74話 ウルツァイト会議②
出産間近のルヴィネを
途中まで運び、
あとはメディックに
任せて会議室に戻る。
「おう、ご苦労じゃったな
シャラシャル。」
さっきのルナディナと名乗る
少女が、会議室のど真ん中の席で
ジュースを飲んでいる。
ツノの生えた金髪の女の子は
ルナディナの膝の上で寝ている。
「あ、あなたは本当に
あの大賢者ルナディナさん
なんですか?」
「もちろんじゃ。」
銀髪の少女が、平然とした顔で言った。
「じゃあ、今から
ルヴィネとメディックが不在じゃが、
第1回ウルツァイト会議を
始めるのじゃ。」
ルナディナが強引に会議を始めた。
「いきなり、本題を話そう。
これから約25年以内に
これまでに無い、強さと数の
魔物達が襲って来る。
今のままじゃ、そなたら
ウルツァイトでも数秒くらいしか
生き残れ無いじゃろう…。」
な、何を言ってるんだ?
話が唐突すぎて読めない…。
「じゃから、25年後に備えて、
妾達がそなたらを
鍛えてやるのじゃ。」
周りの空気がシーン…っと静まり返る…。
「おい!ルナディナさんよ!
俺たちを鍛えるだと?
舐めてんじゃねーぞ!クソガキが!」
ウルツァイト5位、ガジュガルが
ブチ切れた。
イカツイ顔つきにボサボサのロン毛で
いかにもガサツそうな男だ。
単純なパワーなら
おそらく、ウルツァイトの中では
2番目にあるだろう。
1番パワーがありそうなのは
ウルツァイト2位ミロス。
身長は4m近く、
常に兜と鎧を着ている大男で
誰も素顔を見た事が無いらしい…。
「ああ、そなたは確か、
ガジュガルじゃったな?
1つ、この会議のルールを
説明するのを忘れておったわ。」
「ルール?なんだそりゃ?
言ってみろ!」
「妾の言う事に文句がある奴は
今ここでかかって来い。」
ガジュガルの頭に血管が浮き出る。
「お望み通り、ぐちゃぐちゃの
ミンチになるまで、ぶん殴ってやる!
このクソガキがぁ!」
ガジュガルがルナディナに向かって
本気で殴りかかる。
「クソガキ?クソガキじゃと?
どっからどう見ても
ぷりてぃーな乙女じゃろが!!」
バキャッ!!
ルナディナがガジュガルに
カウンターパンチを食らわせる。
「ぐっはぁ!」
たった1発殴っただけで
ガジュガルは全身の骨が砕けて
ぶっ飛ぶ。
……………………
「ママったら♡
大人げ無いんだから♡」
アミネラがルナディナに
向かってつぶやく。
「力の差ってやつを
見せんとわからんじゃろ?」
「確かに…それもそうね♡
でも、ちゃんと治しあげてね♡」
「言われんでも
あとで治してやるのじゃ。」
今のルナディナの動き…
もはや人間のレベルじゃ無い…。
俺が今まで見て来た、
達人や冒険者なんかじゃ
一切太刀打ちできないだろう…。
しかも、かなり
手加減していたようにも見える…。
「他に文句がある奴は居ないかの?」
この場のほぼ全員が
ルナディナから目をそらす。
「大賢者ルナディナよ、質問がある。」
ウルツァイト4位、
大魔法使いアマルドが手を上げた。
髭もじゃのいかにも魔法使いらしい
見た目の老人だ。
普段は冒険者活動をせずに、
ここから、少し離れた街にある
魔法学校の学長をしているらしい。
魔法学校では、魔法以外にも
一般の騎士を育てる学部や、
教養を身につける
学部やらいろいろあるらしいが
その全ての戦闘技術から
教養の教え方まで全てアマルドが
管理しているらしい。
「なんじゃね?アマルド?」
ルナディナがアマルドを見る。
「我々ウルツァイトを
今から鍛えても25年後には
老いてしまうでは無いか?」
確かに…俺も25年後に
今のように動ける自信が無い…。
「その心配は無いのじゃ。
妾の魔法で若返らせるのからの。」
魔法で若返らせる?特殊魔法か?
「妾の魔法は
触った物の時間を
自由に操れるのじゃ。
つまり若返らせる事も可能じゃ。」
時間を操れる魔法!?
なんて恐ろしい魔法なんだ…
いや、それよりも大賢者ルナディナが
自分の魔法の特性を喋った!?
詳細までは言ってないが、
特殊魔法型の魔法使いは
自分の魔法の特性をむやみやたらに
喋ってはいけない……。
特殊魔法型の魔法使いに取って、
魔法のタネがバレれば、
いくらでも対策を取られてしまう。
本当に信頼出来るパートナーなら
ともかく、こんな大勢の前で
あっさり喋るもんじゃない…。
「あ、そうじゃな!
そなたの学園の授業内容も
妾が決めようかの!」
アマルドがルナディナを
不機嫌そうな目で見る。
「じゃって、そなた教えるの
下手じゃもん…。」
アマルドは無表情でルナディナを
見ているが、頭の中は
煮えくりかえってるに違いない。
喧嘩が始まりそうだ…。
同時に俺は今ものすごく
家に帰りたい気分になった…。




