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PandoraBox  作者: 恋熊
第1章 友愛を穢す障《サワリ》
3/68

2話 神宮咲夜

 




 元々、緋真は夜にコンビニに寄る最中だった。


 そんなおり、緋真は例の狼に出会いーーーー。




 緋真は狼の流体に噛み付かれたーーーーーーーー!


「ーーーーーーーー!!!!!」


 痛みが、鋭い熱さが肩を襲う。


 どろりとした嫌な感覚。


 鋭いのに、神経にねっとりと絡みつく様な気持ち悪さ。


 気持ち悪い。


 そんな気持ちが噴き出した。


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!


 ぐるぐると考えが回っていく。


 それがどんどんと嫌な感覚がふつふつと湧いてくる。


 こんな痛みは嫌だ。

 嫌なものは消えてしまえ。

 消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ消えてしまえ!!!!!!!!!!


 その時。





 ザッ。


 1人の少女が、緋真の背後から現れた。


 腰まで伸びた白髪の、袴を着た少女。

 赤く光る瞳は不気味さを醸し出している。


 その手には、少女の身長と同じぐらいの長さの刀が握られていた。


 少女は刀の峰で緋真の肩を軽く打つ。


「づッッッッッ」


 鈍い痛みと共に、何かが思考から弾け飛んでいく。


「あれ……?おれ、は……?」

「もう安心しなさい」


 白い髪の少女は微笑む。




「アレは私が滅する……!」


 白い髪の少女は刀を構える。


「ルォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」


 狼が白い少女に襲いかかる。


 白い少女はすかさず刃を狼の歯に噛ませる。


「りゃぁぁぁああああああ!!!!!」


 少女はそのまま狼を壁に叩きつける。


「グァッ!!!!!」


 狼は少女の背後に回り込み、その首に喰らい付こうとする。


「させるかッッッッッ!!!!!」


 少女は刀を持った手を後ろに回し、刀を狼の頭に叩きつける!


「グァッァァアッッッッッ」


 狼は爪で少女を引っ掻く。


「ッッッッッづッッッッッ」


 少女は振り向き様に流体の中心を真っ二つに斬る。



 ズパンッッッッッ!!!!!


 小気味良い音と共に、狼の中心にあった鉱石の様な塊が割れる。


 すると、狼は煙の様に霧散していった。




  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「お前はーーーーあの時の!」


 緋真の目の前にいる少女は、髪の色が違う。


 助けてくれた少女は白髪で、目の前の少女は茶髪だ。


「そう!私はーーーーあの時の少女!」


 茶髪の少女はポーズを決めて答える。


「まぁ、あの時って言うのが分からないんだけど」


 ニヤッと茶髪の少女は笑う。


「えっ?」

「だって私、周りから色々声かけられるし、一々覚えてないわよ」


 緋真は言われて、茶髪の少女をマジマジと見つめる。


「アンタ……あの神宮咲夜じんぐうさくや……さん?」


 神宮咲夜。


 緋真の通う高校の1年生で1番の有名人だ。



 スポーツ万能、成績優秀、容姿端麗、性格も良しときた、学年1の有名人だ。


 入学式のとき、生徒代表で壇上に上がった彼女に誰もがその美しさに息を飲んだ。


 それから一カ月も経たない内に、彼女は様々な功績を残した。


 全ての部活に参加し、大会で良い結果を出したという話に始まり、先生や生徒の困りごとの手助けや相談に乗るなど、果ては全国模試で100番台に入るなど、この学校で彼女についての話を耳にしない事はないだろう。


「まぁ、噂は色々と尾ひれが付いてるんだけどね」


 咲夜はケラケラと笑い出す。


「そうなのか?」

「ええ。普通に考えて無理じゃない?」


 確かに、と緋真は思った。


「確かに部活の助っ人でいくつかの部活動に参加したり、生徒の手助けをしたり、模試でせいぜい1000位くらいには入ったことがあったり、くらいよ」


 咲夜はカラカラと笑う。


「十分凄いと思うけどな……」


 緋真はあっけに取られる。


 これが、学年で1番の有名人の神宮咲夜という人物。


 緋真は印象の違いに面食らう。


 もっと優等生というイメージだったが、神宮咲夜という少女は思ったよりもフランクな様だ。


 印象は確かに昨夜の少女に近い気がする。


 見た目も瓜二つだ。


 しかし、彼女は白髪だった。

 そこがイメージが全然違う。


「まぁ、訊きたいことはいくらでもあるだろうけど、話は放課後にしましょう」


 咲夜はそう言って弁当を食べる。


「あ……そう言えば、弁当買い忘れたな」


 緋真は詩埜や伊吹との約束を断ってまで屋上に来た。


 しかもその上、弁当まで忘れて屋上に来てしまったのだ。


「お弁当、忘れたんならあげるわよ?」

「本当か⁉︎」


 咲夜が有難い申し出をしてくれる。


「はい、あ〜ん」

「……え?」


 咲夜は箸で唐揚げを持ち上げ、緋真の口の前に持ってくる。


「食べないの?」

「いや、その……」

「食べないなら上げないわよ?」

「……」


 緋真は仕方なく咲夜の箸から口で唐揚げを咀嚼する。


「よくできました〜」


 パチパチと拍手する咲夜。


「はい、あ〜ん」

「まだやるのか⁉︎」


 咲夜は今度は卵焼きを箸で取って緋真の口へ持ってくる。


 こんなやり取りが数度繰り返された。


「……ぐぬぬ」


 ちなみに、柚子達は緋真から離れられないため、その様子をずっと見ていた。


 柚子は咲夜に嫉妬の炎を燃やすのであった。





  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「それで、何から訊きたい?」


 放課後。


 お洒落なカフェーーーーなどではなく。


 その辺りの公園に咲夜は緋真を呼び出した。


「何……って」


 緋真が真っ先に思い浮かべるのはアレだ。


 白髪の少女。


 それと咲夜が、一体どういう関係なのか。


「昨日のこと?」


 咲夜が緋真に尋ねる。


 昨日のこと、ということはやはりーーーー。


「それとも、私のこと?」


 咲夜が更に緋真に尋ねる。


「それとも……その女の子達のこと?」


 咲夜は二頭身の柚子達に視線を送る。


 決して他人には見えないはずの柚子達に。


「…………!」


 緋真は目を見開く。


 まさか、緋真以外に見えるとは思っていなかった。


「アンターーーー」

「ちょっと待って」


 咲夜が徐に携帯を取り出す。

 携帯が震えている。


 誰かからの連絡だ。


 咲夜は携帯に出る。


「ーーーーはい、はい。わかりました」


 話が終わると、咲夜は携帯を閉じ、公園の入り口に向かう。


「お、おい?」


 緋真は思わず声をかける。


 このまま終わりなのだろうか?


「付いて来て」


 咲夜は振り返る。


「全部説明するから」


 わけがわからなかったが、緋真はとりあえず付いて行く事にした。




  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「君、名前聞いてなかったわね」

「月長……緋真」


 今更名前を聞かれた事に、不服を漏らす緋真。


 それに対し咲夜はケラケラと笑い出す。


「悪かったわよ。初対面だから仕方ないでしょう?」


 咲夜の主張も最もだ。


 しかしーーーー。


「神宮は、柚子達の事知ってるんだよな?」


 緋真は尋ねる。


「ふぅん、その子達、柚子って言うんだ」


 対する咲夜はとぼけた様子だ。


「期待させて悪いけど、私はその子達が見えるってだけ。それと、その子達のルーツかもしれないことを知ってるだけ」

「ルーツ……」


 咲夜の言葉の中に、緋真は大事な何かがある気がした。



「っと……」


 咲夜が、ビルとビルの隙間の路地で急に止まる。


「ちょっと待っててね」


 咲夜はそう告げると、目を瞑る。


 そして自分の内側に意識を集中させる。


 空気が変わる。


 まるで、咲夜の周りが光り始めたかの様に。


 そしてーーーー。


 徐々に、咲夜の髪の色が白く変色して行く。


「ーーーーあッ」


 咲夜が目を開けた時、その目は赤く光っていた。



 まさに、緋真が昨日出会った少女そのものだった。


「後ろに下がってて」


 咲夜が緋真に指示を送る。


「シャァアッッッッッ!!!!!」


 真上から、紫色の触手の様なものが伸びる。


 狼の時と同じ、紫色の流体。


「わっ!わっ!」


 緋真は驚いて後ずさる。


「……大丈夫?緋真」


 柚子が人間の姿になって緋真を支える。


「月長君、見える?」


 咲夜は流体の中心部を指差す。


 そこには、何かが光って見えた。


「……石?」

「そう、アレが多分、君が付けてるブレスレット、その宝石と同じ物」


 咲夜の言葉に緋真は自分のブレスレットを見る。


 遠目からしかわからないが、同じ材質のものとは思えない。


 咲夜は懐から小刀を2本取り出す。


「材質や見た目、モノは違うわよ。存在が同じなの」


 触手がまた上から咲夜に向かって伸びて来る。


 咲夜はそれを避けながら器用に全て切り刻む。


「遥か昔、『災禍』って呼ばれる存在がいたの」


『災禍』。


 それは人々に恐怖と狂気を振りまいた。


「『災禍』は当時の人々によって倒された……はずだった」


 しかし、その体はバラバラに砕け散り、『欠片』となって世界中に散らばった。


「それが、目の前のアレと、君の持ってる宝石の正体」


『欠片』は、それ単体ですら人々に恐怖と狂気を振りまける存在だった。


「『欠片』の持つ力は主に2つ」


 咲夜は2つのビルを交互にジャンプして器用に登って行く。


 触手の攻撃も避けながら。


「1つは狂気の感染。人の悪意を増長させ、人間として変えてしまう」


 咲夜は触手の中心に飛び込んだ。


「そしてもう1つは超常現象を呼び起こす。周囲の人の意識を具現化させ、通常起こり得ない現象を呼び起こす」


 咲夜は触手の中心の『欠片』を砕いた。


 そして、『欠片』は霧散した。


「それが、私が昨日と今倒した化け物と、貴方のそばにいる子達の正体よ」


 咲夜は教えてくれる。



 昨夜、緋真が急に嫌な感情が高まったのは狂気を伝染させる『災禍』の効果だ。


 咲夜はそれを祓ってくれた。


 紫色の流体は、『欠片』が周囲の人間からイメージを集め、その形を具現化したのだ。


 そして、緋真の持っているブレスレットも、緋真のイメージを集め、柚子達3人を作ったのだ。


 緋真の額からじわりと汗が滲む。


 緋真はジリジリと後ろに下がる。


 緋真は思い出した。



 昨夜、咲夜は緋真にこう告げた。


『高校の屋上で待ってる』


 緋真はその言葉通りに屋上に行ってしまった。


 咲夜の狙いが、このブレスレットとも知らずに。




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