表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/11

3

 ──力でサイロニカ上層部に支配という名の導きをしたあと。


 シズクは王宮の一番いい部屋で『待て』されていた。

 締め上げて吐かせ、もう二度と帰れないと分かってから、自身の人生の保障を王と神殿長に契約させた。

 というかボコったあと「誓え」と言ったら魔法陣が現れ、鼻水垂らしながら泣く二人が悲鳴混じりで「誓います!」と言った瞬間スッと二人の体に吸い込まれていったのだ。

 なんだあれ? と思っていると「うわ……そこまでするか?」「ひぇ、エゲツな……」とか聞こえてきたのにカチンときたので、とりあえずその場にいた全員に同じ事をした。


 これも後で分かったがあの魔法陣は死後の魂まで縛る従属契約で、普通準備だけで何年も要する物らしい。あと魔力めっちゃ要るからあんなひょいひょい使えないものらしい。

 しかもあの場には召喚される英雄を取り込もうと国のトップが集まっていた。期せずして英雄シズク様はサイロニカを手中に収めてしまったらしい。

 らしい、らしい、そうらしい。

 だって何も知らなかったし。



 そういうわけで、ちょっと会議で今後の方針決めるから部屋で大人しく待っててください的に懇願されたのだ。


 押し込まれた部屋で冷えた果実水を飲む。

『そういえば外見変わったの見てねえや』

 思い立ち鏡を見たいと側仕えに言えば姿見の前に案内された。

 叫ばなかったのを褒めて欲しい。

 176cm73kg、山田志寿久、顔がチベットスナギツネに似てるって三回言われたことがあるけど、言われるたびそやつらを砂へと変えてやりけりな28歳、筋肉質なのが悩みの女の子……だったんですけど。

 鏡に映るのはシンプルな白ワンピースを着た黒髪碧眼の美少女だったりした。


「お約束キタコレ……」

 参るわー。お約束とはいえ我が身に起こると処理しきれんわー。なにこれ顔ちっちゃ、手足細ッ腰細ッお?乳結構あるやんけ。つか睫毛長い、サイロニカの蝶々睫毛にも負けてないな。身長と体重どんなもんなんだろ……つか若い。

 私自身は28歳だけどこの見た目はどう見ても高校生くらいじゃない?

 ふんふん言いながらじっくり見てたら側仕えさん達が心配してたので一旦姿見から離れる。


 しかし……やたら力持ちで丈夫になったのと変な魔法陣が出たのが英雄補正なんだろうか?よくある異世界召喚物はなんかステータスが出たりするんだけど私の場合はどうなんだろう。

「す、ステータスオープン」

 小声で照れながら言ったにもかかわらず何にも起こらなかった……死にてえ。

 側仕えさん達には聞こえなかったようで九死に一生。聞かれたら恥ずか死ぬ。


 さてステータスは見えない系ファンタジーらしい、この世界の神様との対話もなかったしどうしたらいいのかなー。会議終わったら王様と神殿長取っ捕まえてもっかいきくかー。


 そんなことを思っていると、ポケットに違和感があった。

 何か入っている。というかこのワンピースポケットとかあったんだ?

手を入れると一通の封筒が入っていた。宛名には日本語で『山田志寿久 様』驚きの私宛て。


 何だろうと思いながら開けようとすれば蝋で封をされていた、ハサミないし破ろうと思った瞬間、封蝋が溶けた。

 しかもなんか封筒のいい感じの模様になってちょっと不意打ちファンタジーにびっくりした。

 感心しながら開ければ中には一枚の便箋。


『シズクちゃんへ。

 こんにちは。この世界の神さまです。

 でも神さまコミュ障なの。会うのとかまじ無理。。。手紙で許してね。

 召喚ひさしぶりだったからちょう頑張ったよ。。。

 攻撃力は世界いちにしといた。。。魔法も気合がはいってればそれっぽい近いかんじのやつ発動する。。。

 あとね。この世界に喚んだらからだこわれちゃったから新しく作ったよ。

 ちっちゃいころお絵かき帳に描いてたなりたい自分。あれ可愛かったから採用したよ。

 あ。。。年齢はそのままだから。そのままでもう大人なんだよ。。。

 もとの世界には帰れないけど。ここで幸せになってね。。。ふぁいと。』

(注:原文まま)──



「奇声をあげてドアぶち破って会議室の王様と神殿長怒鳴りあげただけで済ませたの褒めて欲しい」

 現時点まで誰も褒めてくれないのが哀しみな救国の英雄シズク様は、くすん、と泣き真似をした。

 側仕え達は耳を塞いでいたためなにも聞かずにすんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ