30話 未来
……………。
「おい!みのたん!
起きろ!みのたん!」
…………誰かの声がする。
「みのたん!起きろ!」
ドカッ!
なんか蹴られた…目を開けてみる……。
「だ、誰?」
僕を起こしたのは
髪が長髪でイケてる少年だった…。
「お前!何寝ぼけてんだよ!
このハーハゲ様の事忘れたのか?」
ハーハゲ?そんなはずは…
彼はスキンヘッドで
イケてる少年のはずだ。
「マロニムさんがカンカンに
怒ってたぜ!早く村に戻れ!」
マロニムさん…?
「あ!そうだ!
山賊は!山賊はどこ!?」
「まだ寝ぼけてやがるのか?」
僕は辺りを見回してみる……
草原で、近くに洞穴がある……
山賊達と戦った場所じゃない?
胸の傷もないし、体のどこにも
怪我が見当たらない……。
「僕は、夢を見ていたのか……?」
「ああ、そうみたいだな!
早く村に戻れ!」
僕はハーハゲに連れられて、村に戻った。
村には、前までなかった
大きな家があるが
それ以外は、特に何も変わってない。
「やぁ!みのたんこんにちは!」
「こ、こんにちは…」
1度も話した事ないおじさんが
爽やかに挨拶して来た…。
「あ、みのたんさーん!
スカートが破れたんですけど
あとで直してもらえませんか?」
「は、はい…後で」
またまた、1度も話した事がない
女性が馴れ馴れしく話しかけて来た。
なんなんだ…何かがおかしい…。
「このバカ息子が!」
いきなりマロニムさんに怒鳴られた。
マロニムさんは、赤ちゃんを抱いている。
エクルム君かと一瞬思ったが
どうやら女の子のようだ。
生後9〜10ヶ月ってところか?
「びぇぇぇぇ!」
「ああ、よちよちミローナちゃん、
大声出ちちゃって、ごめんなちゃいね〜
じぃじ反省ちまちゅ。」
マロニムさんが想像できないような
裏声で、ミローナちゃんという
赤ちゃんをあやした。じぃじ?
「あのー…その子は?」
「あぁ!貴様…何を寝ぼけとる!」
「そうなんですよこいつ
さっき起きてからずっと
寝ぼけてて…」
マロニムさんもハーハゲも
2人とも何言ってるんだ?
「いくら寝ぼけとっても
自分の娘を忘れるなど!許さん!」
「む、娘!?」
なんだ!本当に何が起きているのか
わからない!
「貴様ぁ!まだとぼけるか!
ワシにミローナちゃんのお世話を
無理やり押し付け
お昼寝してただと?
そういうのを育児放棄って
言うんじゃぞ!
あぁ〜ミローナちゃんよちよち〜。」
僕に娘が出来て、娘の世話を
マロニムさんにさせていた?
わけがわからない…。
「おっ…とう…おっとう…」
ミローナちゃんが僕に向かって言った。
「なんじゃと!なんでじぃじを先に
覚えないんじゃー!」
し、信じられない出来事だが
マロニムさんがじぃじって事は
僕とルヴィネの子供か?
「何しとる!早く受け取れ!
いくら可愛らしくても
子守は、疲れるんじゃ!」
「は、はい…。」
僕はマロニムさんから
ミローナちゃんを受け取った。
ルヴィネに似てて可愛らしい…
頭から小さな角が生えている。
人間とミノタウロスの子供が
どうなるのかは知らないが
この子は、確かに僕と
ルヴィネの子のようだ…。
「えーと…マロニムさん…ルヴィネは?」
「?…ルヴィネは依頼を受けに
町に行ってるが、お前…本当に
大丈夫か?」
「マロニムさん…僕がここに来て
何年たちましたか?」
「3年だ!貴様が
ワシの可愛い可愛い娘に
連れられて来てから3年じゃ!」
やっぱり…時間が経っている…3年も
確か山賊と戦った時は、
村に来てから3週間しか経ってなかった…。
僕の記憶は、心臓を
貫かれたところまでしかない…。
何故か記憶が3年分なくなった?
もしくは、これは全て幻覚?
多分このまま記憶がないと
言っても信じてもらえないだろう…。
とりあえず、ミローナちゃんの
面倒をみるしかない。
おそらく僕はもう馬小屋には
住んでないだろう。
いくらなんでも馬小屋に住んでる
父親に赤ちゃんを預けたりしない。
て事は、村に戻った時に見た
大きな家が、僕の家だ。
ルヴィネが僕の為に大きな家を
建ててくれたんだろう。
「すいません、マロニムさん
僕ちょっと寝ぼけてました。」
「ふん!この借りは、美味い飯で
払ってもらうからな!」
そう言って、僕は大きな家に
入って行った。
中は広く、僕でも天井に頭を
ぶつけないように、作られている。
「びぇぇぇぇ!びぇぇぇぇ!」
ミローナちゃんが泣き出した。
オムツかな?
それともお腹が減ったのかな?
困ったな…。
何を食べさせたら
いいのかわからないし
オムツも変えた事がない…。
「お父さん…ミローナが、
お腹減ってるよ」
振り向くと、奥の部屋から
2歳ちょっとくらいの
銀髪の女の子が歩いて来た。
2歳くらいなのに落ち着いた感じで
かなり大人っぽいし、滑舌よく喋った。
ん?お父さん?今お父さんって言ったぞ!
まさか子供が2人!?
しかもまだ2歳くらいの小さな子を
家に1人にして…
3年後の僕は何やってるんだ!
「お父さん、ミローナの面倒は
私が見るから休んどいて。」
「いや、大丈夫だよ!
ミローナの面倒は僕が見るから!」
「でも、お父さんやり方
わからないでしょ?」
「……お願いします…」
あまりにも大人っぽい雰囲気なので
ついつい自分の娘に敬語を
使ってしまった……。
僕は、ミローナちゃんを
銀髪の女の子に渡した。
女の子は慣れた手つきで
台所から取ってきた離乳食を
ミローナちゃんに食べさせた。
なんだか見ていると微笑ましいな…
お姉ちゃんが妹ちゃんの
面倒をみている光景は……。
ん?この子がこの歳で子守に
慣れてるって事は
未来の僕は育児放棄しすぎじゃないか?
「ミローナ…ねんね。」
銀髪の女の子は、ミローナちゃんに
離乳食を食べさせたら
あっという間に布団に寝かしつけた。
「す、すごいね…
子守慣れてるんだね…」
「うん…これで邪魔が居なくなった。
お父さん、甘えていい?」
ああ、僕に甘えたかったんだな…
可愛いなー。
女の子は僕の足にきゅっと抱きついた。
バンッ!
「みのたん!さっき寝ぼけてて
心配だから手伝いに来たぜ!」
ハーハゲが勢いよくドアを開けた。
「ん?その子誰だ?」
…え?
この子は僕の娘じゃないのか?
でもハーハゲはこの子の事を知らない?
じゃあこの子は…
ビュンッ!バキャッ!!
銀髪の女の子がその小さな体から
想像出来ないスピードで
ハーハゲに向かって、飛び蹴りをした。
顔面の皮が飛び散り、目玉が飛び出る。
「ハ、ハーハゲ!?」
僕はとっさに身構えようとしたが…
ドタンッ!
「あ、足が動かない!?
それに死体が
腐ったような匂いがする!?」
グジュうぅ!!
…………!!!??
「なんだこれ!?
僕の足が原型をとどめてないくらい
グチャグチャに腐ってる!?」
ま、まさかさっき抱きつかれた時に
何かされたのか⁉︎
もう、立つ事すら出来ない!
それによく見ると
この子にはミローナちゃんのように
角がないし、ルヴィネにも似てない!
何故こんな小さな女の子が
僕達を襲っているのかわからない!
すたっ…すたっ……
「…………。」
女の子が無言でゆっくり歩きながら、
僕に近づく。
もう、目の前まで来たが
迂闊に手を出せない…。
両足が動かないから
逃げる事もできない…。
グサッ!
次の瞬間、女の子が僕の左目に
右腕を差し込んだ。
「う、うぁぁぁぁ!!!」
僕は必死に両腕で、女の子の腕を
抜こうとするがビクともしない…。
グチャグチャ……ボロ…
僕の両腕がグチャグチャになって
垂れ下がった。
皮だけでかろうじて、繋がっている。
女の子の腕は、僕の頭蓋骨を
通り抜け、脳みそまで達した。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
なんなんだ
なんなんだこの子は!?




