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93話 幸せな月末



2年前…………




「わっひゃぁ!!ラーニアたん!

ルヴィネ様はズゴイんでずよぉ!!」




私が物心つく前から

母のセリフの8割は『わっひゃぁ!』と

『ルヴィネ様』だった……。




親は2人共魔法使い。

父は魔法学校の教師で

母は上位冒険者のパートナー。

そこそこ裕福でかなり恵まれた

環境に生まれたと思う。




ただ、友達と言える存在が居なかった…


近所に私と同じくらいの子供は

沢山居たが、誰も私と

仲良くしようとはしなかった…。


ほとんどの子は親に

『あの子の母親は異常だから

あの子には関わっちゃダメ。

父親も常にお尻から

血が出てるからヤバい…

ついでに母親と名前が

一文字違いでややこしい。』と

教えられていたらしい…。


別に周りの子達は悪く無い…

私も同じ事を親に言われれば

同じ事をしていただろう…。



両親を恨むわけでは無い。


母はただ、ルヴィネ様という

人が物凄く好きなだけ…。


父はお尻が弱いだけ…。



それに友達が居ない事は気にしてない…


毎日、母が楽しそうに話す

ルヴィネ様とのエピソードを聞き…


お尻の弱い父の為に

定期的にドーナツ型座布団を

入れ替えてあげる。



私は、ただそれだけで幸せだった…


それ以外は何も欲しい物はない…


ずっとそう思っていた…。





そんなある日……



その日も私はいつも通り

ドーナツ型座布団を父に運びながら

母からルヴィネ様の話を聞く。



でも、1つだけいつもと違う事が

あった………。




コンッコンッコンッ!




ドアノックの音が響きのいいリズムで

聞こえて来た…



「ニートルさん!

ラーテアちゃん!久しぶり!」




金髪の女の人が家のドアの

前に立っていて

両親の名前を呼んだ。



「ルヴィネ様ぁ!!

お久しぶりでずぅ!!」



母がいつもより高いテンションで

ルヴィネ様の名前を口にする。




この人がルヴィネ様……

なんだか

イメージとちょっと違う…


いや、今はプライベートだからだろうか

鎧を着てない為、見た目だけ見ると

ごく稀にいる美人な村人…?

の様に見える。


大人の女性にしてはやや小柄で

とても強い冒険者には見えなかった…



「キャメッションから

ラーテアちゃん達の話を

聞いて来ちゃったぜ!

その子がラーニアちゃん?」




「ハィィ!ルヴィネ様ぁ!

むずめのラーニアでずぅ!!

4ざいでずぅ!!」



「4歳!うちのミローナと同い年だ!」




へぇ…同い年……

まぁ、親同士が仲がいいから

きっとそのミローナって子とは

友達になるなりなんなり

絡む事になるんだろうけど


住んでる場所も近くは無いみたいだし

そんなに仲良くはならないだろうな…

だってたまに会うだけの

子の事なんかお互いすぐに

忘れちゃうもの…

子供ってみんなそう…


少なくとも近所の子達は……。




「ミローナ!木になんか

登らずにこっちに来いよ〜!」



ルヴィネ様の視線の先は

庭に植えてある10m程の木だ…

木の上の方が軽く左右に揺れている



ガサッ…ガサッガサッ!!




「あっ」



ドスンッ!!




あっと言う声と共に小さな女の子が

木の上から落ちた。




「わっわわわっひゃぁ!!!!

ミローナぢゃんっ!!!

だだだだだ大丈夫でずがぁ!!??」



母が顔を青くしながら

女の子の元にかけよる。



「うん!大丈夫!」



女の子は元気に立ち上がり返事をする。


髪はルヴィネ様より少し濃い金髪で

ボサボサだけど、ふわふわで

触り心地が良さそう。

遊んでて汚れたであろう

所々土のついた白いワンピースが

ゆらゆら風で揺れている。


そして頭からは2本の小さなツノが

生えてい……


……………………

なわけないか…多分何かの飾り。



「まぁ、このくらいの高さなら

大丈夫だよな!

ミローナ!ラーテアちゃんと

ラーニアちゃんに挨拶だぜ!」



ルヴィネ様が女の子の服に

ついた土をはらう。



「ラーニアお姉さん

こんにちは!」


女の子が母に挨拶する。



…………………

「ごんにぢわでずぅ!!」


母がちょっと間を

置いてから挨拶を返す。




てってって




次に女の子が私に近づく



「こんにちは!ラーテアちゃん!

私はミローナ!

これ!どんぐり!!あげる!」



ミローナちゃんが実が熟して

落ちる直前であろう

どんぐりを両手いっぱいに渡してきた。



「え?…これって……」



うちの庭の木になっている

どんぐり……



「わ、私の為に…

木に登ってどんぐりを

取ってくれたの?」



「うん!どんぐり取ったよ!!」




ミローナちゃんは

満面の笑みを浮かべる。




…………………………




て………天…………使……





天使…………。



私の目の前にいる

笑顔の少女は可愛らしく美しい

天使にしか見えなかった…



何故だろうか…ただの庭にある

どんぐりが、この世のどんな

金品財宝より美しく…

価値のある物になった気がする…

別にどんぐりが欲しかった

わけでは無い…

ただ…何故かそのどんぐりは

そう見えた……。



「ラーテアちゃんは

どんぐり好き?」



目の前の天使が首をかしげながら

私に問いかけて来た。



………………


「うん!好き!大好き!!」



私は手に持ったどんぐりを

ぎゅっと大事に握りしめる…



だってこのどんぐりは初めての友達…


いや、天使が私に

授けてくれた物なのだから…



天使が私の名前を地味に

母と間違えてる事なんて

一切気にならない程

私は心を奪われてしまった…。




それから私はしばらく

ミローナちゃんと近くの

広場で遊んで楽しい

時間はあっと言う間に過ぎてしまい

夕方になる……


「ラーニアちゃんありがとう!

今日は楽しかった!」


「ミ、ミローナちゃん…。」



「どうしたの?」



「また……

また一緒に遊んでくれる?」



「うん!!」



ミローナちゃんは頭を

大きく縦に振る。



「ミローナ〜帰るぜー!」



ちょっと離れた位置から

ルヴィネ様がこっちに

向かって手を振る。


「はーい!

ラーニアちゃん!またね!

ばいばーい!」


ミローナちゃんが私に

手を振ってからルヴィネ様の

ところに走って行く。




「お二人ども!わざわざ

あぞびに来てぐれで

ありがどうございまずだ〜!

おぎをづげでー!!」



私は母と一緒に遠く離れて

小さくなったルヴィネ様と

ミローナちゃんの背中を見送った……。







…………………

それから数日後…

私は母に頼み込んで

毎月月末にミローナちゃんの

所に連れて行ってもらえる事になった。


ミローナちゃんも私と遊びたいと

言ってくれたみたいで

ルヴィネ様も毎月月末は

予定を空けてくれたらしい。

遊ぶ場所はバラバラ

景色のいい山や浅瀬の川…

たまにちょっとした観光地にも

連れて行ってもらった。



まぁ、場所なんてどこでもよかった。

私にとって月末は天使と会える日…

ただそれだけで幸せ。


他の日は月末を迎えるために

生きてると言ってもいい。



そんなある月末の日に

ミローナちゃんが住んでいる村に

連れて行ってもらった。



村につくと意外に小さな村だったが

1つだけ異様に大きな家があった…。


「いらっしゃい〜

ラーテアちゃん!ラーニアちゃん!」



「こんにちは!ラーテアお姉さん!

ラーニアちゃん!」



ルヴィネ様とミローナちゃんが

大きな家の中から

出て来て迎えてくれた。



「ルヴィネ様ぁ!

ごんにぢわでずぅ!

ルヴィネ様の家また招いで

いだだげるなんで!

じあわせでずぅ!」



「ラーテアちゃんは大げさだなぁ。

おーい!みのたーん!

出て来いよ〜!」





家の中の奥の方から

巨大なツノだけが見えた…



「い、いつも妻と娘が

お世話になってます…

こんな形でお出迎えして

すいません…。」



ちょ、ちょっと変わった男性の声?

が聞こえて来た……




…………………

「あー、ちょっとさ

慣れると大丈夫なんだけど

みのたんの事初めて見る子供は

だいたい泣くから気使ってる

みたいだなぁ…

私も1番最初は泣きかけ…」




しょぼ〜ん………………



巨大なツノが垂れ下がったかのように

錯覚する程しょんぼりした空気を

家の奥の方から感じた……




「い、いや!泣く程カッコよかったよ!

もう、みのたん大好き!!」



ルヴィネ様が目にも見えない

超スピードでツノの方に走って行った…




「ちょ、ちょっとルヴィネ!?

お客さんが居るのに

抱きつくのはちょっと!?」




巨大なツノの持ち主は

めちゃくちゃ戸惑ってるようだ…。



「み、みのだんざん!!

羨まじずぎまず!!!

わ、わだずもルヴィネ様ど!!

ハグを!!!」




母も家の中に走って行った…。



この時あの中に躊躇なく

乱入しようとする母のルヴィネ様愛は

本物だと言う事を私は再確認した……。





ぐいっぐいっ……



私の手を

滑らかな肌触りの可愛らしい手が

軽く引っ張る。



「ラーニアちゃん!あそぼ!」



ツノが生えた天使はニコッと微笑む。



「う、うん!遊ぼう!」



いつもの私なら絶対に出さないで

あろう元気な声で応えた。

今この瞬間…1ヶ月ぶりに天使に

会えた事に歓喜しながら…


自分が今どんな顔でにやけて

しまってるかわからない。



「どこで遊ぶ?楽しいところ

いっぱいあるよ!

山に川!!それとね……

えーっと……川!!」



ミローナちゃんとなら何処でも

良いんだけど

ミローナちゃん的には若干

川推しなのかな?



「川にする?」




「うん!」




ミローナちゃんは大きく頷いてから

私の手を握って川に案内してくれる…




はずだった……。



「お主ら何処に行くんじゃ?」



突然私の後ろから

子供の声が聞こえて振り向く。



そこには私達と同じくらいの歳の

女の子が居た。

青く澄んだ瞳に銀髪のロングヘア

かなり落ち着いた雰囲気の子…。


この村には私達と同じくらいの

子供が居ないって聞いてだけど

となり村の子供?



「川に行くの!」



ミローナちゃんが元気に答える。

どうやらミローナちゃんと

知り合いっぽい?



…………………

「じゃあ、妾も行くのじゃ!」



「うん!いいよ!」




「ええ!??」



つい、大声を出してしまった…。



「どうしたの?ラーニアちゃん?」



「え、いや…その子…

ミローナちゃんのお友達?」



「違うよ〜。」




「じゃ、じゃあ…お姉さん?

もしかして妹さん?……」




「違うよ〜。」




「え?……じゃあ誰?」



………………………

「妾はミローナの家族じゃよ。」



え……………?



「うん!家族だね!」



ミローナちゃんがさっきまで

私に向けていた天使の微笑みを

銀髪の女の子にも向ける…。



「そ、そうなんだ……家族…。」



友達でも無い…姉妹でも無い家族…

いったいこの子…

ミローナちゃんの何なの…?



その日はミローナちゃんと

会って遊べたから

幸せな時間ではあった…。


でもいつもの月末に比べると

幸せでは無かった……


あの銀髪の女が一緒に居たからだ…

何なのあの女は……

もしかして、私よりあの女は

ミローナちゃんと親しいの?


………………

いや、そんな事あるわけない…






そして私はあれから何回か幸せな

月末をミローナちゃんと過ごしたが

あの女が何なのかは聞かなかった…


いや、聞けなかった…

ミローナちゃんの家族……

その先の細かい事を聞く

勇気は無かった……。








やがて2年の月日が経ち…

ミローナちゃんが魔法学校に通うと

聞いて喜んだ

私もそこに通う予定だったからだ。


魔法使いの両親を持つ私は

当然マジシャンコースに

行く予定だったけど


ミローナちゃんは

ウォーリアコースに行く予定だった…

私はウォーリアコースに

行きたいと両親に頼んだ…


両親は意外と簡単にウォーリアコースに

行く事を了承してくれた。


マジシャンコースの新入生の担当は

教師である父だから

娘としては気まずいのだろうと

解釈してくれたみたいだ。




それに私の魔法は

もうすでに発現しているんだが

その特性的にも魔導より

格闘を鍛えた方が良さそうな能力だ。


まだ、誰にも私の魔法の事は

教えて無い…

特殊魔法型の魔法使いは

他人にその能力が知られると

弱点を見抜かれやすくなり、

戦った時に勝率がグッと下がると

昔、父が言っていたからだ…


つまり誰にも言わずに

能力がバレる前に

最初の一撃で相手を再起不能にする

知識と鍛錬を積めば

私は最強となる。


将来最強になる事が出来れば

私がミローナちゃんといる時間を

邪魔する人間を全て消せる。


家や学校にある魔導書を読めば

1人でも魔法を

鍛える事は出来る。


私の魔法の事は両親どころか

ミローナちゃんにも話してない…

いや、聞かれてないから話してない。




そして入学式……


ミローナちゃんが少し

遅刻してドラゴンの背に乗って

式場に降りたった時…


私は歓喜に溢れながら

周りの生徒をかき分けて

ミローナちゃんに近づく…



「ミローナちゃーん!」



私はミローナちゃんに向けて

手を大きく振る。



「あ、ラーニアちゃん!」




…………!!!???



ミローナちゃんの隣にあの女がいた…


銀髪の女だ………。



一気に体の力が抜けて

私は人混みの中に埋もれて行った……。




それから毎日……

ミローナちゃんと学園内で

一緒に授業を受けてお弁当を

食べて遊んで幸せな日々が続く…



…………

はずだった………

ミローナちゃんと一緒に居るのに

全然幸せじゃない!!!


いつもあのディナディナとか言う

白髪女がミローナちゃんと一緒に

居るからだ!!!!


このままじゃダメ!

私…壊れちゃう………




あの女を早く

消さないと壊れちゃうっ!!!



唯一ミローナちゃんと

2人っきりで居られる時間は

放課後だけ…なるべくあの女が

近づかなさそうな場所を

選んでミローナちゃんと遊びに行く。


今日は森のなかで虫捕り…

でも途中でミローナちゃんの

汗を拭き取ってあげた時

我慢出来なくなって

ミローナちゃんが見てないところで

ハンカチについた汗の匂いを嗅ぐ…



すると……







「ドン引きしてるのじゃ!!」




突然大声が聞こえた。


振り向くと青い顔をしたあの女がいた…。



一瞬かなり戸惑った…

こんな事してるところを

見られたら終わりだと思った………







いや、終わりじゃない…



「……………………あら?

ディナディナちゃんどうしたの?」



私はあの女に作り笑いで話しかける…




誰も見てない森…

ミローナちゃんも

あと数分は戻って来ないだろう…


今のうちにあの女を消す!!



これは終わりじゃない!!

私とミローナちゃんの幸せな

空間を作り出す為の第一歩!



始まりなのだから!!!






それまで待っていてね…




ミローナちゃん………

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