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97話 ちょっと運命を感じないかい?


「やぁ!またあったね!」



………………

ボコボコに顔面を腫らせた偽酔拳少年が

偶然会ったかのような素振りで

俺に話しかける。



「なぁ、お前…偶然会った風に

話しかけて来てるが

さすがに無理がないか?

そういうの

ストーカーって言うんだぜ?」



今、少年と鉢合わせした場所は

俺とラニカが一緒に

泊まった3階建の宿の部屋の前だ。

しかも朝イチで……


偶然同じ宿に泊まって朝っぱらから

ドアを開けた瞬間に

偶然廊下で鉢合わせする…

どれだけ確率が低い…?



「いやいや!僕は数ヶ月前から

この宿の常連なんだよ

常連だから格安で泊めてもらえるし!」


「格安?ここの宿は常連になったら

格安で泊まれんのか?」



「ちょっと個性的な部屋だけどね……」


偽酔拳少年は廊下の窓の外に見える

ちょっとした広場に指を指す。

広場にあるボロボロのベンチの上には

かろうじてボロボロの屋根がある…



「通常の半額以下の価格で

屋根付きのベンチに泊まれる!

宿の敷地内だから

野宿よりも物を奪われにくい!

何より屋根があるのがいいよ!」



ガシャンッ!!!



…………ゴドンッ!





さっき少年が指を指していた

ベンチの屋根が崩れ落ちる…

おそらく、老朽化の影響だろう。



…………………

少年はしばらく沈黙しながら

壊れたベンチを眺める…。



「ま、まぁ!

ちょっとあの個性的な部屋から

離れるのが遅かったら死んでたけど

冒険者は常に危険と隣り合わせだし…。

あ、あの部屋も価格の事を考えると

悪くなかったよ!」



………………

「もういい…それ以上喋るな。」



俺は金貨の入った袋を少年に渡した。


金はルナディナから腐る程貰ってる

この程度、渡しても問題無い。



「え?な、何だい?この袋…?」



「喋るなって言ったろ?

今から俺の言う事を黙って聞け!」


少年は真顔になって唾を飲む…。


「もし、お前が普通のナンパ野郎なら

このままお前をぶん殴って

退治するだけで済むだろう…。

だが、お前は普通のナンパ野郎じゃなくて

イカれたナンパ野郎だ!

しつこく付きまとってくる上に

自分の命の管理すら出来ない!

昨日からお前

俺の前で3回死にかけてるぞ!?

このまま目の前で

死なれたら気分が悪い!!

冒険者なんか辞めて

この金で実家に帰って畑でも耕してろ!」



……………

「な、何で僕の実家が

農家ってわかったんだい!!??」



「そこは問題じゃない!!

とりあえず黙ってこれを受け取って帰れ!

そして2度と俺に話しかけるな!!

今度は伝言じゃなくて

直に言ってやったぞ!!」



………………………

黙って少年はうつむく…




「アミネラちゃん?」



ヤッバっ!!?



部屋で寝て居た

ラニカが目を覚ましたみたいだ!?





ドカッ!!



「ぐふっ!!」




ちょうど開いていた窓に向かって

少年を殴り飛ばした。



少年はクルクルと回転しながら

3階から広場に落ちて行くが

着地の際にダークネス・アンノウンで

クッションを作ってやったから

死にはしないだろう。



「ごめんね〜♡

さっき大声出してる人が居て

私がドアを開けちゃったから

目が覚めちゃった?♡」



ぷりてぃーな喋り方モードに切り替えて

ラニカの元へ行く。



「凄くワイルドでカッコいい

女の子の声がだったね?

先輩の冒険者さんかな?」



お、俺の声って…ワイルドなのか……?


「そ、そうね〜♡

きっと先輩冒険者さんよ♡」



ガチャッ!




となりの部屋のドアが開けて

ジアータが出て来た。



「おはよう。

さっきワイルドな声が聞こえたけど

何かあったのか?」



「おはよう!ジアータ君!

わかんないけど

いい感じにワイルドな声だったねー!」



2人ともワイルドを連呼しているが

俺の声はそんなにワイルドなのか!?


いや、そんな事よりも

これ以上この話が広がると

あとあと面倒な事になるかもしれないな…

上手く話をそらすか…


「起きて早速だけど♡

朝食を済ませたら早めに

冒険者ギルドに行った方がいいと思うの♡

早めに行かないと

朝でも混むんですって♡」



「確かにそうだな…

早めに冒険者ギルドに向かおう。」



「朝ごはんどこで食べる?」


ラニカが腹を鳴らす。



「ちゃんと用意してるわよ♡

昨日の夜にサンドイッチを

3人分作っておいたの♡」



サンドイッチなんてガラに合わねぇが

楽に作れる朝食だから作った。

中身は魔物の肉だけど…。



「わぁー!アミネラちゃん!家庭的!」



「わざわざありがとう。

じゃあ、俺も1ついただくよ。」



「ええ♡どうぞ♡」



ジアータがサンドイッチを口に運ぶ…



「うぐぅ!!!」



ジアータは顔を青くして

トイレに駆け込んだ……。




「ジアータ君、体調悪いのかなぁ?」



ラニカは平気な顔をして

サンドイッチを食べている。

俺が作ったサンドイッチが

原因では無いみたいだ。



「ジアータ君?♡大丈夫?♡」




……………

「あ、ああ…問題無い…

ぼ、冒険者ギルドに向かおう…。」



ドアを開けて出てきたジアータは

真っ青な顔だが、本人が問題無いと

言っているなら問題無いのだろう。





そのまま3人で

冒険者ギルドに向かった…



「昨日より依頼がいっぱいあるね〜!

どれを受ける?」



ラニカは壁一面に貼ってある

依頼書を見ながら選んでいる…


どれを受けようか…

ラニカとジアータがついて行けるレベルで

殴り甲斐のあるガタイの

いい魔物を狩りたい…

昨日は超初心者向けの依頼を受けたが

空気を殴っている気分だった…


………………

「ラニカちゃん?♡

これとかどうかしら?♡」


俺はちょうど良さそうな

依頼書に指を指す。



…………

「コンブコングの討伐…?」



コンブコング…その名の通り

全身からコンブが生えたゴリラの魔物だ。

頭がちょっと出るくらいの

浅い海辺で常にゆらゆら波に揺られ続けて

体が鈍っているため、

戦闘能力は見た目より低い。


ちなみに体から生えているコンブは

かなり美味でそこそこの

高級食材に指定されている。

ただ、あくまでそこそこだ…。



「おい!テメェもコンブコング討伐か?」



後ろから汚らしい声が聞こえた…

この声は……



「俺のセクシーノーズをビッグノーズに

変えたテメェが

俺と同じ依頼を受けんのかよ?」



偽酔拳少年を蹴り飛ばした大男…

俺が鼻を拡張してやった事を

まだ根に持ってやがるみたいだ……。


「本当でい!この女!この前の!!」



後ろには部下達が大勢いるようだ。



「アミネラちゃん?

この怖い人達知り合い?」



ラニカが心配そうに俺の顔を覗き込む。



面倒クセェ展開になったぜ……

こいつらをここでボコるのは簡単だ…

だが、ラニカ達が確実に引くぞ……



どうするか………



「あらあらあら〜♡

どちら様でしょうかぁ〜♡」



大男とその部下達は

目を見開いてキョトンとする。



…………

「お、お前!あの女の双子か何かか!?」



都合のいい勘違いをしてくれたな…

まぁ、そういう事でいいか…



「あら♡姉の知り合いなんですか〜?♡」



「テメェが妹か!なら早くあのクソ女を

ここに呼び出しやがれ!

さもなければ……」


大男は拳をゴキゴキならす…


さもなければって…お前が俺に

何か出来るわけがねぇんだよ…




「きゃー!!!!」



突然、ラニカが冒険者ギルドの入り口に

向かって指を指して悲鳴をあげる。


入り口にはジアータが倒れていた。


「ジアータ君!!」



俺とラニカはジアータに駆け寄る。

ジアータの顔は真っ青だ。



「アミネラ…ラニカ……

俺はもう今日は無理みたいだ…。」



ガクッ!



ジアータはそのまま気絶する。


ジアータの存在をしばらく忘れていて

少し申し訳ないと思ったが

忘れていたものは仕方ない。



「残念だけど今日は依頼を受けるのは

辞めてジアータ君を

休ませましょう…?♡」


ラニカに提案する。

まぁ、あの大男と依頼先が被るのも

嫌だし、他の依頼には

特に受けたいものは無かった…。



「そうだね…休ませないとね…」



ラニカが少し残念そうに返事をする。

よっぽど依頼を受けたかったんだろう…。



「ちょっと!そこのお二人!!」



声のした方向に振り向く



「どうか!コンブコングの依頼を

受けてもらえませんか!?」


普段は受付にいるお姉さんが

駆け寄ってきた。



「え?何でですか?」



ラニカが理由を尋ねる。



「コンブコングの依頼は最近

あのビッグノーズさん達がよく受けていて

嫌がる方が多くて、ほとんど

誰も受けてくれなくなっているんです…

そちらの方は私達が看病致します!

ですので!どうかお願いできますか!?」



お姉さんは涙目でお願いしてくる…



「アミネラちゃん…

人助けだと思って

やっぱり受けてみる…?」



ラニカは口調は明るくないが

キラキラした表情で俺を見つめる。


ビッグノーズが居るのは気に入らないが…

仕方がねぇな…



「は〜い♡それなら

受けさせていただきまぁーす♡」



「ありがとうございます!

報酬は通常より多くします!

あと!もう1人受けてくれた方が居て

その方とご一緒していただいても

よろしいでしょうか?」



もう1人?…他にも物好きがいるんだな……。


ラニカは特に問題無いと表情で語っている…

いや、むしろ楽しみで

仕方ないという表情だ。



「はい♡よろこんで!♡」



「ありがとうございます!

では!約5時間後に現地集合と

伝えておきますので

よろしくお願い致します!」


お姉さんは笑顔で受付に戻って行った。









………

5時間後……馬車で海辺に着き

コンブコング達を遠くから眺める。



「あの女の妹を人質にして

おびき寄せる作戦で行くぞ…」



俺とラニカからちょっと離れた位置で

ビッグノーズとその部下達は

作戦会議をしている。


丸聞こえだっつぅの…



やっぱくるんじゃ無かった……


いや、あいつらは今はどうでもいいんだ…

別に何されてもぶっ飛ばせば問題ない。



「やぁ!またあったね!

まさか一緒に組めるとは!

ちょっと運命を感じないかい?」



何故……俺達の隣に

偽酔拳少年がいるのだろうか…


これがもし推理小説なら誰も解くことが

出来ない超名作になるかもしれない…

だが、これは小説ではなく

現実だ…何故か現実なんだ…。



「運命?…感じる感じる!

よくわかんないけど!

よろしくね!マロニム君!」



笑顔で少年に挨拶するラニカ……





はぁ、まだこれならババアと旅してる方が

よかったのかもしれないな……。

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