82話 年齢詐称幼女
夕方…魔法学校の
生徒達が下校している時間帯。
儂は、魔法学校の学長室の椅子に座り、
仕事の合間にブラックコーヒーを
飲みながら休憩をしていた………。
3年前に大賢者ルナディナに
魔法学校の授業内容の変更を提案され、
その約1年後に授業の内容を
ルナディナ式に変更。
それからさらに約2年の月日が流れた。
この2年間で生徒達の平均戦闘力は
9.7倍に跳ね上がり、
在学中だった生徒達は
10〜15年程の在学期間中の内
たった2年、ルナディナ式の
授業を受けただけで卒業する頃には
全員ロンズデーライト
(50位以内)の冒険者に匹敵する。
これからも生徒達の平均戦闘力は
年々上昇していくだろう。
ちなみに授業内容を変更した時には
誰にも大賢者ルナディナが
提案した内容とは言ってない。
大賢者ルナディナは、
一般人からしたら都市伝説の様な人物。
名前を出せば
いろいろと面倒な事になる。
ヒュゥゥゥゥゥ!!!
ん?突然何かが降ってくるような
音が聞こえた。
ドガッシャッン!!!!
………!???
な、なんだ!突然天井を突き破って
何かが落ちてきた!?
学長室は、魔法学校の真ん中に
建っている塔の最上階
約120m上空にある……。
いったい、何が降ってきたんだ?
隕石?はありえない。
「久しぶりじゃのアマルド。」
天井を突き破って来たのは
大賢者ルナディナだった。
何故か6歳くらいの姿になっている?
どうやって120mの塔の天井を
登ったのかわからんが
大賢者ルナディナとその一族の行動に
いちいち驚いていてはキリがない。
「大賢者ルナディナよ……
何の用だ?」
「ちょっと相談があって来たんじゃ。」
「相談?」
てくてく
大賢者ルナディナが歩いて
儂に近づいてくる。
「そなたの椅子…ふかふかで
座り心地良さそうじゃな。」
大賢者ルナディナが儂が座っている
椅子を眺める。
「ふかふかふわふわじゃろうなー。」
儂は黙って立ち上がる。
ぼふっ
「は〜、悪くないの。」
大賢者ルナディナが儂の椅子に
腰を下ろす……
いや、体が小さいから飛び乗る。
「ところで相談とは何だ?」
「まぁ、それがの
話せばちょっと長くなるがの。」
話せば長くなる?
わざわざ儂のところまで来て
話すという事は、
よっぽど重要な事なんだろう。
「ごくごく……ぐっぷ!!」
大賢者ルナディナが
机の上にあるブラックコーヒーを飲んで
苦かったのか若干涙目になる。
儂は、棚から砂糖とミルクを
取ってきて渡す。
「おお、気が効くの。」
いや、それ儂コーヒーなんだが…。
じょばばばばばっ!!!
大賢者ルナディナはコーヒーに
砂糖とミルクを大量に入れる。
もはや、砂糖とミルクの方が多い?
「ごきゅっ!ごきゅっ!
ぷっはー!!」
両手でカップを持って
勢いよく飲み干す。
「ぶらっくこーひーも悪くないの〜!」
いや、それはカフェオレだ。
「あ、話がずれてしまったの。
いつだったか忘れたが
妾のひ孫が今年魔法学校に
入学するって前に話したじゃろ?」
いや、初耳だ……。
「あ、あんなにも強い子供を
わざわざ魔法学校に
入れる必要があるのか?」
「ありゅ。」
大賢者ルナディナが即答するが
噛んでしまって、顔を赤くする。
「わ、妾のひ孫にはの…」
「ひ孫には?」
「同年代の友人が居ないんじゃ…。」
「は?」
そんな理由でわざわざ魔法学校に?
「ひ孫のミローナは、もう6歳…
そろそろ友人の1人や2人…
いや、1万人くらい居ないと
寂しいじゃろ?」
何故、一気に1万人まで行った?
魔法学校の生徒の数より多いんだが…。
「と、言うわけで
ひ孫だけを入学させるのは
心配じゃから妾もひ孫と
一緒に入学しようかの!」
「……??」
何故そうなる?
「教師や生徒達には
妾の正体は秘密じゃぞ?」
「あ、ああ…。」
ひ孫が心配なだけでわざわざ入学するとは
考えにくい……。
いったい何の意図で自ら魔法学校に?
全くわからない…。
「それにしても
ここはよく下の生徒達が見えるの。」
大賢者ルナディナが
塔の下にいる
下校する生徒達を眺める。
もしかしたら、生徒達を監視する為に
自ら魔法学校に入学するのか?
そして、見込みのある生徒を
引き抜いて、精鋭部隊でも
作るつもりなのか?
「今、妾の視界に入っている生徒は
全員で386人、年齢は6〜20歳と
ばらつきがあるが、そこは問題ない…
問題なのは奇跡的にどちらも
193人と193人………
なんて事じゃ……。」
「生徒達を見て何を数えているんだ?」
「ああ、それがの……。」
大賢者ルナディナは
深刻そうな顔をして話す。
「肩掛けカバンかリュックを
背負っている生徒の数が
奇跡的に両方
193人の半分半分だったんじゃ。」
「………?」
生徒の荷物に何かあるのか?
「それがの…
妾の登下校用のカバン選びで
肩掛けカバンかリュックで
迷ってたんじゃ……。
それで他の生徒達を見てから
決めようと
はるばるやってきたんじゃ」
大賢者ルナディナが
本気で悩んでいるような顔で話す。
「そなたは、肩掛けカバンかリュック
どっちがいいと思う?」
ふ、ふざけているのか?
それともこの質問に深い意味が?
「…………。」
「どっちが妾に似合うと思う?」
………………………
「リ、リュック…。」
「おお!リュックか!!
妾も今リュックにしようかなと
思ってたんじゃ!」
大賢者ルナディナが目を
キラキラさせながら言う……。
……………………………
「いや……リュックはよく見ると
くーるじゃないの…。
やっぱり肩掛けカバンに
決めたのじゃ。
妾はくーるでぷりてぃーな
キャラじゃからな!」
目の前の年齢詐称幼女は
クールキャラには、見えないが……。
「と、言うわけで邪魔したの!
早速帰って義孫に
作ってもらうのじゃ!
ルヴィネもいい夫を持ったの〜!
頼めば大体、下手な店の品物より
質がいい物作ってくれるんじゃ〜!」
大賢者ルナディナはスキップしながら
ドアから学長室を出て帰って行った…。
……………………………
本当にカバンを決める為だけに来たのか?
せめて突き破った天井だけは
直して欲しかった……。




