40話 今の何十倍努力しても超えれない
ウルツァイト1位 アミネラ。
俺がこの世で最も尊敬する冒険者だ。
彼女と出会ったきっかけは
俺が14歳で冒険者になった時だ。
偶然ギルド内にいた
同い年くらいの金髪の少女を
パーティーに誘ってみたのが
始まりだった。
少女の名前はアミネラ。
奇跡的に彼女も14歳で
俺と同じ日に
冒険者登録をしていたらしい。
アミネラは強く優しく美しかった…。
パーティーを組んでから数日で
アミネラは一気にランキングを上げて行き。
俺はアミネラについていけなかった…。
周りにもてはやされても
威張る事もなく、
金に目がくらむ事もなく
人々を守る事を最優先に依頼を受けていた。
俺は必死に彼女に追いつこうと
努力して、たった1年で
レニウム《5000位以上》になったが、
その時すでに
アミネラはダイヤモンド《200位以上》に
なっていた…。
「ジアータ君♡
今日は、ナブラナ村を襲った
魔物を倒す依頼を受けない?♡」
アミネラはいつも甘ったるい喋り方で
俺に合わせた依頼の範囲内で
人助けの依頼を勧めてくる。
「アミネラ…パーティーを解散しよう…
いつまでも俺に合わせた依頼を
受けるなんて、勿体無い…。」
「そんな事ないわ♡
私がこの依頼を受けたいのよ♡」
「そうやって…
いつも気を使われるたびに
自分の弱さを思い知って…
自分が嫌になるんだよ…
頼むからやめてくれよ…
そういうの…。」
「ご、ごめんね…。」
俺が急に自分の心の中を打ち明け、
動揺して、ごめんねという
言葉しか出なかったんだろう…
それがアミネラと
交わした最後の会話だった。
どうしても耐えられなかったんだ…
好きな女の足を引っ張る自分が…。
アミネラはパーティーを離れてから
数ヶ月でウルツァイト1位になり、
伝説の冒険者と呼ばれた…。
それから9年後、
24歳の時に俺は地道な努力で
ウルツァイト10位の冒険者となった。
やっとアミネラの足を
引っ張らない程度の強さになった。
その時アミネラは
しばらく活動をしていなかったが、
あまりにも強かったため、
順位は1位のままだった…。
俺はアミネラの
住んでいるらしい小さな村に行った。
都合のいい話だが、またパーティーを
組んでくれないか?と誘いに…
そして思いを伝えるために…。
「あら♡ジアータ君久しぶりね〜♡」
村に着いてすぐにアミネラに会えた。
俺と同い年なのに
かなり年下に見えるくらい若々しい。
「久しぶり、アミネラ…
9年前、急にあんな別れ方をして
すまなかった…。」
「いいのよ♡私こそ、ジアータ君の
気持ちを深く考えて無かったもの…。」
「アミネラ…もし、良かったら
また俺とパーティーを組んでくれないか?
やっと君の足を引っ張らないくらいの
強さになれたんだ!」
「ごめんね…しばらくは冒険者活動は
出来ないの…。」
「そ、そうかい……
あと…他にも伝えたい事が
あって来たんだ…」
「何かしら♡? 」
行け!言うんだ!
俺はウルツァイト10位 ジアータ
思いを伝えるんだ!
「アミネラ…俺は最初に会った時から
君の事が…」
「お母さん、その人誰〜?」
アミネラに似た7歳くらいの
金髪の女の子が歩いて来た。
「この人はお母さんの昔の
お友達のジアータ君よ♡
ルヴィネ、ジアータお兄さんに
挨拶しなさい♡」
「ジアータお兄さん!こんにちは!」
金髪の女の子は元気に挨拶して来た。
「こ、こんにちは…
ルヴィネちゃんか…いい名前だね。」
「ところでジアータ君♡
他にも言いたい事って何かしら♡?」
「いや、やっぱり何でもない
どうでもいい事だったから…。」
俺の初恋は、こうして終わった…。
それから俺はアミネラの真似をして
なるべく人助けの依頼を受け続け、
パートナーの魔法使いの女性と
恋に落ち、結婚した。
順位は10位のままだ。
これから上がっても
下がってもどっちでもいい、
家族を養えるだけの貯金はあるし
俺は、ただの自己満足の為に
人助けをする…それでいいじゃないか。
現在、俺は31歳になった…
いつも通りギルドの依頼表を
見ていたら、緊急依頼が出ていた。
「緊急依頼、ドラゴン・ヘルの
ドラゴン達が異常な増殖力で
戦闘力も大幅アップしており、
これ以上増えれば、
ドラゴン・ヘルを出て、町や村を襲う
個体が現れる可能性があります。
ロンズデーライト《50位以上》の
冒険者20人以上推奨。」
これは行くしかない…。
下級のドラゴン1匹にでも
町や村が襲われたら壊滅する…。
俺は知り合いを集めて21組の
ロンズデーライト以上のパーティーを
作ってドラゴン・ヘルに向かった。
いくら、強いドラゴン達でも
このパーティーにはかなわないだろう。
万が一の時は俺のパートナーの魔法で
何とかなる。
俺の魔法は未来視。
3秒後の未来が見える、
瞬きすると通常時と切り替えられ
俺は両目を交互に瞬きして
未来と現在を見ながら戦える。
「あなた本当に大丈夫?」
俺のパートナーであり妻である
魔法使いのギナナは心配そうに俺を見る。
「心配ないさ、ギナナ。
俺はどんな事があっても
君と仲間達を守る。」
しばらくドラゴン・ヘルを歩いていると
仲間達にドラゴンが襲いかかる
未来が見えた。
ビュオッ!
「危ない!!」
ガキンッ!
俺が飛び込み未来視通りに飛んできた
ドラゴンを大剣で弾き返す。
仲間達はすぐさま戦闘態勢に入る。
「遠距離系の魔法使いと冒険者は
円になる様に陣形を組み
他のドラゴンの追撃に警戒!
他の冒険者はあのドラゴンを
俺と一緒に仕留めてくれ!」
俺以外全員ロンズデーライトなので、
自然と俺が指揮を
取らなくてはならない。
人数がいるだけあって、
あっと言う間にさっきのドラゴンを倒せた。
「ジアータさんの指揮のおかげで
簡単に倒せたぞ!」
ロンズデーライトの冒険者の1人が
俺に向かって言った。
…………………!!
次の瞬間また違うドラゴンが数匹
未来視で見えた
「危ない!」
ドォンッ!
ドラゴンの爪が地面をえぐった。
間一髪でその冒険者を
抱え上げて避れた。
その隙に未来視を見るのが遅れた…。
他のドラゴン達が同時に
仲間達に襲いかかっていた。
全員腕の立つ冒険者なので
各自何とかドラゴンの攻撃を避けれたものの
陣形が崩れてしまい、
ドラゴンと戦闘しながら
立て直すのは不可能だ。
普段は少人数で行動する
冒険者達は集団で陣形を組むのに
慣れてない…。
ドラゴンの数は6匹…
かなりキツい状況だ。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
仲間が3人やられた…。
1人は即死、もう2人は致命傷を負ってる
その2人の内1人は妻のギナナだ。
「ギナナ!」
ギナナが瀕死になり、
未来視が見えなくなった…。
未来視はかなりの魔力を消費するので
パートナーが居なくなってしまえば
自分の魔力で発動する事は不可能だ。
仲間達もさすがに6匹のドラゴンが
同時に襲ってきたら、対処しきれない。
仲間達に向かって2匹のドラゴンが
火炎を吐いた
さすがの俺も火炎は防げない。
「お前達避けろ!」
俺が叫んだ次の瞬間…
バッシュン!!!
とてつもない発射音と共に
ドラゴンの頭部に風穴が空いた。
その風穴に引き寄せられるかのように
近くにあった崖の下から
金髪の少女が猛スピードで飛んできた。
シュパパンッ!!
少女は激しく体を回転させ、
2つの火炎を同時に斬り防ぎ
ついでにもう1体のドラゴンの首を
斬り落とし
スタッ…
美しく地面に着地した。
「ア……アミネラ?」
15歳の時の
アミネラにそっくりだ…。
カシャッ
少女は突然俺に向かって
デカいボウガンを構えた。
バッシュン!!!
ブッシャ!!
ボウガンから発射された杭は
俺の横をギリギリで、すれ違って
後ろにいたドラゴンの腹を貫通した。
さらに少女は他のドラゴンに向かって
1人で真っ直ぐ突っ込む。
ドラゴンは口から火炎を
発射しようとしている。
「やめろ!危険だ!!」
ズパンッ!!
ドラゴンが火炎を
吐くより速く突っ込み、
一太刀で縦に真っ二つにした。
ドデェェェン!!
真っ二つになったドラゴンが地面に倒れる。
…………………。
あまりに素早く力強い少女の
戦いを見てその場にいた全員が
時が止まったかのように彼女を見つめる。
「ギャエェェェ!!」
「ジアータ!
ギナナが危ない!」
仲間の1人が叫んだ方向に振り向く。
瀕死で倒れたギナナに向かって
2匹のドラゴンが襲いかかっている!
俺とギナナの距離的に間に合わない!
「ギナナ!!」
ドグシャッ!!!
な、何が起きたんだ!?
2匹のドラゴンが突然両サイドから
飛んできた巨大な岩に押し潰された。
岩には先ほど少女が
他のドラゴン達を撃った時に刺さった
杭が刺さっている。
どうやら少女が使った魔法のようだ。
どんな魔法かはさっぱりわからん…。
しかし、たった今あっと言う間に
6匹のドラゴンを倒した少女は
明らかに俺より強い…。
「おっさん今アミネラって言った?」
アミネラに似た少女は
喋り方が別人だった。
「ああ、昔の友人のアミネラという
人にとても似ていたからね…
助けてくれてありがとう…。
俺はジアータだ。君の名前は?」
「ああ!覚えてる!覚えてる!
昔アダヴィダ村に来た
お母さんの友達でしょ!
私ルヴィネ!覚えてる?」
「大きくなったね、
昔の君のお母さんにそっくりだ。」
「てか、おっさん
ウルツァイトだったんだなー
お母さんの知り合いに
こんなすごい冒険者が居たなんて
世界って狭いな〜」
どうやらアミネラは自分が
1位だって事を娘に言ってないようだ。
何か隠す理由があるんだろうか?
少なくとも俺の口から
言ってはいけないだろう。
「ちょっと!ルヴィネ!
あんなに急に動いたから
びっくりしちゃって
背筋釣っちゃったじゃない!」
身長2m越えの魔法使いの少女が
背中をさすりながら歩いて来た。
彼女がルヴィネのパートナーか。
「よしよし背中の
筋を伸ばしてやろう。」
「痛だだだだだ!!
あんた悪意あるでしょ!?」
目の前でじゃれ合っている少女は
あの強力なドラゴン達を倒したとは
思えない程、余裕を感じさせている…。
俺はギナナに回復ポーションを
飲ませながら考えていた…。
俺はアミネラの真似をして
本当にただの自己満足を
していただけのようだ…。
たとえ今から何十倍の努力を
してもアミネラどころか
その娘のルヴィネにさえ、
遠く及ばないだろう…。
俺じゃなくてルヴィネがリーダーなら
仲間は死なずに済んだ…。
ウルツァイト失格だ……。
それに俺はもうすぐ
ウルツァイトじゃなくなる。
目の前にいるルヴィネという少女が
これからウルツァイトになるからだ。




