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真眼の魔技師と太古の魔導書  作者: 直岩
第一章 真眼の覚醒
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第8話 増える同居人


 「たっだいま~」

 

 「お、お邪魔します……」

 

 「お帰り、リカね……んん?」

 

 その日の夜。買い物を済まると、姉が帰ってくる迄に、風呂を洗ってその後に夕食を用意していたら、ちょうどリカ姉が帰ってきたようなのだが。

 何故かもう一人分の声が聞こえた気がする。今のは芽依の声だったか……?

 たぶん芽依だな。そもそもこの家に来る人物なんて限られている。

 

 「芽依か?来るなら来るで言ってくれよ。今から、追加で作るから。何が良い?」

 

 「ふふっ。残念!芽以ちゃんでは無いのでした~!」

 

 「はあ?芽依じゃないなら誰を連れ……てきた……え?」

 

 姉が訳のわからない事を言うので、お玉を持ってエプロン姿のまま、台所から顔を出すと、その人物の顔が確認出来た。

 俺は思わず持っていたお玉を落としてしまった。

 

 「こ、こんばんわ。と、遠野レン」


 「あ、ああエリアーナ。こんばんわ。えっと、取り敢えずなに食べたい?」

 

 「お、お任せするわ」

 

 「そ、そうか。じゃあ適当に作るよ」

 

 「なーに?君たち同じクラスなんだからもっと気楽にしよ!あ、そうだ芽以ちゃんも呼ぼっと」

 

 今、何て言った。

 

 「おい、リカ姉、待て、ちょっと待て。待ってください」

 

 「あ、芽以ちゃん。今からウチ来ない?うん。あ、じゃあお願い。じゃ、また後でね~」

 

 聞いてないなこのバカ姉。

 

 「ねえ、この人いつもこうなの?」

 

 「いつもこうなんだよ」

 

 エリアーナは世界各地で、噂を聞いていた『翡翠の魔女』と今、目の前にいる柊リカーナとの差に「あ、あれは、同一人物なのかしら」と疑問を口にしている。

 

 まことに残念ながら同一人物です。

 

 

 

 

 

 

 「そんなわけで、今日からエリアーナ、いえ、リーナちゃんはウチに住みます。ぱちぱち~」

 

 「………す、む?え、今、住むって言ったか!?」

 

 追加で二人分を作り、さあ夕飯をさっさと食って寝よう。そう思ってたんだが、またリカ姉の口から、とんでもない事が聞こえた気がする。

 

 「へぇ~。レンくん良かったね」

 

 「あの芽依、脇腹を、っちょ痛っ」

 

 隣に座る顔は笑顔なのに机の下では、俺の脇腹に肘で攻撃してきている。地味に痛いので止めてほしいんだが。

 

 「二人ともどうしたの?」

 

 「いや、芽依がこうげ―「何でもないです。ねーレンくん」何でもないよリカ姉」

 

 隣からの圧力が凄くて逆らえないんですが。

 そんな俺達の様子を見てなのかは、分からないがエリアーナは遠慮がちに言う。

 

 「あの、ご飯をご馳走になったのはとても感謝しますが、流石に住むところまでっていうのは、ちょっと」

 

 「それはダメよ。だって放っておいたらホテル暮らしでしょう?急な転入だし寮はしばらく空かないわよ」

 

 ホテル暮らし。え、何それ羨ましい。流石、金持ってるお嬢様は暮らしぶりからして俺達と違う。

 

 「いや、でも」

 

 「言っておくと、一週間くらいであっあれば学校側から経費として処理できるけど、それ以上は報酬から引くことになるわ。そうなると今回の報酬は全部ホテル代になっちゃうわよ?」

 

 「う、それはそうですが……」 

 

 報酬がどれだけなのかは知らないが、それが全て宿代に変わるのであれば依頼の意味が無いかと思う。仕方ないか。

 

 「……まあ、この家の主はリカ姉だ。誰が住むとか決める権利は当然、家主にあるワケだ」

 

 「うんうん」

 

 「だから、アンタが問題無い、っていうなら特に異論はないよ」

 

 「いいの?それに、その芽依さんは……」

 

 「え、私?んー、なら私も一緒に住むってのはどうかな」

 

 「えっ」

 

 リカ姉は芽依の言葉を予想していたかのように驚きもせず言う。

 

 「いいわよ~、部屋は余ってるし、芽以ちゃんのおじいさんの許可がとれれば歓迎するわ」

 

 「じゃあ、お爺ちゃんに相談してみるね!」

 

 「ええ」

 

 「ご飯食べたら部屋へ案内するわ。ずっと使ってない部屋だから掃除して、お風呂入りましょ」

 

 「なあ、もう寝るのに良い時間だと思うけど。明日は休みだしその時にやりなよ」

 

 「ん~、でも片付けないと泊まる部屋ないし……っは!まさかそれを口実に「なあエリアーナ、泊まるところ無いなら俺の部屋へ来いよ」とか言うつもりじゃ……」

 

 「おいコラ」

 

 「ふうん、レンくんそんな事考えてるんだ」

 

 「いやいやいや」

 

 これはリカ姉と芽依の悪ノリなんだろうが、慣れてないエリアーナが本気にしてないか、気になって彼女の方を見ると、

 

 「っふ、ふふ」

 

 「おい、エリアーナさん?」

 

 なんか肩を震わせておられる。

 

 「いえ、ごめんなさい。なんかおかしくって」

 

 どうやら笑っていたようだ。どうにも恥ずかしくなってエリアーナから目を反らす。

 

 「ふふ。冗談はここまでにしておいて、部屋だけど、今日のところは私の部屋で寝ましょう。それなりに広いから芽以ちゃんもどう?」

 

 「いいの?じゃあ、おじいちゃんに電話してくる。……あ、でもそれじゃあレンくんが一人になっちゃう」

 

 「確かにそうね。レンも一緒に寝る?」

 

 「いいから風呂は言って寝ろ」

 

 「「はーい」」

 

 この二人はホントに息ぴったりだな。俺をからかうことに関してだけど

 

 「あの、遠野レン」

 

 「レンでいい。いちいちフルネームは面倒だろ。別に遠野でもいいけど」

 

 「私もリーナでいいわ。レン、これからよろしくお願いします」

 

 「ああ、よろしく。リーナ」 

 

 

 

 どうやらこれから、同居人が一人に増えるようだ。

 

 「リカさーん!おじいちゃんに聞いたらここに住んでも良いって!」

 

 訂正。二人増えるようだ。

 出来れば家事とかやってほしいものである。流石にリカ姉みたいにはならんだろ。

 

 「ねえレン。何か失礼な事考えてない?」

 

 「考えてないよ」

 

 この人は、俺の心でも読めるのだろうか。

 

 「そう?そんな気がしたんけど。じゃ二人とも、まずはお風呂いくわよ」

 

 「あ、でも」

 

 エリアーナの言葉を最後まで聞く前に、さっさと風呂場の方へと行ってしまった。

 

 「あーいいよリーナ。洗い物はやっとくから」

 

 エリアーナはリカ姉の消えた方向と、台所の方を交互に見ていたので気を使って言ったのだが、芽依が余計な一言を言う。

 

 「っは!まさか「これがリーナの使った箸……ぺろぺr」痛いっ」

 

 「なあ芽依、洗い物したいか?」

 

 「お風呂いってきまーす」

 

 よほど洗い物が嫌なのか、リーナを置いてきぼりにして風呂場の方へ行ってしまう。

 

 「リーナ、芽依に付いてかないと場所分からんぞ……ってリーナ?」

 

 「……レン、貴方」


 「その目やめろ。本気にしてないか」

 

 「ふふっ、冗談よ。じゃあ改めて、これからよろしくね」

 

 「はいはい。あ、そうだ。明日は掃除とか手伝えるなら手伝ってくれ。例の依頼を進めるって言うなら別に良いけど」

 

 「自分の住む部屋だし自分でやるわ。何から何までやってもらうのは気が引けるし」

 

 「そうか。あ、悪い話し込んじゃったな、芽依もいないし、風呂場に案内するか?」

 

 「……やっぱり貴方」

 

 「いやいやいや」

 

 何度目だ、このくだり。

 ああもう、勝手にしてくれ。

 

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