英雄のカタチ
ゴブリンの死体の山の上に僕は立っていた。
「(大進行って割とステータス値稼げるね……)」
そうなのだ。途中からウロボロスを発動したにもかかわらず、ステータスがそれぞれ500近く上がったのだ。魔物にもよるが魔物のステータスは人間と違うのだ。
比喩するなら、コップの大きさが違うみたいなものだ。
例えば、人間のステータスの1を普通のコップだとしよう。このゴブリンのステータスの1はペットボトルのキャップだ。いくらゴブリン自身のステータスが高くてもそのステータスが人間に行けばコップいっぱいになるのにとんでもない数のゴブリンが必要だ。
ちなみにこの比喩はジークさん譲りだ。ペットボトルのキャップっていうのはコップの10分の1入るか入らないかくらいの大きさと言っていた。飲み物を飲みには不便すぎるでしょうに。
「ね、ねぇ貴方……本当ににハルトなの?」
エヴァが声をかけて来た。ここに来る途中に【ウロボロス】が前の僕の記憶を見せてくれた。内容はエヴァと村長たちの行為だ。
にしてもどうやって返そうかな……ジークさんとしか会話してる記憶がないからなぁ……
「そうだけど、そうじゃない」
「えっと……どういうこと?」
やっぱりそうなるよね……なんて説明したらいいんだろうか……
「……僕は記憶が、ないから、アインハルトには、なれない。だから、そうだけど、そうじゃない」
「じゃあハルトは……貴方はハルトと同じ顔してるだけの別人ってこと」
「そう」
長く喋ることに慣れてないからしどろもどろになっちゃったんだけど伝わったっぽい。
「エヴァ!! 大丈夫か!!」
「あ、村長!!」
「エヴァ!! ……誰だ君は?」
「…………その毒の塗られた、短剣を捨てろ」
「え?」
「ちっ……」
ちょうど村長が駆け寄って来た。この野郎、エヴァに気安く抱きつこうとするな。見えてるからな。
村長が僕とエヴァから距離を取る。そして、短剣を地面に投げ捨てる。
実際に見なくても、エヴァの顔がみるみる真っ青に変わるのがわかる。
「エヴァ、しゃがんで」
「え? っ!」
エヴァの首をめがけて後ろから片手剣が迫っているのを気配で感じ取って、エヴァに指示を出す。
エヴァがすぐに行動をしてくれたおかげで、片手剣は空を斬る。
だが、僕は空を斬るなんて真似はしない。的確に【ウロボロス】の短剣で片手剣を持っていた男の手首を斬り落とす。
「ぐっがああああああ」
「次、死にたい奴から、こい」
「いでぇよ……いでぇよ……」
「うるさい」
僕は男の心臓に短剣を突き立て、さらに靴の底で後押しする。血なんて吹き出る間も無く、男は生き絶えた。
「き、貴様何者だ!?」
村長が声を張り上げる。だけどこんな奴に名乗るなんて勿体ない。
「3人」
「え?」
「3人の命か、お前の両腕、差し出せ」
「そ、そんなことをするバカがおるか!! お前らやってしまえ!!」
いつのまにか僕たちを取り囲んでいた男たちが一斉に飛びかかる。僕は魔力糸を発現させ、男たちの足に巻きつける。不可視の束縛だし、当然男たちは転ぶ。
今は短剣に括り付けてないので僕の手で1人1人潰していくことになるけど、しょうがないかな。
とりあえず、両腕切り落とせばいいよね。
「【ウロボロス】、こいつらの両腕を奪え」
命令を下した瞬間、僕の両手の平と両肩から勢いよくおよそ20匹程度の真っ黒な蛇が飛び出る。
蛇たちは地面に倒れている男たちの両腕に巻きついてから締め付けて腕を引き千切ったり、肥大化して食ったりとかなかなかエグいことをしている。
「お前が腕、出さないから、こいつら全員腕、なくした」
「ひぃ!! 頼む!! なんでもするから!! 命だけは!!」
「うるさい」
「ひぃ!!」
短剣を村長の顔の真横に投げつけただけだが、想像以上に怖がってるな。あれ、この気配は……
「我らはペンドラゴン聖騎士団!! この蛇よりこの村が殺戮、または子供の奴隷売買をしたとの報告を受けた!! この蛇の主は姿を現せ!!」
「僕だ」
テカテカの鎧を着込んだ聖騎士と足元にいる真っ黒な蛇。うん。【ウロボロス】だ。
来る途中で【ウロボロス】を王都に飛ばして、聖騎士団を呼んでおいた。犯罪者にだけはなっちゃいけないってジークさんに言われてるから、一応だったけど到着早すぎじゃないかな
あ、【ウロボロス】が僕の肩に登ってきた。
「本当に君がその蛇の主なのか……その蛇、王都では誰にも近づこうとせず、紙に文字を書いて要件を伝えてくれたのだ」
「とりあえず、エヴァを保護して」
「あ、あぁ。年の割になかなか図太い神経をしてるじゃないか青年」
聖騎士さんは配下の騎士に指示を出してエヴァに色々聞いている。
「さて、村長さん。成人していない子供の奴隷売買をしていたっていうのは本当の話かい?」
「ちっ違う!! わしはただ……」
グダグダと言い訳ばっかり並べて……腹たつな……
「村長、本当のこと、言え」
「ひぃ!!」
「言わなければ、殺す」
『シャーッ!!』
両肩あたりから【ウロボロス】を5匹程度出して、威圧する。
珍しく【ウロボロス】も威嚇している。空気の読めるスキルだね。
「ひぃ!! 9年ほど前にあの娘の父ともう1人行方不明になったアインハルトという子の両親を殺しました!! アインハルトとエヴァを売り払うためです!!」
「これだから辺境の村は……」
「………………」
僕がアインハルトだとはまだ気づいていないみたいだ。
ここまで来て気づかないのもなかなかすごいと思うんだ。
「とりあえず、王都まで連行する。おい、こいつを拘束し、この村の住人の保護を開始しろ。あとはここに転がってる両腕のない男共も、足を縛って連行しろ。兄ちゃんはちょっと来てくれ」
「はっ」
「?」
何を話すつもりだろう?
ようやくアイクくんが一歩を踏み出しました!!
投稿は最近いい感じに続けれてるぞぉ!




