先生からの連絡が。」
今は夏休み、次のアドガメントからの襲撃に備えて、響力の訓練を行っていた時のことだ。
水無月の実家のように、なにか襲撃されていては遅いと、1度実家に戻るよう連絡が来たのだ。
片道1時間かかる実家へ最低限の荷物を持って、美妃と美心は出発した。
それを見送った野狐は、メンバーを集めていた部屋へと入る。
「野狐、急に呼び出してどうしたの?」
部屋に入ってまず最初に声をかけたのが、雨音 雪華。
野狐との付き合いなら、愛姫と同等なほど長い、いわば幼馴染みみたいなものだ。
雪華は、野狐のすぐ下、No.2に君臨している。
「そうですよ、響力訓練中に呼び出すとからしくない。」
その雪華の疑問に同乗したのが、依田 絵菜。
今はNO.3の位置に君臨しており、彼女はとある時から野狐に忠誠を誓っている。
「俺は呼ばれる義理ないと思うんだけど……。」
絵菜によって、既にNO.3への椅子に座れなくなっている召介も呼び出されていた。
「みんなに話があって今日は集まってもらったんだけどね
近々、私達はアドガメントに潜入する。」
野狐の告白に思わず目を見開く一同。
「野狐様!いくらあなたが強かれど、私はそれに反対です!
第一、あの生徒会長なんて……。」
「だからこそ、お願いをしているのよ!
私が潜入している間のNO.1の椅子は、愛姫に託す。
未来視を持ってるから、出来るはず。」
「任せて、野狐たん。」
「雪華、あんたの響力は偉大なものよ。
くれぐれも未来視を守りながら戦って欲しい。」
「わかってるって。あんたのことくらい、流石にね。」
「……絵菜。絵菜が私のこと心配してくれるのは嬉しいよ。
でもこれは、避けられないんだ。頼まれてくれるかな?」
「主君に逆らうなど、忠誠を誓った私にそのような選択肢はありません!」
胸に手を構え、絵菜は答えた。
「そして、召介。
あんたにとってアドガメントに、また潜入するのは辛いかもしんない。
でも召介の力が必要なの。お願い。」
「あそこに、いい思い出なんてないんで、存分に暴れてやりますよ!」
皆の賛同に少しばかり安心した後、野狐は伝えた。
「決行は、向こうが攻めてきた日。
それまでは各自、訓練を。」