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真眼の魔技師と太古の魔導書  作者: 直岩
第一章 真眼の覚醒
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第4話 魔技師が来た理由

 「リカ姉、入るぞ……ん、林田先生?」

 

 「しくしく」

 

 部屋に入ると飛び込んで来たのは、ボロボロになった林田先生と豪華な椅子に座っている理事長――柊リカーナの姿。

 

 「あら、レン、どうしたの?貴方は呼んでないと思ったのだけれど」

 

 「いや、俺は桃子さんに授業が終わったら行けって言われたから…ていうかリカ姉、この状況はなんなの?」

 

 林田先生はリカ姉の召喚した使い魔に縄で縛り上げられ、床に転がされて泣いていた。

 

 「これは制裁よ?貴方も関係してることね。あ、それと学校でリカ姉は止めなさいって言ってるじゃない」

 

 「ああ、やっぱりさっきの暴発の件か。てか呼び方はしょうがないだろ。家で敬語使えば怒るじゃんか」

 

 「当たり前じゃない。どこに家族相手に敬語を使う家があるのよ?でも学校じゃ生徒と理事長だからメリハリはつけなきゃ、ね?」

 

 家族相手に敬語を話す家なんて、探せば幾らでもあると思うが……とは言えず、仕方ないので敬語にする。

 

 「それじゃ、用が無いなら教室戻っても良いですか?」

 

 敬語を使ったらちょっと寂しそうな顔をされた。いや、どっちが正解なんだよ。

 

 リカ姉の感情と同調しているのか使い魔が林田を締め上げている縄をさらに強く締める。

 

 「あいてててて、あっ、これ以上は新しい扉が開いてしまっ」

 

 「あ、待って。桃子に行けと言われたって?じゃあ桃子に会ったのかしら?」

 

 「ええ。それと特級魔技師とかいう変な女にも」

 

 「あら。もしかして固有魔力を見られたとか?」

 

 「いや、多分直接は見られてないですかね。桃子さんが言うには彼女――エリアーナさんは俺の変な魔力を感じて練習場の方へ来たそうですし。桃子さんに言われて誤魔化しましたが」

 

 「ふうん、成る程ね。あ、待って。帰る前に一つ」


 「なんですか?」

 

 「やっぱり敬語はやめて。すごい距離を感じるわ」

 

 「……いや、あのさ」

 

 「そもそも、理事長室に一般の生徒は寄ってこないわ。ならタメ口で話しても、咎める人はいないので問題ないわ。うん」

 

 「えー、理事長がそんな事で良いのか?」

 

 「大丈夫。気にしないで」

 

 まあ、理事長がそう言うなら気にしないことにする。

 

 「そうだ。リカ姉、今日の夕飯は?」

 

 「コロッケがいい」

 

 「はいよ。あんまり遅くなるなら連絡しろよ」

 

 「はーい」

 

 「あのう、言いにくいんだけど……二人とも俺の事、忘れてないか」

 

 その後、立ち去る前に理事長室から悲鳴が聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

 ◇

 

 「ではこちらが保管庫になります。依頼の品はあちらの奥です」

 

 「ほう。色々なものがありますね」

 

 場所は変わって保管庫の中。そこは教材で使う道具や教科書等、ジャンル問わず色々なものが置かれている。だが散らかっているわけではなく、きちんと整理されていて、どこに何があるか案内版もある。

 

 「外から見た感じより、中が広いですね。これは『空間拡張』ですね」

 

 「ええ。保管庫にはよく使われる魔法です。ちょっと規模は大きいかもしれませんが」

 

 当たり障りのない会話をしつつ、奥へと進んでいくと、いくつか扉があった。その内の一つに近付き、桃子は手を扉へかざした。『解錠』と唱えると鍵の開いた音が響いた。

 

 「ではこちらの部屋の中になります」


 「結構厳重にされているのですね」

 

 その部屋の中は中心に一つ。それは箱のような、見方からすると棺のような黒いモノ。他には何もなくその存在だけが際立っていた。


 「これが何かは、さんざん調べても分かりませんでしたが、これ自体に特殊な魔法防壁が張られていますからね。人目に触れるのは避けた方がいいという判断です」

 

 「確かに何が入っているか分かりませんからね」

 

 「やっぱりこれは箱ですか?」

 

 「箱というより棺に見えますけどね。大きさを見ても、人が入っていてもおかしくはないです。まあその場合はミイラか、もしくは人外の何かでしょうね」

 

 「それで如何でしょうか?」


 ふむ、と彼女は考える素振りを見せるがすぐ回答をする。

 

 「この箱を開ける。もしくは中身を判別するでしたわね。そして中身が良くないモノであれば処分、又は討伐する」

 

 「ええ。何か出てきた場合、私や他の職員だけでは対処できないかも知れませんから。理事長はお忙しい身ですし」

 

 討伐。つまりは開けた後に魔物の類いが出てきた場合、それを処理するという事である。

 

 「では、受ける方向で話を進めましょう。報酬や期間の方は理事長室へ戻ってからいたしましょう」

 

 「ありがとう御座います。では戻りましょうか」

 

 「あの、話は変わるのですが、さっきの生徒は何だったのです?」

 

 「さっきの…?ああ、レンくんの事ですか。彼は何処にでもいる普通の男子学生ですよ」

 

 「普通の学生が私の魔法を受けて無傷でいられるわけが…」

 

 「もし、知りたいなら理事長に聞いてみてください。彼はあの人と一緒に暮らしてますから。当然私よりも詳しいです」

 

 「へぇ。そうなんですか(ねえ、ベルク!一緒に暮らしてるらしいわ、生徒と理事長が!)」

 

 「(お嬢様、興奮しないでください)」

 

 でも待って、落ち着け私。一緒に暮らしている。それはどういう事なのだろうか。親、姉弟、恋人。いずれにしても親しい間柄には違いない。


 ……その相手に「彼に魔法を直撃させたんですが無傷でした。どういう事なんでしょうか?」とか聞けるわけが無い。

 

 というかそもそも、学園の代表である理事長に生徒を攻撃したんです等、言えるわけがないのだが。

 

 「あ、それか本人に聞いてみるとかどうでしょう?初対面で結構打ち解けてたように見えましたし」

 

 「そうですね……って違いますから、打ち解けてはないですから!」

 

 でも、やっぱりあの感覚は気になる。煙たがれるのを承知で今度、話しかけてみようか。

 

 そんなエリアーナの心情をわかってなのか桃子は少し微笑んで、

 

 「ふふっ。ではエリアーナ様。戻りましょうか」

 

 「…ええ、そうしますわ」

 

 桃子に続いて保管庫を後にする。

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