19話 オカン
俺の牧場にミノタウロスが、
住み着いて、1週間が経った。
最初にルヴィネちゃんが、
身長3m以上のミノタウロスを
連れて帰ってきた時は、
追い返そうとしたが、
ルヴィネちゃんがミノタウロスと
一緒に野宿すると言い始めたから、
仕方がなく留めてやってた。
ミノタウロスが、みのたんと
間抜けな名前を名乗りながら、
挨拶して来た時は、自分の耳を疑った。
まぁ、悪いやつでは、無さそうだ。
みのたんは、自分から進んでよく働く。
教えた事は、すぐに覚えるし
何にでも意欲的で、気もきく。
村の若い男達の10倍は使える。
本当に、ミノタウロスにしておくには、
勿体無い奴だ。
みのたんが来てから、仕事が
かなり楽になった。
昼から夕方の間はみのたんに、
休ませている。
毎晩の寝泊まりに馬小屋を
貸してる宿代より働いてるからだ。
飯は村の外に行って自分で取って、
来てるらしい。
3日ほど前に
宿代よりオーバーしている分で
何が欲しいか聞いてみたら、
「贅沢ですが、羊の毛が
欲しいです。」
とみのたんは答えた。
「羊の毛を何に使うのかは知らないが、
そのくらいでいいなら、
好きなだけ持っていってくれ」
「ありがとうございます!
レムタスさん!」
みのたんは嬉しそうに
羊の毛を適当な量持って行った。
休み時間になると、みのたんは、
毎日ルヴィネちゃんの家に
向かっている。
近所の噂によると、
ルヴィネちゃんの母の
アミネラさんに、
いろいろ教わっているらしい。
勉強熱心な奴だ。
さらに噂によると、みのたんは
ルヴィネちゃんの彼氏らしい。
これには、驚いた…。
いや、みのたんと
一緒に生活していたら、
ルヴィネちゃんが惚れてしまうのも、
何となくわかる。
村の奴らもみんな、みのたんに
慣れ始めている。
村の若者達に何人か
友人が出来たみたいだし。
村のダラダラした若者達から
変な影響を受けなければいいんだが…。
今日も仕事が終わって、
夜になって家の中で飯を作ろうと
した時に、ドアがノックされた。
ガチャッ
ドアを開けるとそこには、
みのたんがいた。
「レムタスさん、こんな夜に
すいません…。
アミネラさんからシチューって
料理を教わって作ってみたんですが、
よかったら
味見してもらえませんか?」
みのたんはシチューの入った鍋を
持っている。
「美味そうなシチューだな、
そういえば、お前と
飯を食った事ないな…
一緒に食うか。」
「え?僕、家の中に入れないし
外は寒いですよ?」
「このくらいの寒さ、問題ない。
外で食おう。
庭に机と椅子を用意してくれ。」
俺はみのたんと一緒に、
倉庫に長年置いてあった机と椅子を
並べた、妻と娘が出て行ってから、
使ってなかったから、ホコリを被っている。
みのたんはデカすぎるから切り株に座った。
牧場だから外は臭いが、
慣れてるから問題ない。
早速シチューを食べてみる。
「な、何だこれ?……」
「え?やっぱり不味いですか?」
「いや、ものすごく美味い‼︎
何だこれ!離婚した妻の
シチューより遥かに美味い‼︎」
この世の物とは、
思えない美味さだった。
余裕で店を開けるレベルだ。
「よかった…アミネラさんから
教わったレシピに
隠し味を付け加えてみたんです。
隠し味は…あっ…やっぱりいいです」
「ちょっ、何入れたんだ⁉︎
ヤバイもん入ってないだろな?」
「大丈夫です!
体に悪い物は一切入ってません!」
これ以上聞かない方が
幸せな気がする…。
体に悪くないなら、美味いから
まぁ、いいじゃないか…。
「ルヴィネに作ったら
喜んでくれますかね?」
「ああ、喜んでくれるさ。
そういえば、お前ルヴィネちゃんの
恋人なんだってな?」
「え?……そんな訳ない
じゃないですか…。
ルヴィネが僕なんかの事を
恋人だなんて……。
第一種族も違うし、
ルヴィネは僕なんかには
勿体無いですよ!」
「でもお前ルヴィネの事、
大好きだろ?」
「な、な、何で知ってるんですか⁉︎」
みのたんは、まるで恋心を抱く
乙女のような仕草をしながら言った。
本当に面白い奴だ…。
まるで息子と話しているような気分だ。
視界の端で庭の横にある、みのたんが
住んでる馬小屋を見たら、
馬小屋とは思えないくらい、
綺麗に磨かれていて、
壁には、羊の毛で編んだ、
セーターやマフラーがかけてある。
ちょうどルヴィネちゃんくらいの
サイズだ。
…………………。
息子じゃなくて、オカンだな…。




