68話 ランダム・ブレイク・ブロー
10ヶ月前………
私は、お家でダラダラしていた。
みのたんは、レムタスさんの
牧場の手伝いをしに行ってる。
……………………
「暇だぜ……めっちゃ暇だぜ!」
もう、7ヶ月くらい
まともに運動してない…。
だって、妊婦なんだもん
ちょこちょこ陣痛が来て痛いけど、
妊娠10ヶ月だから
もうすぐ生まれるぜ…。
「ルヴィネちゃん
ちっとも魔法を習得できないわね♡」
お母さんが私の膨れ上がった
お腹をさすりながら言った。
赤ちゃんが産まれそうになったら
すぐに医者を呼んでもらう為に
最近は、常にお母さんがついている。
ついでに肉体的修行ができないなら
魔法を教えて貰おう!という事で
お母さんに魔法を教えてもらっているが
全く成果が出ない…。
まぁ、初期段階では頭の中で
魔法使いたいって
念じ続けるだけなんだけどね。
お母さんは、ルナディナお婆ちゃんの
血が入っているから強力な
魔法が使えるに違い無いと言うけど…
強力どころか発動すらしない…。
「お母さん〜、何で私が小さい時から
魔法を教えてくれなかったんだ?」
「面倒くさいからよ♡
あ、今赤ちゃんが蹴ったわ♡」
お母さんは私のお腹に
耳を当てながら答えた。
面倒くさいからって…
…………!!?
「ちょっと!ルヴィネちゃん!?♡」
「え?何?」
「魔法が発動してるわ!
右の拳に魔力が集中してる!
その拳で何か触ってみて♡」
え?何か触る?
とりあえず、お母さんの頭を…
パシッ!
お母さんが私の右腕を掴んで止める。
「ルヴィネちゃん?♡
もし、仮に触った物が爆発する
魔法とかだったとしたら、
いくら私でも死んじゃうわよ?♡
そこの机に軽く当ててみなさい♡」
いつも通り語尾に♡がついているが
お母さんの顔はガチギレ寸前だ。
多分、妊婦じゃなかったら
ワンパン食らわされてたかも…。
大人しく机に軽く拳を当てる…。
バシャッ!
…!???
机が崩れ、水の様に床に散らばった。
この机は木製だ…
木目はそのままなのに、
水の様にサラサラ流れる…。
触ってみてもただの水…。
「何これ!?なんか面白い!」
「へー、不思議な魔法ね♡ルヴィネちゃん♡
次はコレに当ててみて♡」
お母さんがガラスの瓶を渡してきた。
軽く拳を当ててみる…。
びりびり!!
今度は紙のようにびりびりに破けた。
見た目は透明の瓶のままだが
触った感覚は紙の様だ。
「ルヴィネちゃんの魔法の
能力が少しわかったわ!♡」
お母さんがすっきりした顔で言う。
「うっ!!」
あ、ヤバい…めちゃくちゃ痛い陣痛が来た!
「痛たたた!!!う、産まれる!!!」
「ああ!大変!ルヴィネちゃん!
5秒以内に村のお医者さんを
連行して来るわ!!」
ぽこんっ!!
「おぎゃあー!おぎゃあー!」
「あ、産まれたわ。」
めちゃくちゃ痛かったけど
割とあっさり産まれた。
赤ちゃんには小さなツノが生えている。
「お医者さん必要なかったわね♡
可愛いわ〜♡
玉のような赤ちゃんね〜♡
あら?玉が無いわ♡女の子ね♡
名前はどうするの?♡」
お母さんは生まれてきた赤ちゃんを
素早くキャッチして
玉の有無を確認した。
「じゃあ、ミノタウロスの
『ミ』と『ロ』を取って
伸ばし棒に『ナ』をつけて
ミローナちゃんで!」
「あら?伸ばし棒と『ナ』に
意味はあるの?♡」
「伸ばし棒に『ナ』で終わる名前って
なんか可愛いだろ?」
「さすが、ルヴィネちゃん!♡
センスいい!♡」
……………………………………………………
いや〜、ミローナが産まれた時は
安産で助かったなー。
いやいや、それよりも今現在
お義父様とバトル中だった!
空中で、身動き取れない状態で
お義父様の鉄の斧フルスイングが迫り来る。
お義父様すげー、まさかここまでとは…
ちょっと油断しちゃったなー。
剣で受けてもいいけど、
こんな威力のフルスイングくらったら
めっちゃ吹っ飛んで数m後ろにある
岩にぶつかってしまう…。
いや、絶対痛いわ…。
ぽいっ…
右手に持っていた剣を離す。
そして右拳に魔力を込める…。
「ダメよ!ルヴィネ!!
そんなの打ったら、
みのたんパパが死んじゃう!!!」
何言ってんだ、キャメッション…
直接お義父様に打つわけ無いだろ?
ビリビリビリッ!!
迫り来る鉄の斧を右手でぶん殴る!
鉄の斧は布の様な材質になり
殴った部分がビリビリに破け、
へなっとしなる。
その、次の瞬間……
べちんっ!!
「痛っ!!」
へなへなの斧が太ももに当たった。
布にしても当たると痛い!
まぁ、岩にぶつかるよりマシか…。
全く、使いにくい魔法だぜ…。
私の魔法は、右手で殴った対象物を
100%破壊できる代わりに
対象物の材質をランダムに変える魔法。
村で実験してみたところ、
変化する素材の種類は10種類、
全部柔らかい素材だが
自分の意思で選ぶ事は出来ない…。
何でも破壊できる拳と聞くと強そうだが、
普段は右手で片手剣を持っているから
はっきり言って、私の戦闘スタイルと
全く噛み合わない…。
まぁ、今回は役に立ったけどね!
ちなみに、魔法名は
ランダム・ブレイク・ブロー!
(お母さんが命名)
パシッ!
さっき投げ捨てた剣を左手で
キャッチして着地と同時に
お義父様の首元に向ける。
勝負ありだ。
………………………
しばらく、静寂が続く…。
キャメッションがわたわたし始めた。
「み、みのたんパパも
カッコよかったですよ!」
キャメッションがなんか
気を使ってお義父様をフォローする。
お義父様がキャメッションを
無視して私を見つめる…。
…………………
「……ア……リガト…………ウ…。」
喋れるんかい!!
最初から喋れよ!!
片言だから恥ずかしかったのかな?
いや、ボスの癖にコミュ症かよ!
「いえいえー、どういたしましてー。」
キャメッションが返事をする…
いや、お前じゃねーし。
「ルヴィネ…オマエハ……
ヤットアエタ…オレヲ…
マンゾクサセテクレタ…
サイキョウノ…センシ…ダ……。」
いや、だからって
義娘に喧嘩売るなよ…
我慢しようよ、お義父様…。
あと私より強いの2人知ってます。
「あ、えーっと…お義父様…
その斧を直せる知り合いが居るので、
しばらく、預からせて
もらえませんか?」
結構大事そうな鉄の斧を
壊してしまったのは申し訳ない…。
そろそろ、ルナディナお婆ちゃんが
みのたんを治しに村に来る頃だから
ついでに鉄の斧も直してもらおう。
「…ナオセル……ノカ?
ナラバ…コノ……オノ……
オマエノ…コドモ……ニ……
ヤル……。」
お義父様は、へなへなの
鉄の斧を渡してきた。
「ありがとうございますー
ミローナも喜びます。」
私は頭をぺこぺこ下げながら
斧を受け取った。
ミローナには、まだ早いけど
大きくなったら振り回せるかな?
「ソレト……オマエ………ヒトツ……
カンチガイ…シテル……。」
え?勘違いって何だろ?
私、失礼な事言っちゃったかな?




