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真眼の魔技師と太古の魔導書  作者: 直岩
第一章 真眼の覚醒
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第1話 かつての世界は


 ――約二千年前、かつて科学技術が繁栄し、人々が豊かな生活を送っていたとされる地球。だが突然、前触れもなく起こった異常現象により、やがて世界はその在り方を変える。

 

 最初の変化は一部の動物だった。凶暴化し羽や角が生え、その外見から【魔物】と呼ばれるようになった。

 

 そして、人は世代を重ねるごとに影響が出始める。魔法、超能力、呼び方は様々だったが、創作で出てくるような超常的な力に目覚める者達が多くいた――

 



 「――っと。さて、ここまでで何か質問はあるか?」

 


 静かな教室に響くのは、黒板にチョークで書かれる時の軽快な音と、教員である林田透はやしだとおるの声。林田が質問を促すと一人の女生徒がおずおずと手を挙げた。

 

 「お、なんだ高嶋」

 

 「あの、林田先生。質問じゃないんですけどレン、遠野君が…」 

 

 「…はあ、またか。おい、遠野(とおの)。遠野レン!」

 

 遠野レンは、高嶋と呼ばれた女生徒の隣の席だが、反応がなく机に突っ伏して寝ている。耳を澄ますと寝息が静かな教室に響いた。

 

 「……ぐう」

 

 「おいコラ、起きろ遠野レン!!」

 

 「……すやすや」

 

 林田の声は一度目より大きな声だったがまるで反応が無い。

 

 「もう。ちょっと、レン君。起きなよ、また怒られるよ?」

 

 この後に起こるであろう事態を心配してか、女生徒――高嶋芽依(たかしまめい)はレンの肩を揺さぶって起こそうとするが…

 

 「…すぴー」

 

 「……ふう。あの先生。だめです起きません」

 

 芽依はちょっと考えて、まぁいつもの事だからいいかぁ。と早々に起こすのを諦め、席をレンの隣から離れるように移動する。

 

 「よし…《ショックブラスト》!」

 

 林田の手の平に複雑な模様が浮き出たかと思うと、一瞬だけ強い光を発した。その瞬間、何かが高速でレンの元へと――


 「はぐあっ!?へ、あ?何事!?」

 

 直撃した。

 

 「おう。目が覚めたか遠野?」

 

 「…うわぁ。むしろ永眠しそうだねレン君」

 

 「いや、芽依、ドン引きしながら変な事を隣でボソッと言わないで。ちゃんと生きてるし」

 

 「うんうん。知ってる」

 

 「………」

 

 「起きたな。おい、遠野。そんなに俺の授業はつまらんか?」

 

 「え、それを俺の口から言わせるんですか?」

 

 嫌味ったらしく林田は聞いてみるが当の本人はキョトンとした顔で返した。

 

 「…こ、こいつ」

 

 「あ、先生の授業がつまらんとは言ってないですよ?でも、内容が俺にとっては二回目ですし、この先も似た内容を何度も反復するじゃないですか」

 

 「はあ…分かったから、せめて寝るな。この辺の基礎知識は魔技師だろうが、魔法騎士や他の職業だろうが、必ず知ってなきゃいけない所なんだから、その授業で寝てる生徒がいるとなると、後で俺が怒られるからな」

 

 要するに俺が怒られるから寝るなと。とんでもないことを生徒に言う先生だ。


 「先生がそんな発言して良いでんすか?」

 

 「というか他の新入生に比べたらの話だ。お前には別に教えんでも問題ないだろうが」

 

 「まあ、問題ないですが。そうだ……ならこの辺の座学の時は外で魔法の練習したいんですが」

 

 まあ無理だろうなと適当な提案をしてみた。また怒られるかなぁと、身構えていたら意外な答えが返ってきた。

 

 「……ふむ。確かに筆記は、お前いつも満点だしなあ。確かに意味がないと言えばそうなんだが…はあ、分かった。なら行って良いぞ。(むしろ邪魔だしな)」

 

 「ほお。マジですか。人に向けてあんな中級魔法ぶっぱなすから、酷い先生かと思ってたけど話の分かる先生ですね。あと邪魔って言ったのは聞こえてるんですがね」

 

 「やかましい。お前じゃなきゃ寝てても撃たんわ。……だから他の奴らはそんなに身構えるんじゃない。本当だ」


 よく見ると周りの生徒は引いている様子である。

 

 「ぷぷっ。日頃、ぼこぼこ俺に撃つもんだから、周りには逆らってはいけない先生ランキングトップに飾られ『ショックブラストォォ』っはぐああ!?」

 

 「全部お前のせいだろうが!さっさと行け!……あ、おい。行くならちゃんと第4練習場使えよ」

 

 「……ちょっと流石に酷くないですかね。イヤもうこれ体罰じゃ、いえ行きますので手の平をこっち向けんな」

 

 その光景を見た、他の生徒は顔にこそ出さないが、うわぁやべえよ。噂通りの先生だよ。逆らったり授業で寝たら殺されるよ。と恐怖していた。

 

 レンはというと落書きだらけの教科書を片付けてそそくさ教室を出ていく。

 

 「はあ、行ったか。じゃあ授業を再開するぞ。ん?なんだ前ら、そんなに背筋伸ばして」

 

 「「「なんでもありません」」」

 

 「お、おう。そうか?じゃあさっきの続きから―」

 

 授業を再開しようと、黒板に向かおうとした時、手が挙がった。

 

 「あの、先生。一つ聞きたいんですが」

 

 「ん?なんだ一ノ瀬」

 

 彼女は一ノ瀬静(いちのせしずか)このクラスの頼れる委員長である。

 

 「彼の事なんですが。なぜあんなに特別扱いなのでしょうか。噂は良く聞きますが本当かどうか信憑性が薄いもので」

 

 静は質問しながら考えるのは遠野レンの事。私が入学した当時は、それ程目立たず大人しかったように思えるが、しばらくすると上級生がよく遊びに来たり、あろうことか授業中に寝たり、今みたいに途中で退席したりと、他の生徒が行えば罰される内容を平気でする。だが、あんまり怒られて無い。

 

 うん?……いやでも待って。よく中級や上級魔法撃たれてる……あれ、もしかして私達よりキツイ罰を受けてるような。

 

 「…遠野の事ねえ。確かにちゃんと説明したことは無かったな。じゃあまず一つ。あいつは二年目だ」

 

 「ああ、やっぱり二年目なんですね。でも、あり得るんですか?だって二年の進級条件て確か…」

 

 「ああ、『魔法を一つ制御して使えること』だな。まだ君達は入学して一ヶ月目だから魔法を使えない者が殆どだが、後二ヶ月もすれば初級魔法の一つでも簡単に使えるようになる。だからあいつ以外は基本的に皆進級できる」

 

 「そう、ですよね。なら何か問題を起こしたということなのでしょうか?」

 

 「いや、アイツは今でこそああだが一年前は、真面目で成績は魔技以外は常にトップだったし無遅刻、欠席なしの皆勤賞だったよ」

 

 「え、あの不真面目の塊と言うべき人が?イマイチ信じられませんが、なら何故?」

 

 「言ったろ。進級条件。『魔法を一つ制御して使えること』だ。遠野は魔法は使えないことも無いが制御が出来てなくてな。発動しないか、とてつもない威力の魔法が出てくるかだ」

 

 「とてつもない威力?それってどんな――っ!?」

 

 ずがあああん!!!

 

 突然、とてつもない爆発音が聞こえたかと思うと振動が遅れて襲ってきた。教室にいる生徒は誰もが魔物の襲撃を予想して身構える。

 

 「おお、早速使ってんのか。この音と振動からすると、まだまだ全然制御出来てねえな。というか授業中は大きいのは撃たんように言っておくか。はあ、ちょっとこれは怒られそうだなぁ」


 これがもし、彼の放った魔法としたならば。


 「あの。これ、制御出来るんですか?練習場からここまで響くってそんな威力の魔法なんて…」


 「まあ、使えないだけなら他のクラスに異動でも、退学でも良いんだが、威力が威力だからこのまま世に放つわけにも行かなくてな」


 確かにこれでは学園も無責任に放り投げられ無いのかもしれない。


 「な、成る程。一応納得出来ました」


 「今のところ、人に危害を加えてないが、ヤツを魔法が制御出来ないからとバカにしたり嫌がらせしてると今の食らうかも知れんから気を付けろよ?」

 

 この瞬間、クラスの生徒達は満場一致で遠野レンをバカにするのは止めようと心に誓った。そんな中、他の生徒より関わりがある高嶋芽依は小さな声で呟く。

 

 「うわぁ…レン君が、なんか猛獣扱いされてる。うん。後でレン君に報告しとこうっと」


 「おいコラ、高嶋。聞こえてるからな?」

 

 静かな教室だったので小さい声は意味が無かったらしい。彼女は誤魔化すように第4練習場のある方を見た。

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