26話 キャメミール
「兄貴〜ルヴィネってどんな人?」
私は町へ向かう馬車の中で
兄のニートルに尋ねた。
馬車の中って窮屈…決して私の身長が
211㎝だからってわけじゃなくて
馬車が小さいだけよ。
「あいつは強かった…
駆け出しの森から出てすぐに
ダイヤモンドになって、 始めての依頼で
アグレッシブウルフの女王を倒した…
たった1人で…。
俺の予想では、数ヶ月もすれば
ウルツァイトになる…。」
そんなに強いなら、体格も私より
デカいかも…。
てか、そんなヤバい奴と私は組むのか…
「兄貴のパートナーは
この前引退したんだよねー
背骨折ったって?あー怖い…。
兄貴はこれからどうすんの?」
「お前に養ってもらうつもりだ。」
「はぁ!??」
「それが嫌なら、ルヴィネは俺がもらう。
あいつは俺でもいいと
言っていたからな。」
このニートめ!!
「じゃあ、俺はこの辺で降りるぜ
この近くにしか売ってない
ドーナツ座布団があるんだ。
ルヴィネによろしく言っといてくれ」
と言って兄貴は馬車から飛び降りた。
「え?ちょっと!兄貴も
一緒にルヴィネって人に
会うんじゃないの!?」
もうすでに兄貴は見えなくなった…。
「もう!なんなのよ!
あのクソニート!」
しばらくして夕方になって町に着いた。
ただでさえ機嫌が良くなかったのに
馬車から降りる時に頭を打って
さらに機嫌が悪くなる。
町の中心部にある冒険者ギルドに
入って受付に行く。
「おはようございます!
ご予約されていた魔法使いの
キャメミール様ですね!」
受付のお姉さんが、笑顔で言った。
いいな〜…ちょうどいい身長で…
可愛くて……。
「はい、キャメミールです」
「ルヴィネ様は、あちらの席におられます。
しばらくは、お試し期間という事で
契約書は入りません。
お二人の相性が合う事を
心よりお祈りいたします。」
受付のお姉さんは、ギルド内の奥にある
食堂の席に手を向けて言った
席には3人の冒険者が座っていた
私はその席に近づく。
「ル、ルヴィネさんですか?」
私はその3人の中の可愛いらしい少女に
話しかけた。
目の前の150㎝くらいの少女が
アグレッシブウルフの女王を
倒したとは、信じられないけど…。
「なんかでっかいお姉さんが
近づいて来たちん!
おっぱいもでっかいちんね!」
な、何こいつ!?
やたらアゴがスマートなデブが
真っ先に反応した。
語尾も「ちん」ってヤバいよこいつ!?
まさかこいつが、ルヴィネ!?
女の子には全く見えないけど…
天は二物を与えず……確かに
兄貴の話どうりの強さで、可愛かったら
世の中、不公平よね…。
それにしても…酷い姿ね…。
身長が高いだけで、
こんなに悩んでる自分は
幸せだったのね…。
いくら強くても、これは嫌…。
生理的に無理…私こいつと組むのか…。
「いだだだだだだっちん!
ルヴィネちん!何するちん!」
さっきのアゴスマートデブの
アゴを少女が、握り潰した。
ゴキッ!ゴキッ!ゴキッ!
ヤバいヤバい!?
アゴがさらにスマートになってる!?
あれヤバいって!?
「いきなり連れのデブーチ君が
失礼な事言って、すまん。」
「ルヴィネちん!アゴの感覚が
なくなってきたちん!
ぼくちんのアゴが
死んでしまうちん…」
やっぱりこの少女がルヴィネか…
確かに力は、強いみたいだけど…。
デブーチっていう、デブはアゴを青くして
白目をむいている…。
さすがに可哀想だ…。
「あの…そろそろ手を
放してあげたら…?」
「あ、握ってるの忘れてた。」
ルヴィネがデブーチのアゴを手放した。
アゴにくっきり手形がついて
さっきより細くなっている。
ま、まさかあれは握られて
スマートになっちゃったの!??
会っていきなり、恐怖の握力を
見せつけられた…。
あれは遠回しに、逆らったら
アゴをスマートにするぞって言う
警告……。
身長が高い上にアゴがシャクれたら
魔法使いやめて、プロレスラーに
なるしかない……。
「えーと…ニートルの妹の
キャメミールです…
ルヴィネさんのパートナー
お試し期間中
よろしくお願いします…。」
「私がルヴィネだ!
キャメミールさん!
改めてよろしくな!」
「デブーチだちん!よろちくりん」
「フォマムだ、よろしく」
ルヴィネと、
デブとそこそこイケメンの男が
自己紹介してくれた。
「じゃあ、俺ら依頼探しに行くわー」
フォマムとかいう奴が言った。
「え?なんで?」
「俺らと一緒にいたら
ルヴィネちゃんの足を引っ張るだけだ。
ルヴィネちゃんは、俺らの事を
気にせずに、ダイヤモンドの依頼を
受けてくれ。
じゃあ、また会おう。」
「また会おうちん!」
「お、おう…」
そう言って2人は出て行った…。
えー!
私とルヴィネは、2人っきりになり
しばらく沈黙が続いた…。
どうしよう…なんて喋ればいいの?
ルヴィネは、黙々と大量の
料理を食べている。
この子…ありえないほど
大食いだけど…見た目は可愛いなー…
さっきのアゴ潰しが嘘の様に…。
「キャメミールさん何か注文して
食わないの?」
ルヴィネが私を見て言った。
今はダイエット中なんだけど
何か、この食堂…
カロリー高そうなのしか無いのよね…。
「あーわかるよ、わかる。
私もあの2人と食う時以外は
ここで食わないから。」
え?こんなに大食いなのに
ダイエットしてるの?
ルヴィネは料理を全て平らげた。
「キャメミールさん今夜泊まる宿
決まってる?決まってなかったら
もうそろそろ遅いし
私が泊まってる部屋に
一緒に泊まらない?2人で割り勘で。」
「は、はい…。」
逃がさないぜって事ね……。
逆らったら明日にはプロレスラーに
なっているんでしょ?
ルヴィネに案内されて、部屋に
入った。
「じゃあ、ちょっと取ってくるぜ。」
何を取ってくるのかわからないが
ルヴィネが私を部屋に置いて
出て行った。
部屋を見渡してみる…
普通の部屋だ…
めちゃくちゃデカいぬいぐるみがあるけど、
それ以外普通だ…。
アゴの伸びた頭蓋骨とか
飾ってるのかと思ったんだけど…。
ぬいぐるみの中に隠してたりして…
「ただいま!」
ルヴィネが魔物を10匹くらい担いで
2〜3分で帰って来た
何あの魔物…カメとかウサギ?
「じゃあ、一緒に食うか!」
ちょっと待った!!
ツッコミどころがありすぎて
何からツッコんだらいいのか
わからない!?
「ル、ルヴィネさん…
なんですか?その魔物?」
「え?飯だけど」
「さっき食べてたじゃないですか?
てか、何処から
取ってきたんですか?」
「駆け出しの森から取ってきた。
食堂の料理量が足りないんだよね。」
駆け出しの森!?確かここから
10km以上あるんだけど…。
「キャメミールさんも
お金節約してんだろ?
わかるよ、食堂とかの料理って
値段かなり高いもんね…。」
節約するほど困ってないけど…。
ガブリッもぐもぐ
ルヴィネがウサギにかぶりつく
生肉のままで……。
「ん?遠慮すんなって、キャメミールさん
足りなくなったら、また取ってくるから」
「え、遠慮しときます……。」
可愛い顔してなんて、ワイルドなの…
てか焼けばいいのに…。
「そういえば
キャメミールさんの魔法
ニートルさんから聞いたんだけど
結構強そうじゃない?」
「え?」
「ニートルさんは
戦闘向けではないって言ってたけど
私はそんな事ないと思うんだよな〜
確かに派手さはないけど
使い用によってはすごく戦力になるよ」
そ、そんな事言われたの初めて……
めちゃくちゃ嬉しい…
涙が出そう…。
「というわけで、明日試しに
盗賊狩りの依頼受けようぜ!」
「盗賊狩り!?」
盗賊狩りの依頼は、かなりの高難易度……
理由はまず、盗賊のアジトを
見つけないといけない事と
魔物と違って、頭もいいし
最近の盗賊達の中には魔法使いも
居ると聞いたことあるし…。
どんな魔法を使うのか
わからない奴らに突っ込むのは
自殺行為…。
「さっき駆け出しの森に行くとき
いつもと違う道を通ったら
なんか盗賊のアジト
見つけちゃったから。」
見つけちゃったからって……
そんなノリで見つからないでしょ…。
「ニートルさんにも思いきって
難易度高めの依頼を受けろって
言われたし
フォマムとデブーチ君も気使って
別行動してくれたんだから
難易度高めの依頼受けないとね!
それにキャメミールさんの魔法は
盗賊とかの生け捕りに向いてると
思うんだ!」
それでもいきなり
魔法を試しに盗賊狩りは、クレイジー……。
「というわけで、明日に向けて、寝よう!」
ルヴィネは、あれだけあった
魔物を全て平らげていた…。
「キャメミールさんは
ベット1つしかないから
ベットで寝てくれ!
私は床でぬいぐるみを
布団の代わりにして寝るから」
………………。
これは罠だ!
私が気が使えるのかどうか
テストしてるんだな?
ここではい、そうですかと言って
ベットを占領したら
私のアゴの命は無いだろう…
ここで気を使って……
「いえいえ!私が床で寝ます!」
どうだ!これが正解でしょ?
私は気が使えますよ?
だからアゴだけは勘弁…。
……………。
ルヴィネが無言でこちらを見ている…。
え?不正解?
「じゃあ、一緒に寝るか〜。」
「あ、はい……。」
私はその夜、ルヴィネと
同じベットで寝た。
狭苦しくて私の足がはみ出ているのは
決して身長が高いからでは無い…。
ルヴィネはベットに入ると、ちびっ子の様に
私にしがみつき、数秒で寝た。
え?もしかして
私…ぬいぐるみの代わり?
いやいや、そんなわけない。
ルヴィネの寝顔を見てみる…。
激可愛い……。




