28話 ウルツァイト
俺の名は、カザーフ。
数年前まで盗賊狩りを主に
活動していた
冒険者のパートナーだった…。
頭に巻いたターバンと
褐色の肌がトレードマークで
「褐色の風」とか「ターバンの風」とか
ネーミングセンス0の
2つ名がついた時もあった。
毎日、盗賊狩りに参加していたら
ある日…ふと気づいた…。
冒険者のパートナーより
盗賊や山賊やった方が
稼げるのでは、ないか?
奴らを捕まえるたびに
目にする金銀財宝…。
こんなバカ共でもこんなに奪えるんだ
俺ならもっと奪える。
盗賊狩りの冒険者の事を
知り尽くしている
俺が冒険者に捕まる事はほぼ無い。
俺はパートナーに何も言わず、縁を切り
山賊の仲間に入れてもらった。
俺は強力な風魔法が使えるから
すぐに立場は上になり
30人の部下を任された。
しかも、山賊になってから
ある事に気がつく…。
普通の魔法使いは、1人につき
パートナーは1人。
だが、俺の魔法はただの
風魔法では無く…
複数の人間に魔法を
使わせる事が出来る珍しいタイプだった。
俺は山賊に向いている!
部下達に俺の作った魔法アイテムを
出来るだけ渡し、最強の山賊集団となった。
俺の山賊集団は、狙った獲物を
必ず逃さず、数々の冒険者を
返り討ちにした。
だがここ2週間
新人でダイヤモンドになった
天才ルーキーが他の盗賊や山賊狩りを
しているという噂を聞き、拠点を移した。
返り討ちにしてもいいが、
どんな魔法かも知らない奴と
戦うのは、リスクが高すぎる。
それに嫌な予感もする…。
そんなに離れてはいないが
まだ被害が出てない地域に移動して
商人や旅人を狩る。
今日の獲物は、町の方から
山道を馬車で走って来た。
早速、風魔法で崖から落とし
金目の物を奪う。
「頭!こいつ生きてやすが
どうしやす?」
部下の1人が聞いてきた。
「殺せ。」
部下が剣を振ろうとした瞬間…。
ドカッ!
部下が巨大な魔物に蹴り飛ばされた。
「何だこいつ!?
ミ、ミノタウロス!?」
他の部下達が怯える。
「慌てるな!全員でかかれば、
なんとかなる!」
なんでこんな魔物が現れたかは
わからんが、所詮魔物…。
全員で魔法を浴びせれば、何とかなる。
「レムタスさん!
ここで待っといてください!
すぐ片付けます!」
「何だ!このミノタウロス!
喋ったぞ!」
驚いた…魔物が、人間の言葉を
スムーズに喋った。
どうやらそこそこ頭がいいようだ。
よくわからんが、
レニウムのおっさんも出てきた。
あいつは無視しても大丈夫そうだ。
ミノタウロスとの戦闘が
しばらく続き、獲物とおっさんも、逃げた。
助けを呼んでくるとか言っていた。
もたもたしていられないな…。
このミノタウロス…魔法の事も
少しは知っているみたいだ。
その上で体も丈夫。
部下達の魔法で皮ははげるが、
致命傷を負わす事は出来ない…。
部下達に魔力切れのふりをさせた。
ミノタウロスは作戦通り
突っ込んで来た。
俺は全魔力を集中して、
風の大砲でミノタウロスの胸を貫く!
やっとミノタウロスが死んだ。
「やったぜ!お頭!
化け物を倒した!」
部下がミノタウロスの頭を足蹴にして
まるで自分が倒したかのような
口ぶりで言った。
次の瞬間……
ドッカン!
突然、部下がありえないスピードで
ぶっ飛んだ。
そして、部下がいたところには
金髪の女が立っていた。
女の首にはペンダント型の冒険石。
……冒険者か!?
部下が蹴り飛ばされたようだ…
首がへし折れ、ピクピクしている…。
その傷から魔法ではない、
単なる物理攻撃である事が分かる。
女は黙ってミノタウロスの死体に
視線を落とした。
ブアァン
女の手足から黒い霧が出て来て
ミノタウロスの胸の傷口に、入り込む。
「ぐふっ!」
ミノタウロスが息を吹き返した…。
まだ気絶はしているが、何だ今のは!?
闇魔法なのは確実だが
どうやって、心臓がなくなった
ミノタウロスを生き返らせた?
「……………。」
女が黙って俺たちを睨みつける…。
改めて女の冒険石を見てみる……!!?
石は真っ赤な光を放っていた。
真ん中の数字は、1……。
ウルツァイト1位…。
な、何故こんな奴が!
何故こんな奴がここにいるんだ!
わけがわからない…。
絶望しか無い…。
シュンッ!
気がつくと目の前に女がいて
部下は全員失神していた…。
バキッ!
次の瞬間女に殴られた……
俺は意識を失った…。
目が覚めた…。
気がつくとそこは牢屋だった……。
殴られた左頬がパンパンに
腫れ上がっている…。
「ちくしょう…ちくしょう……
何なんだよあれは!!
チクショォォォォ!!!」
俺には牢屋の中で叫ぶ事しか
出来なかった……。




