85話 スクウェア・テレポート
俺はアダヴィダ村の
ミノタウロスと人間の
奇妙な組み合わせの夫婦に育てられた。
今日は、いつものように
夫婦の家の隣に作ってもらった
巨大な小屋で熟睡していた…。
「ねぇねぇドラグ二ング!遊ぼー!」
「遊ぼ!」
「遊ぼ!」
今年で3歳になった3つ子の
ミノノ、ミウウ、ミロロが
小屋に入って
3人同時に話しかけて来た。
よく、体長約3mのドラゴンの
俺を怖がらずに話しかけて来るものだ…
ちなみにドラグニングは俺の名前だ。
まぁ、俺からしたらミローナと
この3つ子は妹の様な物。
いや、俺より
ミローナの方が少し歳上らしいから
ミローナが姉に当たるのか?
どちらにしても俺は生まれてすぐに
赤ん坊のミローナと殴り合ってたらしい…
生まれた直後から拳で
語り合う仲だったと言う訳さ。
あ、俺は翼だった。
「ねぇねぇ!ミノノね!
今お花育ててるんだよ!
本当は怖いお花らしいんだけど
ひいお婆ちゃんが
ミノノは育てていいって!」
ミノノが植木鉢に
咲いた花を見せて来る。
ここ数日ミノノは植木鉢を持ち歩いて
花を育てて入るんだが、何の花だか
さっぱりわからない…
ただ、その花から危険な雰囲気が
漂っているのは確かだ。
「ミノノいいな〜!」
「いいな〜!」
ミウウとミロロが羨ましそうな
目でその花を見つめる。
「おーい
ミノノ、ミウウ、ミロロ〜!
そろそろミローナの入学式に
行くぞ〜!」
ルヴィネ姉さんが小屋の外から
3つ子を呼ぶ。
ちなみに何故姉さんなのかと言うと
ルヴィネママとか
言ったら恥ずかしいからだ。
別に喋れないから関係ないのだが
俺のキャラ的にママは無いと思う。
心の中はクールなキャラでいたい…。
「はーい!」
3つ子がルヴィネ姉さんの方に
向かって走って行く。
ルヴィネ姉さんがいる場所には
身内+キャメミール姉さんが
全員集合していた。
「うっ!?ミノノちゃん
その花は何!?」
キャメミール姉さんが
口を押さえてミノノの花を見る。
「ひいお婆ちゃんから貰ったの!」
「どうしたんだ?キャメッション?」
「いや、何の花か覚えてないんだけど…
何かその花の
トラウマを思い出した気が…
その花で死にかけた気がしたような
死にかけてないような…
とりあえず、その花を見たら
後頭部の古傷がズキズキと……」
「気のせいだぜ!キャメッション!」
ルヴィネ姉さんが無理矢理流した。
「じゃあミロロ頼んだぜ!」
「はーい!」
ミロロが小枝を拾って
地面に巨大な正方形を描く。
「ミロロの魔法があれば
いつでも旅行に行けるね。」
みのたん兄貴が
入学式の会場で一応正体が
バレないように
仮面をセットしながら喋る。
「妾が鍛えたおかげじゃな!
さすが妾!」
ルナディナが小さな体で胸を張る。
半年程前から、3つ子達は別々の魔法を
それぞれ覚えた。
そして、ミロロの魔法は
正方形の印を描いた
場所同士を入れ替える
いわゆるテレポート。
正方形の印に入る大きさなら
何でも転送する事が出来るが
少しでも印からはみ出てしまえば
真っ二つになる。3歳児が使っては
いけない気がする魔法だ。
その名もスクウェア・テレポート
(ルナディナが命名)
ちなみにミロロの魔法が発現してすぐに
便利だからと言って
ルナディナがミロロを連れて
俺に乗り、世界中を飛び回り
世界各地にミロロに正方形の印を
つけさせたから世界中どこにでも
瞬間移動出来るようになっている。
「みんなちゃんと入ったかの?
はみ出たら真っ二つじゃからなー
まぁ、頭部が真っ二つにならない限り
妾がすぐに治してやるがの!」
今日はやけにルナディナの機嫌がいい
年齢詐称して、ひ孫について行くのが
楽しみなようだ。
「ん?ドラグ二ングも
行きたいのかの?」
ルナディナが俺を見る。
は?
正直絶対行きたくないだが…
今日はぶらっとドラゴン・ヘルまで
飛んで行って可愛いメスドラゴンを
ナンパしに行く予定だった。
俺のささやかな休暇を邪魔しないでくれ
まぁ、最近はミロロの
テレポートのおかげで移動出来るから
そんなに働いてないが…
ルナディナを乗せると
ロクな事にならない……。
無理矢理アクロバティックな飛行を
要求してきたり、
ぷれてぃーな装飾でデコられたり
この前は雲の上から魔法学校の塔の
天井を突き破って入りたいと
言われたから雲の上まで飛んでやった。
雲の上は酸素薄いし寒いし
嫌なんだよな…
ミローナとルナディナは空気の薄さとか
気にならないらしいけど…
俺は必死で羽ばたいてる上に
何故か背中にミローナの斧が
基準装備されてるから重いのなんの…
いや、俺もさ
この斧の事は嫌いじゃないよ?
ミローナが口笛吹いて俺が上から
斧落としたらカッコイイけど…
この斧2.5mあるんだよ…
俺体長3m……
もうちょっとさ…
重量考えて積んでほしいよね…?
「じゃあ、せっかくじゃから
ドラグニングに乗って行こうかの!」
何で?テレポートしよ?
「でも婆ちゃん
今から飛んで間に合うのか?」
「まぁ、速いし大丈夫じゃろう
ドラグニングも飛びたくて
うずうずしてるみたいじゃし。」
うずうずしてません…
俺はミローナに飛びたくない
視線を向けて助けを求める。
赤ん坊の頃から一緒にいた
相棒だから視線で意思を伝える事なんか
朝飯前だぜ!
……………
「あ!本当だ!ドラグニングが
ものすごく飛びたそうな
目で見て来てるね!」
………………
相棒おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?
「じゃあ、妾とミローナは
ドラグニングに乗って行くから
そなたらは先に行っておいてくれ。」
「OKじゃあ、先行ってるわ〜
ミロロもうテレポートしていいよ。」
「はーい!」
ミロロがすでに巨大な正方形を
完成させていた。
3歳でも素早く正確な正方形を
描けるように特訓しているから
完成がかなり早い。
「スクウェア・テレポート!!」
ブォォン!!
………………
地面に描いた正方形が
緑色に光って立体化する。
ブンッ!!
そして、一瞬で正方形が縮まりながら
消えて枠に入っていた
ルヴィネ姉さん達が瞬間移動する。
「さ!妾達も行くのじゃ!」
「うん!」
ルナディナとミローナが
俺の背中に飛び乗る。
「さぁ!魔法学校まで
行くのじゃ!ドラグニング!」
まぁ、今からならまだ間に合うから
仕方がないから行ってやるか……。
「あ!」
ルナディナが突然大声を出す。
「どうしたの?お婆ちゃん?」
「ドラグニングにぷりてぃーな
装飾をつけた方がいいかの?」
「うん!そうだね!
可愛いくオシャレした方がいいね!」
はぁ…また始まった……。
この後俺は2人にカスタマイズされ
遅刻したのは言うまでもなかった…。




