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──問い合わせ先が神だと言ったあと。
レックナートはスッと手を伸ばし額に触れる。
「熱はないか……いや、少し熱いか?」
平熱高めのシズクちゃんである。
「なんだ、シズク具合悪かったんだ。毒花で押し花とか作った?」
「ははあ、中毒症状による妄想や幻覚ですか」
なるほど、といった顔でコンラートとシュテハウルが頷きあう。
「普段風邪ひとつ引かないから全く気づかなかったな、すまないシズク」
「ちょっと放置しすぎだったかなぁ。よく見たらこの押し花ノート、結構な量の毒物含まれてるよ」
「少し可哀想なことをしてしまいました。あの28歳というのは早く大人になりたい気持ちから来たのかもしれません」
「仕方ないな、だいぶ手がかかる上に我々のストレスがとんでもないが、交代でシズクのお守りをしよう」
「はぁ、まあしょうがないな。とりあえず今日は毒消しかけて寝かせとこ」
「ほらシズク、部屋に戻る。ベッドに入ってください」
や か ま し い わ 。
キレ散らかすのは簡単だが幻覚から暴れてると思われるのも癪なので、あてがわれた部屋へ行き、物入れから紙の束を取り出す。
「シズク何をしている、遊ぶのは後にしなさい」
「横になったら毒消しの魔法かけるよ」
「こら、早く横に……何ですか?」
シュテハウルの胸元に押し付けたそれは証拠物件もとい神さまレター、どう見てもちょっと昔の女子中学生ノリながら神さまらしい威厳があるはず……いげん……い、いげ……無いかもしれない。
最悪自作自演の痛い行動だと思われたらどうしよう。辛いが過ぎる。
不安になってシュテハウルを伺うが手紙の束を持ったまま呆然としている。ふと見るとレックナートも同じ顔をしている、コンラートは……君そんな怖い顔できたの?
「これは、何ですか、シズク」
震える手で手紙の束を持つシュテハウル。
「神さまからの手紙だけど……」
口に出して改めて酷い、頭おかしいと思わないでほしい。
「……なんという事だ」
違うよレックナート 、頭おかしくないから。この世界の神さまがこの連絡手段しか良しとしてくれなくて。
「かろうじて読めます、でも文字を追うというよりはイメージが頭に浮かぶ感じです」
おあ?
「ああ、レイク、私もだ。相当の魔術的素養がなければ文字すら見えないだろう、シュテルはどうだ?」
なんだと。
「俺には光の塊としか……ただ神聖な光だという事は分かるので、手に持っていることが恐れ多いです」
まじか。
私の目にはただの手紙の束としか見えない。しかも最初こそ上品系レターセットだったけど割とすぐに可愛い系の便箋使ってきたり変形折でハートとかシャツとか折ってくるようになったので凄くごちゃ混ぜ。だいぶ前からこの世界の神さまは女子中学生だと思って対応している。
なので私から見れば女子中学生の手紙を恐れ多さがってるシュテハウルと真剣な目で見つめているレックナートとコンラートの姿はとてもシュール。
ふとポケットに異物感。このタイミングで神さまレターが届くとかナイスすぎ、と思ったら中には裏切られ悲しみにくれる女子中学生が居た。
『シズクちゃんのバカ。
バカ。。。バカ。。。
友達の手紙を人に見せるなんてマナー違反だよ。神さまちょうショック。。。
今日はもうおやつ食べらんない。。。』
(注:原文まま)
ハートブレイク神さまレター。
どうやら知らない間に私は友達認定されていたらしい。──
「………………」
口元を押さえて黙る姿に側仕え達が首をかしげる。
この件について口に出すと抗議の手紙がポケットに山盛り届くので、感想は胸にとどめるシズクちゃんである。