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66話 好敵手

奴らに捕まってから、20年の月日が経った。


俺は成体になり、身長は4m

奴らの言葉も一応覚えた。

俺の種族はミノタウロス。

奴らの種族は人間と言うらしい。


この20年間、ほぼ毎日コロッセオで

殺し合いをさせられていた…

いや、虐殺をさせられていた。

どんな人間や魔物でも

俺が一撃与えれば肉片になる…

戦いで危険を感じた事は一切ない。


最近はコロッセオから

2.5mの鉄の斧を支給され、

それで相手を真っ二つに叩き斬る。

俺の鉄の斧は、このコロッセオの目玉らしく

これを見るためだけに来る客も多い。


客は飽きないが、俺はもう飽きた。

俺の足には頑丈な枷がつけられていて

虐殺が終わったら檻の中に入り、

不味い飯を食わされる生活。


退屈だ……出来る事なら

あの客共のようになりたい…

あいつら毎日俺の虐殺を

見て飽きないんだから

もし、俺と同じ生活を

しても飽きないんだろうな。



そんなある日、俺は気がついた……


何で俺はここから出ようとしないんだ?

出ようと思えば出られるんじゃないか?

前までの俺なら、出られなかった…

だが、今の俺なら外に出られる。



……………………………………………………



いつも通り狭い通路を通り、

コロッセオの血生臭い匂いがする。


「さぁ、今日も当コロッセオ最強の

ミノタウロスが現れましたぁ!!」


この司会者の声を聞くのも今日が最後だ。



今回の相手も弱そうな人間で

いい歳こいて涙で顔を

ぐちゃぐちゃにしている。

だが、こいつは運がいい…

今日の俺は、戦う気は無い。


鉄の斧を振り上げる…

客は期待の目で俺を見る



バキャンッ!!



鉄の斧を足枷の鎖に向けて振り落とす。

鎖が切れた。


……………………


司会者と客は口を開けて見ている。

今まで気がつかなかった俺も馬鹿だが

こいつらはもっと馬鹿だ。

こんなに強力な鉄の斧を渡せば

貧者な鎖など簡単に断ち切れる。




ダッダッダッダ!!



俺は客席に向かって全速力で走る。



バンッ!!



ジャンプして客席の手すりに鉄の斧を

引っ掛けて体を1回転させながら

客席に着地する。


ドンッ!!



「うぁぁぁぁぁ!!

ミノタウロスが逃げるぞ!!」



客達が悲鳴を上げる。


俺はそのまま客達を踏み潰しながら

コロッセオの壁を突き破り、

外に飛び降りた。

コロッセオの外は

街中で街の人々が俺を見て逃げ回る。


子供の時に連れてこられた道は

今でもハッキリ覚えてる。

20年も経てば

少し街並みが変わっているが問題無い。

俺は走って故郷のダーク・ヘルに向かう。


途中でで何人もの戦士が

立ちはだかって来たが鉄の斧でぶった斬る。

人間達の中ではおそらく精鋭であろう

戦士達も、俺の鉄の斧の前では

ただの紙切れ同然、ガッカリだ……。




……………………………………………………


それから、何日かかけて

ダーク・ヘルにたどり着いた。

そのまましばらく走り続け、

あの崖を見つけて慎重に降りる…。


さらに数日かけて、崖の下に着いた。




崖の下では俺と同じミノタウロスの群れが

迎えに来てくれていた。


野生で暮らしていた彼らは

崖の上に居る生物の

気配も感じ取れるらしい。

コロッセオに閉じ込められていた

俺には到底無理だが……。

彼らは俺を見るとすぐに

群れの長だった父の息子だと

わかってくれた。


そして、

俺は200体以上の群れの長となった。

前の長の息子だったとしても

突然帰って来た

俺を長にするのはおかしい。


父が居ない間に長の代わりをしていた

仲間に理由を聞いてみると…

俺が1番強いかららしい………。


確かに…俺は

群れの中で1番体が大きい。

だが、それだけで強いとは限らない…

何故俺が1番強いと

判断したのか聞いてみると…


俺の持っている鉄の斧には

血の匂いが染み付いている。

そして、俺の体には一切傷が無い。

つまり数々の戦いを繰り広げて来たが

ほぼ無傷で勝利を積み重ねて来た

証だと言う。


まぁ、それで合っているが、

崖の上の生物はすべて貧弱で

勝負にならないだけだった。

いや、崖の下の魔物でもミノタウロスに

勝てる魔物なんて存在しない…。


なんだ…結局コロッセオから出ても

何も変わらない、ただ退屈な日々だ。




……………………………………………………



それから20年以上

俺は群れの長を続けて、現在に至る。


この20年間、特に危険な事もなく。

周りの魔物を狩って食べて、

寝るの繰り返しだ。

最近変わった事と言えば

何故か周りの霧が濃くなって

俺たちを含めた

魔物達が大幅に強くなった。

俺自身も最近力が湧いてくる。

いくら力が湧いても

振るう相手が居ないんだがな……


そもそもミノタウロスの種族が

こんなに強いなら、群れで

居る必要性が無いんじゃないか?

そんな事を考えていたら…




崖の上の方から気配を感じた。

何かが2体、崖を高速で降りて来る。


俺は群れの若いミノタウロス達を連れて

その2体が降りて来る場所まで行った。




ドバッシュンッ!!!




ドバッシュンッ!!!




ドンッ!!!



その内の1体が落ちて来て

衝撃で岩の地面が割れる。


………人間?


しかも、2人とも女だ。

片方は金髪で小柄、

もう片方は薄い桃色の髪で体格が

人間にしてはかなり大きい。


だが、2人共人間離れした

力を感じる……

特に小さい方はあんな着地の

仕方をして無傷だ……

普通の人間なら原型をとどめ無いくらい

体がバラバラになる…。





仲間のミノタウロスが

金髪の女に殴りかかる。



バシンッ!!



金髪の女は、それを片手で受け止める。


さらに仲間のミノタウロス8体が

大きい方の女に襲いかかる。


迂闊に手をだすなと言いたいが無理も無い…

俺達ミノタウロスは強すぎて

逆に戦闘に慣れてない。

彼らは人間を見るのは初めてだ…

未知の生物を目にしたら殺られる前に殺る。

それでだいたいのの生物は殴り殺せる。


だが、この人間2人は例外だ…

彼らは負けてしまうだろう…

ただ、止める必要も無い。

あの人間2人からは殺意を感じないからだ。




体がデカい女が岩を集めて岩の檻を作り

彼らは、あっという間に

岩の檻に閉じ込められた。

魔法は昔聞いたことはあるが

見たのは初めてだ。



そして金髪の女は

なにかを探す様に俺たちを見回す。



「あ、居た。」



ビュンッ!



金髪の女は、とてつも無いスピードで

俺に向かって走って来た。

仲間達は目で追う事すら出来ない。



ズザァァァァッ!!



そして、砂埃を上げながら

俺の目の前でストップする。



…………



一呼吸置いて、

金髪の女は俺に向けて頭を下げる。



「お初にお目にかかります

お義父様。」



お義父様?どういう事だ?


「私はルヴィネと申します。

あなたの息子さんと3年前に

結婚しました。

彼は元気にやってます

子宝に恵まれ、娘も1人生まれました。」


息子?

俺には12体の妻と34体の子供がいるが…

俺と父、意外に崖の上に行った

ミノタウロスは居ないはずだ…


思い当たる節は

体の弱い子供が生まれた時は

すぐに捨てていたが……

その子供が奇跡的に育って

崖を登り、このルヴィネという

人間とつがいになった?


だが、普通に育てても

死んでしまうから捨てたんであって

奇跡的に育って、崖を登れる程の

強靭な肉体になる可能性は0に近い…。


確かにルヴィネからは

若いミノタウロスの雄の匂いが少しする…。



「これは彼が焼いたクッキーと

言うものです。

良かったら食べてみてください。」



ルヴィネが袋を渡してきた。

袋からクッキーとやらを

1枚だけ取り出し食べてみる。



……美味い………。


一旦袋を仲間に渡す。

人間は、好意を持った者と

手を握り合うらしいな。

ルヴィネに右手を差し出す。


ルヴィネは俺の手を握る。

さっきの力が嘘の様にか細く柔らかい手だ。


そして俺はゆっくり手を離し、

ルヴィネから少し距離を取る……




ブンッ!!




鉄の斧を構えて

左手でルヴィネに向けて

くいっくいっと手招きする…。


かかって来い。



このルヴィネと言う人間と

戦う理由は特に無い。

ただ、戦いたくなった…


やっと現れた好敵手と……


今、やっと父が崖を登った目的がわかった。

強い奴を探しに行ってたんだな……。


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