表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/11

9

 ──新たに届いた手紙を読んで、とりあえず神さまにフォローを入れる。


「しょうがないんです。ちゃんと神さまの存在ハッキリさせないと私の頭がおかしいと思われるんです」

 虚空に向かって独り言を言う姿が既に頭おかしいと気付いてはいけない。心を強く持て。

 即座にポケットに異物感。

 取り出したら当然のことながら神さまレター。


『今回だけなんだからね。。。!』

(注:原文まま)


 許されたらしい。


「シズク、それは、何処から出した」

 手紙を確認していると困惑顔のレックナート、いやレックナートだけじゃないなコンラートもシュテハウルも困惑してた。

「ポケット。この世界に喚ばれた日からほぼ毎日、神さまからの手紙が入って来るよ」

 中布を摘んで引っ張り出し、ポケットアピール。

「……ポケット?」

「……ドレスに?」

 困惑顔のままレックナートとコンラートが語るには、令嬢に誂えられるドレスに普通そんなものはないらしい。


「じゃあハンカチとかお財布どうすんの?」

「必要ならば出てくる」

「野外でもなければ側仕えが持っていますし、女性の手には宝石と扇くらいしか必要ありませんけど」

 素朴な疑問だったけど聞かなきゃよかった。こいつら超坊ちゃんだった。シュテハウルすらウンウン頷いてた。


 ちなみに辺境滞在中に着ている普段着でも最高品質のドレスなので、ポケットなど絶対ないはずらしい。

「全部の服にポケットあったけど……」

 そう思い手を突っ込むとまた新たな手紙。

 そんな気はしたけど、中には神さまから『ポストがわりにシズクちゃんの服には全部にポケット作ったよ』的な報告があった。

 確かによく見たらこのポケット縫い目がない。神の超技術。


「それで時々ごそごそやってたのか」

「何してるのかなって思ってたよ」

「俺、シズクは尻を掻いてるんだと思ってました」

 てっめ、このシュテハウル。

「シズクどうどう!」

「落ち着いて!落ち着いて!」

 ぐるるるがうがう。温厚なシズクちゃんも流石に怒ったぞである。


 落ちつかされて。今。

 当初の目的であった不老不死とかあんのかという点について、神さまに確認することになった。


「しかし神秘的だよねぇ……」

「ああ、神の存在をこんなに身近に感じられるとはな」

 コンラートとレックナートが神さまレターを前に祈りを捧げている。

「一応腐っても聖女だったんですね」

 シュテハウルいい加減にしろよ?


「さすがというか、神は慈愛に満ち溢れておられる」

 レックナートが指し示す手紙には『ねえねえ。シズクちゃん。。。ちょっと気になる人とかできた。。。?神さまってけっこう経験豊富だし。アドバイスとかできちゃうよ。。。?』(注:原文まま)と書かれている。

 レックナートには何が見えているんだろうか。

「何と書かれているんですか」

 ちょっと年相応の好奇心を覗かせたシュテハウルが、レックナートとコンラートの袖を引き教えてとねだる。

 つかそこは私に聞こうよ?

「旅立ちの中でも人々に心を傾けることを忘れるな、苦しいとき友を頼れ。ボクにはこんなイメージで伝わりました」

 コンラートのイメージ、ノイズ酷くない?

 どっちかというと妨害電波の方をメインで拾ってない?

「神がシズクを支えてくれようとしているのが伝わってくるな」

 微笑んでるレックナートに原文読み上げてあげたい。

「だというのにシズクときたら」

 何でシュテハウルはそんなに辛辣かな?


 まあいい。さっさと確認しよう。

「神さま、神さま、私の不老不死とかありなしのあり?」

 瞬間、そんな聞き方があるかと集中砲火を食らうも無事返事の手紙は届いた。


『なしなしのなしだよ。

 不老不死とかいまどきないよ。。。わらう。

 寿命はちょっと長いかもだけど。

 ふつう。ふつう。

 いつも若いねっていわれるけどちょっとは年もとるよ。。。』

(注:原文まま)


 神さまノリいいな。

「不老不死ないって。常識レベルでの健康で長生きは保証してくれるらしいよ」

 手紙を読むとキッズ達が聖女っぽいとちょっと感心していた。


 うん……文体が女子中学生じゃなかったら私ももう少し敬意を払ったのかもしれない。でもまあもう慣れたし、この神さま気楽に付き合えていいけど。

 その後もいくつか質問して、私も新しく知ったことがあった。けっこう有意義だった。


「……なるほどな」

 穏やかな笑みを浮かべてレックナートが頷く。

「今日はシズクのことを知ることができて良かった、我々は浅からぬ縁で繋がり共に過ごしているが、お互いのことをあまりにも知らない。知るための努力も怠っていた。無関心は悪手であり無知は罪だ、シズクのことを我々は知るべきで、シズクにも我々のことを知ってもらうべきだと思う。明日、そうだな午後のお茶を一緒にしよう、話したいことがある」

 レックナートがそう言うと、コンラートもハッとして「ボクも!」と言いシュテハウルも「……俺も心を決めます」と言った。

 なんで明日?と思ったが、今日は仕事の予定が入っているらしい。

「私は修繕が終わってない街や街道の整備、コンラッドは怪我の治療とその後のカウンセリング、シュテルは農地と林業の指導と兵士の訓練があるからな」

 あっいつもご苦労様です。

 いってらっしゃいませ。

 この世界に来てからほぼ押し花しか作ってないシズクちゃんはペコペコして送り出すしかなかったのである。──




「まさか話したいことがあんなことはね」

 ちくしょう……ちくしょう……

 もう何が悔しいかわからない救国の聖女シズク様、怨嗟の声を地に這わせる。

 側支え達は魔王がいるよ!と涙目で耳を塞いだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ